- ハルメク365トップ
- カルチャー
- エンタメ
- ドラマ「スナック キズツキ」傷ついた心に必要なもの
同世代コラムニストの矢部万紀子さんのカルチャー連載。今回は益田ミリさんの漫画が原作で、テレビ東京で放送中のテレビドラマ「スナック キズツキ」を取り上げます。日常の中で小さく傷つくことってありますよね、そんなささくれた心を癒やしてくれますよ。
原田知世さん主演のドラマ「スナック キズツキ」
原田知世さんといえば、きれいでふんわり。そう思っていましたが、2021年10月8日から始まった「スナック キズツキ」(テレビ東京、金曜深夜0時12分〜)は違いました。ふんわりしていない原田さんが導く、とても良いドラマでした。
まずは最初のナレーションを紹介します。
<誰かにだまされたわけじゃない。誰かに裏切られたわけでもない。泣きたいほどひどい目に遭ったわけではないけれど、ほんのささいな出来事に心が傷つくことがある>
スナックキズツキは、傷ついた人だけがたどり着くというスナックです。お酒は出ません。原田さん演じるのは、ママ・トウコ。入ってきたお客に「今日もお疲れさん」と言い、お客の二人称は「アンタ」です。ふんわり度が低いだけでなく、不思議な圧があります。それが絶妙な効果をもたらします。
初回のお客は、コールセンターのオペレーター・中田さん(成海璃子)です。職場ではクレーム電話に手こずらされ、約束している彼には待たされます。居酒屋で皿うどんが食べたいと思っていたら、やっと来た彼はモロキュウを頼みます。
「スナック キズツキ」で始まるミュージカル
会話も弾まず彼と別れ、たどり着くのがスナックキズツキ。中田さんはソイラテを注文、トウコさんは丁寧にコーヒーをいれることから始めます。そして、「うちはカレーもおいしいよ」。不思議な圧=存在感ですすめます。カレーの次は、カラオケ。「ところでアンタ、キーは低めかな」といきなりマイクを渡し、ギターを手にこう言います。「適当に合わせるから、好きにやっちゃって」。何を歌えばいいのかと聞く中田さんへの答えは、「今のアンタの気持ちだよ」。
そこからミュージカルになりました。トウコさんの不思議な圧が不思議な空間にリアルさを与え、ミュージカル風味もあまり違和感はありません。「わたしはあなたじゃない、中田だ〜。最初に名乗っているのに、誰も聞いちゃいないのさ〜」と始め、気付けば職場で歌っている中田さんは時々スナックに戻り、トウコさんが合いの手を入れます。カラオケだけどミュージカル、ミュージカルだけどカラオケ。
「2番、いいですか?」と断り、彼との関係を歌います。「付き合って2年の彼〜。いつも自分のことだけしゃべってる〜。あたしには質問しないよね〜。徹子の部屋のゲストのつもりなのかな〜」。悲しい恋模様ですが、爆笑です。そしてこの歌、こう終わりました。「会ったあとは、うらさみしい〜。そう、わびしいのさ〜」。
歌っているうちに、中田さんは本心に気付いたようです。でも、発散したから、明るくなります。傷ついた心に必要なのは、他人のなぐさめより自分の発散。ただし、そこに連れていってくれるのは、誰かの優しさだとしみじみします。そして、歌いたくなります。
私も小さく傷ついたことを歌っちゃいます
例えば、私がある店で支払いした時の歌です。ポイントがつくからPというカードは持っているか、と聞かれました。Pはないけど、Pと連携していると聞いたことのあるDは持っていました。だから「これならあるのですが」とDを出したところ、「ぜんっぜん、違います」と言われたのです。
「違うことは知ってるよ〜。でも、連携してると聞いたことがあったのさ〜。だから出したのに、『ぜんっぜん』は悲しい〜。せめて『ぜんぜん』では、ダメだったかな〜」
この年ですから、恋愛模様で傷つくことは、残念ながらないです、最近は。ビジネスシーンで傷つくことも、以前よりだいぶ減りました。でも弱みはあって、それは最新の「使うとお得で便利なもの」。「ポイントカード」もそうだし、「アプリ」はもっと苦手です。それをなんとかついていこうとがんばっているのですが、スイスイとはいきません。最近導入したPayPay(ペイペイ)もノロノロ支払うと迷惑そうにされ、そのたび軽く傷つきます。「スキャンかバーコードか、すぐに反応できないのさ〜。許しておくれ〜」。
トウコさんの不思議な優しさに、つい歌いたくなります。脳内カラオケだけでなく、スナック キズツキで歌いたい。そう思う夜中です。
次回予告を見たら、中田さんにクレームをつけた安達さん(平岩紙)がスナック キズツキにいました。楽しみなので、買いました、原作、益田ミリさんのコミック『スナック キズツキ』。
帯に、<キズついて、キズつけて、生きてる。>とありました。傷ついた中田さんを傷つけた安達さんも傷ついている。そういうつながりが描かれていました。原作の雰囲気を忠実に再現、ミュージカル風味でさらに立体的になったドラマです。見て、傷を知り、歌って、発散する。コロナ禍でこもりがちな日々だからこそ、すごくおすすめです。
矢部万紀子(やべ・まきこ)
1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)、『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』(ともに幻冬舎新書)
■もっと知りたい■
-
スマホで医師に健康相談
24時間365日OK!30秒以内に医師・看護師・薬剤師などの医療チームがあなたの「健康相談」に応答してくれる♪ -
最高のワイナリーツアー♥
家族・友だちと!雰囲気バツグンの熟成庫見学・高価な貴腐ワインのテイスティングはいかが?お得なクーポンも! -
やばっ、冬の尿モレ
寒い冬、なぜ尿モレが増える…?3つの原因&4つの「効果的な尿モレ対策」を専門医に教えてもらいました! -
人生で1度は訪れたい場所
ミネラル豊富な美人の湯、最高のオーシャンビューなど、心もカラダも癒やされる魅力が盛りだくさん!人生で1度は訪れたい名所をcheck -
生前親に●●聞き忘れると
老親の契約や登録しているサービス、これらを子が把握していないと将来ムダな出費や面倒なトラブルに発展する可能性が!特に見落としがちなのは… -
60日で英語が話せる!
英語をマスターするのに「完璧」はいらない!初心者でも60日で英語が話せるようになる、驚きの3つのコツとは? -
おひとり様の備えはOK?
この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生! -
体験談:50代やって正解
銀行は断然「紙の通帳」派!そんな「デジタル嫌い」の私が 銀行アプリを使ってみたら想像よりもはるかに便利すぎて… -
50代~お金の増やし方
将来を見据えて、50代から「まとまった資金の調達」が重要になります。どんな選択肢があるか、ご存知ですか? -
認知症リスクに40%も差
最近、驚きの研究結果が…!「犬を飼っている人」は「飼っていない人」に比べて認知症リスクが… -
今なら無料でお試し!
将来、自分の認知機能が低下するリスクがあるか、簡単に予測できるサービスが誕生。今なら無料で先行利用できます! -
自分に似合う「眼鏡」は?
見た目の印象が若返る♥「自分に似合う眼鏡」を知って、ワンランク上のおしゃれを!