【実例4】夫を亡くした後、必要だったのは自分のすべてを肯定すること
【実例4】夫を亡くした後、必要だったのは自分のすべてを肯定すること
更新日:2025年11月16日
公開日:2025年10月25日
63歳で主婦から小説家デビューへ!芥川賞を受賞
63歳のときに主婦から小説家になり、デビュー作『おらおらでひとりいぐも』で芥川賞を受賞した若竹千佐子(わかたけ・ちさこ)さん。長女が嫁いだ4年前からひとり暮らしをしています。
「好きな時間に起きて好きなものを食べ、自堕落といえばそういう生活。本を読んだり唱歌を歌ったり。退屈はしません。世界一動かない鳥と言われるハシビロコウみたいにじっとしている時間も長いけれど、案外、頭の中は忙しくしているんです」と笑います。
自分を肯定し、自分の気持ちが満たされる生き方をしようと思えた
55歳のときに夫を脳梗塞で突然亡くした若竹さん。悲しみを癒やし、励ましてくれたのは、頭に思い浮かぶ気持ちを思いつくままに書き留めたノートでした。
「悲しさと共に自由を得たうれしさを感じていた自分もいました。心というのは重層的で捉えるのは一筋縄ではないけれど、書き留めておくことで、自分の心そのものを客観視することができます。
書いて考えてわかったのは、夫は一番安全なところに行ったのだということ。もう思い煩わなくていい。自由を得て喜んでいる自分も肯定し、私は私に従って、自分の気持ちが満たされる生き方をしよう、そう思えたのです」
ひとりで過ごす今を、若竹さんは自己肯定の時間だと言います。「甘やかして、自分の頭を自分で撫でるくらいのつもりでいいと思うんです。どんな私も、今私がやっていることは私の精いっぱい。それを認めてあげながら自分にこう語りかけます。『最後まで一緒にがんばっていくべし』と」
若竹さんの一日の時間の使い方

10時 起床 こそっと雨戸を開ける
11時過ぎ 朝と昼を兼ねて食事 食後に万歩計をつける
14時過ぎ お家のまわりを散歩する
15時過ぎ 新聞や本を読む。テレビは見ない
19時過ぎ 夕食 食べたいものを食べたいだけ食べる
20時過ぎ 自由時間
27時 就寝
若竹さんの自分時間を楽しむコツ
豊かに楽しむ1:無意識の奥でつながっている人々の声を聞き会話する

「『私につながる無意識の人よ、声を聞かせてけろ』と声を掛け、見えないものと会話しています」と若竹さん。「最初は単なる空想かと思ったけれど、確かに聞こえるんです」
豊かに楽しむ2:時間を気にせず本を読みふけり、時には声に出して読む

誰かにご飯を食べさせなきゃいけないこともなく、読みたいだけ本を読み続けられる自由は幸せなこと。「自分で書いた文章も必ず一度は声に出して読んでいます」
豊かに楽しむ3:好きなものを食べたいときに好きなだけ食べる

食べることは大好き。自分のために手の込んだ料理はしないけれど、食べたいものがちゃんと思い浮かぶのは健康の証。「今日作ったお煮しめは夫も大好物だったんですよ」
賢く使う:何もしない時間があっていい。私には私に流れる時間がある
ひとりの時間が心に自由をもたらし、成熟に導くと若竹さん。「建設的な何かはゆったり過ごす時間にこそ生まれます」
軽やかに備える:その時思った本音や感情を思うままに書き留める

よいことも悪いことも、本音やその時の感情を書き留める習慣は学生の頃から。「書き留めた言葉を手掛かりに自分を見つめ直すことで気持ちの立て直しにつながりました」
若竹千佐子さんの最新刊:『台所で考えた』(河出書房新社刊)

最新刊は初のエッセー集となる『台所で考えた』(河出書房新社刊)1595円。日々生きることに思いを巡らせ、ひとりで老いる時間との向き合い方について、温かな語り口で綴ります。
取材・文=大門恵子、新井理紗、児玉志穂(すべてハルメク編集部)、撮影=中西裕人
※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年3月号を再編集しています




