「終活をしない」という選択:新しい終活のかたち
2024.11.112024年01月23日
あなたの終活、間違ってます!8・グリーフケア
終活を進めるヒントにもなる「悲しみとの向き合い方」
終活コーディネーター・吉原友美さんが、新しい視点で終活を見つめ直す連載。今回のテーマは悲しみとの向き合い方です。大きな喪失感から立ち直るまでを支援する「グリーフケア」をご紹介。終活をより意味のあるものにする上でも役立つ考え方です。
吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール
東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。
自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計1万6000人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。
父の突然の入院
みなさま、本年もよろしくお願いいたします。私のコラムも早いもので、今回で第8回を迎えました。2024年も、興味深く読んでいただける内容をお届けしてまいります。
さて私事ですが、昨年12月に、父が心不全で入院してしまいました。持病が悪化し、左足も不自由になってしまい、退院して今後どのように生活していくのかを、今、検討中といったところです。
12月は、病院や役所との話し合いが多くあり、そこに本人の希望と、私たち家族がどこまで父の生活をサポートしていけるかの想定を加味しながら、これからのことを考えた日々となりました。
父とは、私が6歳のときに別れ別れになったこともあり、生活を共にした時間が多くありません。正直、思い出と呼べるものもあまりありません。それでも否応なく対応を迫られます。父の望むこと、嫌がることも深くは理解できていない状況の中で、戸惑いの日々が続いています。
そんな複雑な心境を抱きながら、今回のコラムでは「グリーフケア」をテーマに選びました。「悲しみとどう向き合うか」についての考え方です。
悲しみには5つの段階がある
グリーフケアとは、「グリーフ」(深い悲しみや喪失)と「ケア」(治療や支援)を組み合わせた言葉で、大切な人との死別や重大な喪失を経験し、悲嘆に暮れる人が悲しみから立ち直れるように支援することです。
私自身、若くして母親を亡くし、その後母との死別から来る深い悲しみから立ち直るのにとても長い時間がかかった経験があります。
そこで、自分と同じような境遇にある人の支えになりたいと、「グリーフケア士」という資格を取得し、現在は終活セミナーに参加される方々にグリーフケアについてわかりやすくお伝えしています。
上の図をご覧ください。人は大切な人を亡くした後、この「悲しみの五段階」を経験します。五段階目の「死別の受容」を経て心が回復するまで、人によっては数年単位の長い時間が必要になるとも言われています。
ここで重要なのは、誰もが悲嘆から来る精神的な混乱の状況におちいる可能性があるということ。だからこそ、このグリーフ(悲嘆)の過程を、まずは元気なうちに知識として知っておくことが大切なのです。
悲しみの中にあるときこそ誰かを頼る勇気を
もし、あなたが大きな喪失感を抱えることになったら、必ずどこかで家族や周囲の助けが必要になる状況がやってきます。なかなか心が安定しない状況が続くときには、お医者様の力も必要になるでしょう。
また私自身の経験では、何よりも自分の心に寄り添い、ありのままの自分を受け入れることが大切だと感じました。
しかし、悲しみの初期の段階では、自分の身に起きたことをうまく受け入れられず、意味もわからないまま日々をただやり過ごす状態が続いてしまうと思います。そして心が弱くなると、自然と体の不調も感じるようになります。
私の場合は、めまいや頭痛に始まり、湿疹も現れるようになりました。持病の喘息もひどくなり、円形脱毛症にも悩まされました。
とにかく思ってもみなかったことが自分に襲い掛かってきた、という感覚でした。私が「人に迷惑をかけてはいけない」と強く思ってしまう性格だったから余計に、心と体の状態が悪化してしまったように思います。
自分の弱みを他人にさらけ出すことは誰にとっても怖いことですし、他人に甘えてはいけないという考えにとらわれてしまうことだってあるかもしれません。それでも、深い悲しみを前にどうしていいかわからなくなったときは、誰かを頼る勇気を持ってほしいと思います。
自分の終活を進める上でも重要なグリーフケア
グリーフケアについて知ることは、自分の終活にも大事な視点を与えてくれます。「自分にもしものことがあったら、残される人たちがどんな状況に直面するのか」について思いを巡らす視点です。
家族や大切な人が向き合う喪失感を理解できれば、困ったときに頼るべき人の存在を伝えるなどして、悲しみを前もってケアすることができます。
また、残される人たちのことを深く想像する中で、自分が伝えたいメッセージや思い出として残したい事柄も変わってくるでしょう。終活がより深く、意味のあるものになっていくはずです。
今回は、グリーフケアについて、私の体験にも触れながらお伝えしました。とても奥が深いテーマで、私の終活セミナーでも詳しくお話ししております。みなさまのご参加をお待ちしております。
では、次回の連載コラム「あなたの終活、間違ってます!」も、どうぞお楽しみに!
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