【56歳サトミの場合】二軒目のバーでの出来事

【3】50代から恋に落ちて!好きだった彼と二軒目へ

【3】50代から恋に落ちて!好きだった彼と二軒目へ

更新日:2025年06月26日

公開日:2022年07月03日

【3】50代から恋に落ちて!56歳サトミの場合

56歳サトミの恋愛ルポ第3話。結婚していても、ふとしたきっかけで恋に落ちることがある。高校の同窓会で当時好きだったツチダ君と再開を果たし、二人で二軒目のバーに向かった。

前回までのあらすじ

サトミ(56歳)の恋愛談を紹介しよう。バブル時代に社会人になり、結婚後専業主婦になり28年、すでに成人した二人の子がいる。ふと参加した高校の同窓会で当時好きだった「ツチダくん」と再会を果たし、二人は二軒目のバーに向かうのだった……。

彼と二軒目へ。平凡に生きてきた私は語るほどの人生がない

彼と二軒目へ。平凡に生きてきた私は語るほどの人生がない

同窓会後、ツチダくんと二人でみんなの列から抜けて、駅の近くのバーへ。そこでさらに、よもやま話に花が咲いた。

ツチダくんは4回も転職、やっと今の会社に落ち着いたのは40歳を過ぎてからだったとか、結婚も2回したとか。確かに高校時代から落ち着きのない子だったねとサトミさんは笑ったという。

「落ち着きはないけど、彼は根が優しいんですよね。最初の結婚がどうしてうまくいかなかったのと聞いたら、捨てられたんだというから、それにも笑ってしまいました。彼は昔と同じように前向きに生きている。失敗してもたくましく生きている。そこが彼の魅力だったなと改めて思い出しました」

一方、彼に尋ねられても、人に語るほどの人生がないとサトミさんは感じていた。ごくごく平凡な人生よと言ったら、「でも、それが一番だよ!」と彼は一瞬、真顔になった。 

彼の苦労話に感情移入。思わず涙がポロリ

彼の苦労話に感情移入。思わず涙がポロリ

ツチダくんの転職には、それぞれ深い理由があった。人間関係がうまくいかなかったり、派閥争いに巻き込まれたり。転職した会社が突然、合併吸収されて「冷や飯を食わされた」こともあったという。そんな中で最初の妻が子どもを連れて出て行ってしまったときは、いっそ自殺してしまおうかとも考えたそうだ。

そんな話を聞いているうち、サトミさんは彼の心情を考えて涙ぐんでしまった。
「『サトミちゃんが泣くことはないじゃん』と言われて、はっとしました。いつの間にか彼に心を寄せていたんですね。そもそも、そんなに深く他人の人生を聞いたこともなかったから、私にとってはすごく衝撃的でした。同時に、平凡が一番だという彼の言葉にも納得しましたね」

「好き」という言葉と、温かい手

彼は『そういうところがサトミちゃんのいいところで好きなんだよね!今日会えてよかった」と、さらりと言った。その瞬間、サトミさんは脳がぐらっと揺れたような気がしたという。

「好きだよなんて、子どもが小さい頃、『ママ、大好き』と言われて以来です(笑)。彼の言葉にクラクラしながら帰宅したのを覚えています。別れ際、彼が差し出した手を握ったら、とても温かかった」

また会おうねと言ったが、すぐに連絡が来るとは思っていなかった。家族とパート仲間しかいなかったサトミさんのLINEに、同級生グループとツチダくんが加わって、急にスマートフォンが大切なものに変わった。

それからはひたすらスマホをチェックする日々が続いた。

第四話「初デートでタイムスリップ」に続く…>>

■もっと知りたい■
【次→】4 初デートでタイムスリップ
【←前】2 運命の同窓会

恋愛ルポ「50代から恋に落ちて!56歳サトミの場合」記事一覧>>

亀山早苗
亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。