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- 【映画レビュー】心の傷と秘密の物語「流浪の月」
女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今月の1本は、それぞれ“他人には理解してもらえない”であろう心の深い傷と秘密で結ばれた、二人の苦しみと心の行方を描く作品です。
「流浪の月」
佐伯文(さえき・ふみ)(松坂桃李〈まつざか・とおり〉)は、ある日、公園で降り出した雨に濡れたままの10歳の少女・家か内ない更紗(さらさ)(白鳥玉季〈しらとり・たまき〉)と出会い、アパートに連れて帰る。両親と離別し、おばの家で暮らす更紗は家に帰りたがらず、そのまま文と暮らし始めた。
「小学生女児誘拐事件」は世間を騒がせ、やがて逮捕された文は“犯人”、更紗は“被害者”となった。15年の月日がたち、恋人・亮(りょう)(横浜流星〈よこはま・りゅうせい〉)と暮らす更紗(広瀬すず〈ひろせ・すず〉)は、偶然、カフェを営んでいる文と再会した。恋人・あゆみ(多部未華子〈たべ・みかこ〉)がいるせいか、素知らぬふりをしている文に違和感を感じながらもカフェに通い詰めるが、それに嫉妬した亮がネットに文の過去を暴いたことで、二人の生活は大きく揺らぎ始める。元加害者と元被害者が、なぜ接触するのかと。
物語は、それぞれ“他人には理解してもらえない”であろう心の深い傷と秘密で結ばれた、二人の苦しみと心の行方を描く。
本屋大賞を受賞した凪良ゆう(なぎら・ゆう)の同名小説の映画化を手掛けたのは、「悪人」や「怒り」の李相日(リ・サンイル)監督。人間の心の深淵を覗き込もうとする果敢な姿勢は本作でも健在で、男と女ではありながら、恋愛とはまた違う、人と人との魂の触れ合いを描いてみせた。理解できない人を“排除”し、孤立させる社会の残酷さといった現代的な問題が背景に描かれており、見た後に深い余韻が残る。撮影を担当したのは「パラサイト」なども手掛けた韓国の撮影監督ホン・ギョンピョだが、人間の業と対極をなす、美しい風景には心が洗われる思いだ。
「流浪の月」
ファミレスでバイトをしながら恋人の亮と暮らしている家内更紗は、ある日立ち寄ったカフェで佐伯文と再会する。文は更紗に気付かぬ素ぶりだが、やがて15年前の二人の事件がネットに書き込まれる――。
原作/凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社刊)
監督・脚本/李相日
出演/広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子、
趣里、内田也哉子、柄本明他
配給/ギャガ
5月13日(金)より、全国公開
https://gaga.ne.jp/rurounotsuki/
今月のもう1本「オードリー・ヘプバーン」
「ローマの休日」で24歳にしてアカデミー賞主演女優賞を受賞、ファッションアイコンとして今も根強い人気を誇る伝説の女優オードリー・ヘプバーンの知られざる素顔に迫る。幼少期の父親の裏切り、第二次大戦下の過酷な生活、結婚・離婚による疲弊、やがて見いだした“愛を与える”という生きがい。本人の言葉や家族、関係者などのインタビューからその実像が浮かび上がる、初の本格的ドキュメンタリー。
監督/ヘレナ・コーン 出演/オードリー・ヘプバーン、ショーン・ヘプバーン・ファーラ
ー、エマ・キャスリーン・ヘプバーン・ファーラー他
製作/2020年、イギリス
配給/STAR CHANNEL MOVIES
TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他、にて、全国公開中
文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。エンターテインメント・メディア『ファンズボイス』(fansvoice.jp)を運営。
※この記事は2022年6月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。
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