しんどい夫婦関係、問題の解決策は?(3)

妻側が配慮したい、男性の更年期とは?その原因は

公開日:2021/01/23

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「夫源病(ふげんびょう)」を提唱した医師の石蔵文信(いしくら・ふみのぶ)さんによる、しんどくない夫婦の関係性を模索する連載です。第3回目は、夫側の不調として妻側が配慮したい「男性の更年期」について、語ります。

男性の更年期とは?
男性の更年期とは?

男性にも更年期が。男性の更年期外来を設立した理由

男性にも更年期が。男性の更年期外来を設立した理由

これまで2回にわたり、夫に対するストレスが原因で起きる不定愁訴「夫源病」について解説してきました。今回からは、中年男性が抱えがちな不調についてお伝えします。「男性の更年期」はあまり一般的ではありませんが、妻側が知っておくことで夫婦間のトラブルを避けられるかもしれません。

私が男性更年期外来を開設してから約20年がたちます。いきさつは、あの有名な男性用勃起不全改善薬バイアグラの登場です。バイアグラが発売されてまもなく心臓との関係が大きな問題となりました。当時、循環器の専門医として男性の性機能に関しても研究していた私の仕事が注目されるようになりました。そこで、ある病院からバイアグラを処方できるような外来を作ってほしいとの依頼がありました。

そして当時、漫画家のはらたいらさんが自分の体調が悪いのを「男性更年期」として本で紹介されて話題になりました。外来の設立前は「勃起不全外来」や「バイアグラ外来」といった名称にしようか考えていましたが、そんな名称の外来で、座って待つのも少し気が引けるのではないかと考えて、私の外来も「男性更年期外来」と命名しました。

同じ頃、泌尿器科では、男性ホルモンの低下による体調不良に注目されるようになってきました。やはりバイアグラが発売されたのを機に、泌尿器科医が男性ホルモンの補充を目的とした男性更年期外来を立ち上げました。その頃から男性ホルモンに関係するさまざまな研究が盛んになってきました。

確かに男性更年期外来に訪れる患者さんの半数近くは、男性ホルモンがやや低下しています。逆に考えると半数以上は基準値ですので、男性ホルモンの低下だけでは説明できません。余談ですが、この頃まで男性ホルモンの基準値自体があまりはっきりしていなかったのです。男性更年期をきっかけに男性ホルモンの基準値も見直されるようになってきました。

男性更年期外来を訪れる患者の体調不良・症状とは

男性更年期外来を訪れる患者の体調不良・症状とは

男性ホルモン補充療法には、前立腺がんや多血症などのリスクが高まるなど、さまざまな問題があります。泌尿器科医でない私は、男性ホルモンを補充する治療法には少しためらいがありましたので、カウンセリングを中心に治療することにしました。

男性更年期外来を訪れる患者さんの多くは、めまい・耳鳴り・頭痛・動悸や食欲不振などの体調不良に加え、不眠やうつ状態になっている方が多く、どちらかというと心療内科や精神科で診察を受けた方がよい患者さんが多かったように思います。

中には心療内科や精神科も受診したが改善しなかったという人も少なからずいます。後で気が付いたのですが、そのような患者さんの多くは薬中心の治療で、あまり話を聞いてもらえなかったようです。

そのため私は精神科の先生のご指導を受けながら、しっかりと時間を取ってお話を聞く、メンタル治療に重きを置いて現在までやってきています。

男性ホルモン補充療法でも改善している患者さんはたくさんおられますが、男性ホルモン補充療法をしても改善しない患者さんがよく私の外来に紹介されてきます。丁寧なカウンセリングと抗うつ剤などの処方で多くの場合は症状が改善します。

男性更年期外来を訪れる患者はストレスを抱えている

男性更年期外来を訪れる患者はストレスを抱えている

男性更年期外来を訪れる患者さんは多くは40代から50代の働き盛りの男性です。男性更年期の主な原因にはストレスです。中年になると会社では中間管理職として下から突き上げられる、上からは文句を言われるという厳しい立場になります。

家庭的にも夫婦仲が悪くなり、子どもたちも難しい年代になります。このようなさまざまなストレスが男性を襲って、更年期症状として現れるようです。しかし、周囲には不調を理解してもらえず、一人で思い悩む方も多いようです。

私の治療は極めてシンプルです。まず抱えているストレスに関してお話を伺い、過重労働や不向きな仕事であれば診断書で時短や配置転換などの要請をします。

また多くの方がうつ状態や不安障害に陥っていますので、抗うつ剤や睡眠薬などを処方します。さらにストレスの内容が家庭内にある場合などは、夫婦で問題解決をするようにアドバイスします。このような夫婦関係のアドバイスが続いて、私は「夫源病」にも気が付いたのです。

時には、ストレスが子どもたちの不登校や引きこもりにある場合があります。このような場合は、会社や夫婦間の問題を解決してもあまり役に立ちませんので、約10年前くらいから子どもたちの診察も引き受けるようになりました。子どもたちが登校したり、引きこもりから改善したりすると、それに伴い父親の男性更年期の症状は改善します。

現在、男性更年期外来を標榜している先生は、ほとんど泌尿器科医です。そこでは主に男性ホルモンの補充療法が行われています。私のように心療内科的な治療をしている男性更年期外来はかなり稀です。男性ホルモン補充療法で症状が改善しない場合は心療内科や精神科を訪れた方が良いのかもしれません。

 

石蔵文信さん(いしくら・ふみのぶ)さんのプロフィール

石蔵文信さん

1955(昭和30)年生まれ。大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)
 

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石蔵文信

1955年生まれ。大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)

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