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- その体調不良は夫源病?原因チェックリストと対策方法
夫へのストレスが原因で、うつっぽくなったり頭痛が起きたりといった不定愁訴が表れる、その名も「夫源病(ふげんびょう)」で悩む女性が増えていると、医師の石蔵文信さんは言います。ストレス源になるストレス夫のタイプ別の解説と対策をお伝えします。
夫源病の診断・セルフチェックリスト
夫源病の原因となる、あなたの夫は大丈夫ですか? 夫の言動で当てはまる項目をチェックしてください。
- 人前では愛想がいいが、家では不機嫌
- 妻の具合が悪くても「ご飯は?」と詰め寄る
- 家族は自分が養ってきたと自負している
- 妻の外出や買い物に四六時中付いて来る
- 真面目、完璧主義で責任感が強い
- 妻の予定や行動をチェックしたがる
- 仕事以外での交友関係や趣味が少ない
- 「ありがとう」「ごめんなさい」の言葉がほとんど言えない
チェック数が、3個以下の場合は、今のところ、あまり心配しなくて大丈夫です。4〜6個は夫源病の予備軍。注意が必要です。7個以上は夫源病の可能性あり!心身に不調がある場合は、早急に対処をしましょう。
夫源病とはどんな病気?どんな症状が表れる?
「夫源病」と思われる女性たちを、これまで100件近く診察してきたという大阪大学大学院医学系研究科准教授で、医師の石蔵文信(いしくら・ふみのぶ)さん。症状の特徴と、具体的な改善策を伺いました。
「夫」が「源」の「病」――。そもそもこの夫源病とは、どのような病なのでしょうか。
「動悸、胃痛、不眠、血圧の上昇、気分の落ち込み……、その症状はさまざま。夫へのストレスが原因で、女性の心身にトラブルが現れる病を『夫源病』と言います」と、石蔵さんは話します。
その症状から、病院でも単なる不定愁訴(ふていしゅうそ)を更年期障害として、片付けられる場合も少なくないそう。けれどいくら薬で抑えようとしても、夫に対するストレスを取り除かない限り、改善は難しいといいます。
「特に女性は、閉経前後の約10年間の更年期に、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌が急激に減少します。しかし女性ホルモンには、ストレスから体を守る働きもあるため、それが減ることでストレス耐性も弱くなるのです」
さらに石蔵さんによると、夫源病の患者で最近増えているのは、更年期を過ぎた60代、70代の女性なのだそう。その多くは、夫が定年し、家にいる時間が物理的に増えることで、妻の生活バランスが崩れてしまうことが原因だと石蔵さんは考えます。
「加齢によるホルモンの減少とともに、環境の変化によって生じる夫婦の溝が、夫源病の引き金となるのです」
夫源病の原因になる!ストレス夫をタイプ別に解説
では、具体的にどんな夫の言動が、夫源病の原因となるのでしょう。
石蔵さんは代表的な3つのタイプを挙げます。
妻に三食ご飯を催促!「飯まだか族」
一つ目は、「飯まだか族」。自分で食事の支度ができず、時間になると、食卓に座って料理ができるのをただ待っている夫です。
「温めればよい状態にしておかずを置いて出掛けても、妻が帰るのを当てつけのように待っている。具合が悪い妻に『飯はまだか?』と催促する。そんな夫の言動が妻にプレッシャーを与えます」と石蔵さん。
実際に「飯まだか族」の夫が定年した後、うつっぽくなる妻もいると言います。
「それまで出来合いの簡単な物を、都合のよい時間に食べていた女性たち。夫の定年後、決まった時間に必ず食事を作らねばならなくなります。夫に行動を縛られることで、うつ状態になる“昼食うつ”が増えています」
妻の外出について来る!「ワシも族」
二つ目は「ワシも族」。定年後の時間をもて余し、一人では何をしてよいかわからず、妻の行く所に付いて行きたがる夫です。
「鉄道会社の広告で、中高年の夫婦に向けて、『一緒に旅行を』という宣伝があります。それを見て、男性は定年後、常に一緒に出掛けることが、妻への孝行だと思いがち。けれど女性は、従来通り女友達との関係も大切にしたい。そこにストレスが生じます」
妻に感謝やねぎらいの言葉が言えない!「文句だけ族」
三つ目は、「文句だけ族」。文句は言えるが、感謝やねぎらいの言葉が言えない夫です。
「妻に文句は言えても、『ありがとう』や『ごめんなさい』が言えない。それどころか、当たり前のように妻を家政婦扱いする。そんな中高年の男性もまだまだ多いようです」
夫源病の対策と解決策は?
「以前、ある調査で1217名の既婚女性にアンケートを行ったところ、『夫に不満を持っている』と答えた女性は全体の96%でした」と石蔵さん。
一方で、夫を嫌いになってゆく自分を責め、長期間、夫源病に苦しむ女性も多いと言います。離婚に踏み出す前に、解決策として石蔵さんが勧めるのは、まず上手に感情を発散すること。
「この病に悩む女性は、夫からの反論を受け止めて耐える方が多い。けれどじっくり話を聞くと、みなさんどっと涙を流されます。こうして、きちんと感情を出せれば、短期間で治る場合も多いんです。話し相手がいなければ、映画を見て思いっきり泣いてもいいですし、カラオケに行って大声で夫への不満を叫ぶ、ということでもいいんです」
石蔵さんが実際に治療の一環として行っているのが、「プチげんか」。面と向かって夫に不満をぶつけることです。
「診療室に夫婦で来てもらって行うのですが、何十年も不満が溜まっていた方などは、最初は当然大げんかになります。けれどそれが次第に中げんかになり、小げんかになっていく。そうして意見を交わすことが、大きな一歩です」
ただし、相手に思いをぶつけるだけでなく、相手の思いを想像することも必要。そのためにも、専業主婦の女性は外に出て働いてみるのも有効と言います。
「長年働いてきた夫の気持ちも理解でき、万が一のとき、自立して生きるための出発点にもなります」
それでもうまくいかなければ、「プチ別居」という手段も。「夫と居るのがどうしてもつらい方にはウィークリーマンションなどでの宿泊もすすめています。中には『そんなの家族じゃない』と拒絶する方もいますが、少し離れると心身も安定しやすくなります」
さらに、根本的な解決を目指すのには、夫の自立を手助けすることも大切です。
「その上では、やはり褒めることが重要です。私は男性向けの料理教室を行っていますが、野菜を洗剤で洗う方も本当にいるんです(笑)。けれど、長年会社にいたのですから、最初はできなくて当たり前。つい口を出しがちですが、まずは褒める。そしてこちらの希望は、『こうしてくれたら、うれしい』という言い方で伝えることが大切です」
そうして、夫ができることを増やすことで、女性の時間も増やせると話す石蔵さん。
「長い時間の中で、関係が変わっていくことは自然なこと。まずは『いい夫婦であるべき』という観念を捨てて、今の自分たちにとって快適な関係を再構築してほしいですね」
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石蔵文信さん(いしくら・ふみのぶ)さんのプロフィール
1955(昭和30)年生まれ。大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)
※この記事は、2013年5月号「いきいき(現・ハルメク)」を再編集したものです。
取材・文=木村和歌菜
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