60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい!

中尾ミエ!最期のゴールを意識して自分らしく生き切るには?

中尾ミエ!最期のゴールを意識して自分らしく生き切るには?

更新日:2025年10月21日

公開日:2025年09月16日

中尾ミエ!最期のゴールを意識して自分らしく生き切るには?

「80歳の節目まであとわずか。人生の残り時間が少なくなって、今という時間がとても貴重なの」と語る中尾ミエさん。酸いも甘いもかみ分けて、迷わず、振り向かず、軽やかに前へ進んでいく中尾さんの原動力とは?

中尾ミエさんのプロフィール

なかお・みえ。1946(昭和21)年福岡県生まれ。62年デビュー曲「可愛いベイビー」が大ヒット。歌手だけでなく俳優としても数々のドラマ、映画、舞台に出演。2015~19年上演「ザ・デイサービス・ショウ」では主演・企画・プロデュースを務め、19年、22年にはブロードウェイ・ミュージカル「ピピン」にてアクロバティックな空中ブランコの演技で話題を集めた。24年公開の主演映画「せん」が「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」でグランプリを受賞するなど精力的に活動中。

誰にもいつか終わりはくる。一年一年を悔いなく自分らしく生き切らなくちゃ

健康診断の数値は何も問題がないという中尾さん。「病院で『私も主治医がほしい』と言ったら、『中尾さんは病気にならないから主治医ができないんです』と言われちゃいました」

※取材は2024年12月に行いました。
中尾ミエさん(78歳)が2024年刊行した新著のタイトルは、ずばり『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』。60代、70代からの人生は、「やりたいことを我慢せずに、よりいっそう幸せに、充実して生きていこう」と提案しています。

「還暦を迎えたとき、“これで人生を一周したな”と実感したんですね。そこから10年の変化はやっぱり大きくて、70代からは、元気で外に出掛けられる時間はカウントダウン状態。一年一年、一日一日を悔いなく過ごしたいという気持ちが強くなりました。時間は待ってくれないわけだから、今という貴重な時間を自分らしく、人に何を言われても好き勝手に生きないともったいないなと思います」

とはいえ、好き勝手に生きてみたいと思っても、現実には、家族の介護でなかなか自分の時間がつくれなかったり、体調がすぐれず思うように行動できなかったり、いろいろな事情を抱えている人も多いかもしれません。

「人生はままならないことの連続で、制約はつきものですよね。たぶん一つも制約のない人なんていないでしょうし、もしいたとして、何の制約もなくただ好きなことをしていても、あまり感動しないんじゃないかしら。むしろ、制約のある中で、“今日は一日、上手に時間を使って自分の好きなことができた”と思えることが、満足感や生きる喜びにつながると思います」と中尾さん。

どんな状況にあっても、自分のしたいことや好きなことをちゃんと持って、たとえ思い通りにいかなくても「これだけできれば上出来、と自分で思えればいいんじゃないかな」とアドバイスします。

口紅一つで気分が上がる!

最近、新たに挑戦しているのが料理。「最後に一人になっても生きていけるように最低限の技術を身につけようと奮闘中です。料理はボケ対策にもなるし、楽しんでやっています」

中尾さんは、「好き勝手に生きるというのは、別に大それたことではなく、小さなことでもいいんです」と言います。

「例えば、私は朝公園に行って、みんなと運動しておしゃべりするのが日課なんですが、その前に最低限の身だしなみ程度のお化粧をするようにしています。口紅をつけるなんて簡単なことだけど、それだけでもずいぶん顔が明るく見えるんです。そうすると気分が上がって笑顔になるし、まわりの人も“私もやってみようかな”と思うじゃない。それでみんな元気になってくれたら楽しいでしょう。

着るものも、年を取ったらどんどん華やかにしていいと思います。外見が変わると、気持ちも変わりますから。やってみて楽しいと思ったら無理なく続けられるし、それくらいなら誰だってできるんじゃないかしら」

最期のゴールを意識する

新著で、中尾さんは精神科医の和田秀樹さんと美と健康、生活習慣、人間関係などさまざまなテーマで対談。最後の章では「死」についても語り合っています。

「私たちは死の話題を避けてタブー視する傾向があるけれど、生きているものはみんな死ぬことを絶対に避けられないのだから、きちんと向き合っておいた方がいいと思います」

特に60代、70代からは、死という最期のゴールを意識することで、今自分が何をしたらいいか考えられるようになり、「いざ大切な人との別れが訪れても、自分の最期が迫っても『いよいよ、そのときがきたのね』と、自分の中で納得がいくと思う」と話します。

「私はお葬式に行っても、悲しんだり泣いたりせず、いつも笑顔で『あなたにとって、いい人生でしたね』と言ってあげるんです。だって死は他人事ではなく、自分にも必ずやってくるわけでしょう。そのとき、私は『ありがとう。いい人生だった。じゃあね』って明るく言えたら一番いいなと思うんです。だから大切な人の死も悲しみたくないし、明るく送ってあげたいの」と中尾さん。

その思いは、母親の死に直面したときにも変わらなかったと振り返ります。

「うちの母は69歳のときに自ら命を絶ってしまい、私が発見者だったんです。それでも私はすぐにうちでお葬式をやって、笑顔で見送りました。まわりから『よく笑っていられるわね』なんて言われましたが、笑って見送ってあげないと、母の人生を全否定するような気がして、そっちの方がかわいそうだと思ったんです。

苦労やつらい思いをしない人なんて一人もいないわけですから、それを嘆くよりも一生懸命生きたことを認めてあげたい。故人には『ご苦労さんでした。いい人生だったね』と言いたいし、私もそう言ってもらえるように最後まで一生懸命生きたいです」

大切な人の死を悲しみたくないし明るく送ってあげたい

2024年7月には、中尾さん、伊東ゆかりさんと共に「三人娘」として活躍した歌手の園まりさんが亡くなりました。

「まりちゃんは乳がんで最後は緩和ケアに入り、本人もちゃんと死を覚悟していました。彼女の最期を見てつくづく感じたのは、“終わりよければすべてよし”ということ。身のまわりを全部整理して、やることをやって、“まりちゃんってこんなにしっかり者だったんだ”と思いました。最後にゆかりと私とで残ったアクセサリーや小物の整理を頼まれて、本当に三人娘として見事にまっとうしたなと思います。まりちゃんのドレスやアクセサリーを身につけて追悼番組に出演すると、一緒にステージに立っているような気がしますね」

そんな中尾さんにとって理想の最期は、「道半ばで死ぬ」ことだと言います。

「悔いのない人生とは、いつも新しい目標を持って挑戦を続けることだと思うんです。だから私は目標を胸に道半ばで死にたい。それが一番幸せなんじゃないかと思います」

『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』

中尾ミエ・和田秀樹著/宝島社刊/1430円
中尾さんと精神科医の和田秀樹さんが対談形式で、美と健康、人間関係、お金事情など、人生を充実して過ごす秘訣を紹介。生きる勇気や楽しみが湧いてくる一冊です。

取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、撮影=中西裕人、スタイリング=松田綾子(オフィス・ドゥーエ)、ヘアメイク=杉村 修

※この記事は、雑誌「ハルメク」2025年月2号を再編集しています。

HALMEK up編集部
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