【53歳シホの場合】蛍光灯に照らされた老いた自分

【3】50代で年下男性に恋して!理性が崩れたキス

公開日:2023.09.08

53歳シホの恋愛ルポ第3話。既婚だから恋愛に縁がないと思っていても、恋に落ちてしまう事がある。シホの場合、仕事の後輩で18歳年下のタカシが相手だった。2人で行ったバーで告白されたあと、タクシーに乗り込んだ2人が向かった先は……。

前回までのあらすじ

シホ(53歳)の恋愛談を紹介しよう。年上の夫と結婚し成人した二人の子がいるワーキングウーマン。恋愛なんて縁がないと思っていたある日、気にかけていた18歳年下の部下タカシに、バーで『好きな人がいるんだけど告白できなくて悩んでいる』と告げられる。なんと、その相手は…シホ自身だったのだ。

振り払った彼の手。でも押さえられなくなった自分の気持ち

振り払った彼の手。でも押さえられなくなった自分の気持ち

気まずい沈黙が続き、いたたまれなくなった。シホは立ち上がって「今日はもう帰ろうか」と言った。

タカシが一人暮らしをしているマンションは、バーからさほど遠くはなかった。タクシーに乗っている間、二人とも終始無言だった。

「タクシーが家の前についたとき、彼は無言で手をつかんで私にも降りるように促しました。でも私は手を振り払って『おやすみ』と言ってドアをしめました」

「彼が降りた後、『これでよかったんだ』と思いながら、私は自分の住所を告げようとしました。でも……なぜか胸が苦しくて言えなかった。それから『ごめんなさい。やっぱり私もここで降ります』と言ってタクシーを後にしました。

すると、マンションの入り口で彼が待っていてくれました。きっと私が来るとわかっていたんでしょうね。エレベーターに乗ると、無言で彼が私を抱きしめてきました」

明るい蛍光灯に照らし出された「老いた自分の現実」

明るい蛍光灯に照らし出された「老いた自分の現実」

部屋に入ると「ありがとう」とタカシが小さな声でつぶやいた。「私こそ」と答えた。

だが、いざとなるとシホは後悔しはじめた。自分が何をしようとしているのか、お酒の酔いも醒めかけて頭がパニックになり倒れそうだった。

「部屋の明るい蛍光灯って残酷ですよね。彼のピンと張った若い首筋を間近に見て、私は18歳年上なんだ、という現実を目の前にマジマジと突きつけられた気がしたんです。

今たぶん、私は化粧くずれした顔でシワもシミも目立っている50代のオバサンだと。

『やっぱり無理よ。私はこんなに年をとりすぎてるもん』と弱気になって言いました。タカシは『そんなの全然関係ない』と。突然タメ口になりました。

でも私は自分の老いた体を知っている。ゆるんだお腹も垂れ下がった胸も人様に見せられたものじゃない。ましてや18歳年下の男性になんて……ああ、もっと鍛えておけばよかったと思ったけど、もう遅いですよね」

年齢は関係ない!見た目じゃなくて中身が好きなんだ

年齢は関係ない!見た目じゃなくて中身が好きなんだ

彼は彼女の頬を両手で包み込み、じっと目を見つめながら諭した。どうしようもなく好きなんだ、年齢なんて関係ない、見た目じゃなくて中身が好きなんだ、だからどんな姿でも魅力的だし、これからもっと年をとっても気持ちは変わらないよ……とタカシはせつせつと訴えた。

自分も意識していた男性に、そこまで真っすぐ好意を伝えられて、拒絶できる女性はいるのだろうか?

「しばらく無言が続いた後、『なら、キスだけね』と私は言いました。もし一線を越えてしまっては、上司と部下として仕事にも支障をきたすから絶対にダメと、冷静に考えてしまう自分がいたんです」

実は5年以上セックスレスだった。18歳年下の男性と唇を重ねた瞬間、言い表せない感情が押し寄せたのだ。

■第4話「5年ぶりのセックス」に続く…>>

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亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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