公開日:2020/12/19
夫へのストレスが原因で、うつっぽくなったり頭痛が起きたりといった不定愁訴を「夫源病(ふげんびょう)」と名付けた医師の石蔵文信(いしくら・ふみのぶ)さんによる連載です。第1回目は「夫源病」と「モラルハラスメント」の関係を紐解きます。
私が『夫源病 こんなアタシに誰がした』(大阪大学出版会刊)という本を出版してから約10年になります。一時的な流行なら、もう「夫源病」という言葉は消え去っているはずです。しかし、このコラムのように夫源病に関する取材の依頼は後を絶ちません。ウィキペディアにも「夫源病」が掲載されており、そこには幅広い方からの情報が掲載され、命名者の私が説明してきたこと以上に、よく説明されています。
さて、このように「夫源病」は減少するどころか、最近はますます増えているように感じています。
そもそも夫源病とは何でしょう? 男性には大変失礼なのですが、夫の心ない言動が妻のストレスとなって引き起こす体調不良のことです。体調不良には動悸、胃痛、不眠、血圧の上昇、気分の落ち込み、頭痛など、さまざまな症状が当てはまります。
当たり前ですが、「夫源病」は正式な医学用語ではありません。しかし、すべての世代の妻に「夫源病」が起きる可能性があります。その中でも特徴的な年代があります。
まずは、子育て世代。子育て中の、夫の心ない言動で妻の体調が悪くなる場合です。以前の女性なら経済力も乏しく、離婚すると幼い子どもを抱えて生活できないので辛抱されていたと思います。最近の女性は経済力もあり、辛抱して人生を台無しにするのは嫌だと言うことから離婚を決意される方も少なくありません。そのためにシングルマザーが増えてきたのかもしれません。
子育て世代の不平不満は若い時だけに影響するのではなく、中年期や熟年期にも大きな影響を与えているようです。次に気を付けなければいけないのは子どもがある程度大きくなった中年期でしょう。子どものためにとがんばっていた妻も子育てが一段落し、自分の人生を見つめ直す時期になっています。この時に夫との関係が悪ければ、別居や離婚を考えるかもしれません。
そして1番危険なのは熟年期です。特に定年後はかなり危険な時といえます。
夫に不満があっても「亭主元気で留守がいい」と、すれ違いの生活をしていたのが、定年により一日中夫と顔を突き合わせなければならなくなります。仲の良い夫婦でさえ息が詰まると言うのですから、関係が悪くなった夫婦なら想像を絶するくらいつらいものだと思います。
...
この記事をマイページに保存