ネットフリックスオリジナルシリーズの話題作!

1日で見終わる韓ドラ『未成年裁判』と良作の出会い方

公開日:2022.04.01

コラムニストの矢部万紀子さん(61歳)によるカルチャー連載最終回。今回は、ネットフリックスで配信中の韓国ドラマ「未成年裁判」を取り上げます。深刻な社会問題を題材にした全10話を1日で見終わってしまうほど、続きが気になるドラマなんです。

Netflixシリーズ「未成年裁判」独占配信中
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一気見したくなる!社会派リーガルドラマ『未成年裁判』

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ドラマや映画や本などの情報を紹介してきましたが、今回でおしまいです。スタートが2020年2月ですから、ずっとコロナ禍。エンタメは不要不急ではないとされがちな時期でしたが、こう思います。こんな時だからこそ、ますます要で急だ!

最後に紹介するのは、ネットフリックスで配信中の「未成年裁判」。2月25日に配信スタート、公開4日で世界7位、日本を含む7か国で1位を記録したという話題のドラマです。

主人公は女性判事ウンソク。少年事件が専門です。1話の冒頭、彼女が取材に答え、その役割を語ります。

「少年保護事件の審判に検察官は出席しません。判事が子どもに尋問を行い、保護処分を決定します。少年部の判事の仕事はそこからです」。逃亡や再犯などをしないよう監督する、少年法の本来の目的は「健全な成長」だから。

記者が「なぜ少年部の判事になったのか」と尋ねます。グッとにらみ、こう答えます。「嫌悪。私は非行少年を憎んでいます」

えっ? 非行少年へ思い入れなし? 反射的にそう思い、次の瞬間、これは壮大な伏線だろうと思います。うまい! そう言いたくなるスタートです。

フィクションですが、実際の事件をモチーフに制作されているそうです。だから彼女の向き合う犯罪は、韓国の今を切り取っています。凶悪犯罪の低年齢化、ひとり親、貧富の差、家庭内暴力……韓国だけの問題でないから、世界中で見られるのでしょう。ウンソクの尋問が犯行の実態を明らかにする、その「謎解き」は実に鮮やかです。一気見したくなること、請け合いです。

主人公・ウンソクのファッションにも注目を!

主人公・ウンソクのファッションにも注目を!
Netflixシリーズ「未成年裁判」独占配信中

ウンソクは、ずっと黒っぽい服を着ています。黒ジャケット&黒スカート&白ブラウスとか、黒セーター&白シャツとか、黒ジャケットにタートルネックとか。黒のコートは、たぶんずっと同じです。

これ、働く女性あるあるだと思います。黒ならちゃんとしてる感は出せるし、組み合わせもあまり考えず済むので、朝の時間短縮になります。仕事に必死だった頃の私がそうでした。

Netflixシリーズ「未成年裁判」独占配信中
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ところが日本のドラマだと、こうはいかないのです。演じる人で程度の差こそあれ、必死に働く女性もみんなおしゃれです。それ以前に、「仕事はできる」の後に「でも、ちょっと抜けてるところがある」とか「本当はお茶目」とか、そういうおまけがついてくるのです。可愛さアピールが避けられない時点で、おしゃれはついてきてしまうのでしょう。

その点、「未成年裁判」は余計なおまけなし。社会の問題点を徹底して描く気概があります。しかも勧善懲悪を排し、人は複雑だという当たり前のことを見せてくれます。羨ましい、という言葉さえ浮かびました。韓国ドラマにしては短めで、1話60分ほどが10話。回収されてない伏線があり、「未成年裁判2」は間違いなしです。それまでに、ぜひご覧ください。

ハマる「エンタメ作品」との出会い方

Netflixオリジナルシリーズ『愛の不時着』独占配信中
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そして最後に、少しだけ。エンタメ作品と、どう出会うかという話をします。世の中には、それこそ星の数ほどのエンタメ作品があります。その中から、何をどう選ぶのか、という話です。私の素人なりの結論を言うなら、「出会ったら、攻める」。それが成功への道ではないでしょうか。

「未成年裁判」は、韓国語講座の同級生が「1日で見た」と言っていたのです。この連載でも一度、書かせていただきましたが、2021年の4月から韓国語を勉強していて、2年目に突入するところです。出発点は「愛の不時着」(ネットフリックス)で、それがコロナ禍の私を救ってくれたという話は長くなるので割愛します(詳しくは、『沼落ち必至「愛の不時着」は重厚な大人の恋愛ドラマ』をお読みください)。韓国語講座も出会い、同級生からの情報も出会い、だから即、見ました。素晴らしいドラマでした。

もう一つ、例を挙げます。時々聞いていたラジオ番組に「伊集院光とらじおと」(TBSラジオ)がありました。3月24日で最終回になりました。そっかー、伊集院さんも終わりかー、と連載が終わる自分を重ねて聞きました。そこで伊集院さんが「すごくいい映画だった」と紹介していたのが、「コーダ あいのうた」でした。即、見に行きました。伊集院さんの語り通り、泣けました。日本時間の28日、アカデミー賞作品賞に選ばれました。

これだ、と思う「出会い」があったら、ためらわず行動に移す。この方法だと、あまり面白くない作品だったとしても、案外後悔しないのです。爽やかなハズレ、とでも言いましょうか。

「未成年裁判」でウンソクを演じていたキム・ヘスさんに興味を持ち、少し調べてみました。「ひかり探して」という映画が最近公開されていたことを知りました。共演はイ・ジョンウンさん。「未成年裁判」でウンソクの上司を演じていた人です。二人の女性の連帯を描いていると紹介されていました。

これは見に行かねばと思ったのですが、上映はほとんど終わっていました。が、見つけました。4月30日から横浜のミニシアターで上映されます。絶対、行きます。出会ったら、攻める。これからも、そうしていくつもりです。ご愛読、ありがとうございました。
 

もっと知りたい■

矢部 万紀子

1961年生まれ。83年朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』(幻冬舎新書)

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