北海道の寿都町と神恵内村でいいのか?

自分事として考えたい「核のゴミ」最終処分場問題

公開日:2021/01/09

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原子力政策が始まった1950年代から問題が先送りにされてきた「核のゴミ」の最終処分場の選定が進んでいます。政府から要望を受けたという北海道の2つの町が名乗りを上げましたが、住民は反対。その選定プロセスと地盤に問題がある現状を解説します。

核のゴミのイメージ
核のゴミのイメージ

50年以上先送りにされてきた「核のゴミ」の最終処理場問題 

四国電力の伊方発電所
四国電力の伊方発電所


原子力発電所から出る「核のゴミ」(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場の候補地として、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が名乗りを上げました。

日本の原子力政策が始まった1950年代以降、先送りにされてきた問題が一気に動き始めた一方、候補地としての調査受け入れを突如として知らされた2町村の住民から、不安や反対の声が高まっています。想像を超える長期のスパンで将来世代に影響を及ぼしかねない問題であるだけに、国民全体での議論を求める声が高まっています。

核のゴミとは?

核のゴミとは、原子力発電によって使われた使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出し再利用する際の過程で出る廃液を、ガラスで固めたもののこと。「ガラス固化体」とも呼ばれる核のゴミは、極めて高い放射線を放っており、1本の放射能量が安全なレベルにまで下がるのに数万年~10万年かかるといわれています。

日本では2011年3月11日時点で54基の原子力発電の炉がありました。2013年7月に原発に対して新しい安全基準が決まり、それをクリアした上で再起動・稼働中の炉は9基、廃炉を決定した炉が24基あります。(※2020年11月24日時点)

核のゴミの最終処分場所が決められるまで

青森県六ヶ所村の再処理工場
青森県六ヶ所村の再処理工場


日本の原発政策は、核のゴミの最終処分場がないまま認可・稼働されてきたため「トイレなきマンション」と批判されてきました。2000年には核のゴミ処理を進める目的の法律が整備され、電力会社の出資のもとに「原子力発電環境整備機構」(NUMO)が設立され最終処分場選定の枠組みが出来上がりました。

NUMOによればこれまでに、宇宙に放つ、海洋底に処分する、南極の氷床に処分するなどの方法が検討されてきましたが、現在は「地層処分」が安全性を保つ上での国際的な共通認識となっているといいます。

「地層処分」とは、地下300mより深い岩盤に、核のゴミのガラス固化体を金属製の容器に入れ、粘土で覆い、放射能を閉じ込めた状態で地下近くの岩盤に埋めるというもの。つまり地下の深い岩盤に10万年近く高レベル放射性物質を隔離し、環境や人間の健康に影響を及ぼさないよう管理し続けるという手法です。

現在、核のゴミは青森県六ヶ所村の再処理工場などで2万5000本程度が保管されています。しかし最終処分場が決まらなければ、核のゴミの行き場がないばかりでなく、増えていく一方です。

寿都町と神恵内村が文献調査に応募した経緯は

寿都町と神恵内村の場所


北海道の西部に位置する寿都町と神恵内村が、核のゴミの最終処分場の候補地としての選定に向けた「文献調査」に応募するという話は2020年夏、突然のように降ってわいてきました。

寿都町では、2020年8月頃から「文献調査」への応募することへの検討が町議会でなされており、議決の上2020年10月9日には同町の片岡春推町長が、正式にNUMOの文献調査に応募。同日、神恵内村の高橋昌幸村長も、国から申し入れがあったとして文献調査の受け入れを正式に表明しました。文献調査への応募により得られる国からの交付金は約20億円あり、少子高齢化や過疎化による厳しい財政運営の道を歩む両自治体にとっては、魅力的です。

2007年には高知県東洋町で文献調査に関する認可申請が出されましたが住民による反対を受け、調査が行われないまま白紙に戻った経緯があります。そのため今回の北海道2町村での文献調査は実質的に全国で初めてのことです。

両自治体が正式に公表してから約1か月後には文献調査が開始され、今後2年間にわたり、過去の地震や火山活動データなどの文献を紐解き、候補地としての適正が審査される予定です。最終処分場の候補地としてふさわしいとみなされた場合は、次のプロセスである「概要調査」「精密調査」に進んでいきます。しかし知事や市町村長から反対があった場合は、次の段階に進まないことが決められています。

活断層がある地域に核のゴミを埋めても安全? 

神恵内村の積丹海岸
神恵内村の積丹海岸。神恵内村という名称は、アイヌ語の「カムイ・ナイ」(美しい神の沢)が由来。「地形がけわしく、人が近づきがたい神秘な沢」を意味しています

今回、北海道の2町村で文献調査がスタートしたことは、前向きな動きと捉えるべきなのでしょうか。結論からいうと、今回の決定には、大きな2つの問題を含んでいると言わざるを得ません。一つ目は地質上の特性、二つ目は住民との合意形成のあり方です。

一つ目の地質上の特性に関しては、2017年に経済産業省が公表した「科学的特性マップ」では、神恵内村は火山が多く選定先として「好ましくない特性」があるとされています。また寿都町は同マップ上では「好ましい特性」がある地域に分類されていますが、北海道大学の小野有五名誉教授らのグループは、北海道寿都町から長万部町にかけて活断層「黒松内低地断層帯」が存在すると指摘しています。

こうした地域に核のゴミが何十万年にもわたって地中に埋められれば、地震や温暖化等でなんらかの事故が発生した場合は、その影響が何世代にもわたって続くリスクも考えられます。

二つ目に関しては、2町村での選考プロセスへの応募までの過程が、多様な情報が透明性をもって住民に開示され、多様な人々による民主的な議論を経た上での決定とはいいがたいという点です。

寿都町の住民に反対の声はあるが、町議会に届かず

風力発電に取り組んでいる寿都町の様子
風力発電に取り組んでいる寿都町の様子

寿都町の片岡町長は文献調査への応募について「町民に伺うと面倒」などと発言したことなどが各種報道から明らかになっています。また住民が望んでいたにもかかわらず12月には「寿都町に放射性物質などを持ち込ませない条例」案が否決されました。現在、核のゴミの受け入れに反対する住民団体が中心となり、近く町議会のリコール請求を行う準備が進められています。

核のゴミ問題は、私たちの日常に深く関係する問題であるだけに、現在、国やNUMOは全国で対話型の説明会を開いています。しかし、国とNUMOの政策説明が主軸であり、不安を抱える住民と丁寧に深い対話が重ねられていないことを指摘する声もあります。北海道大学教授の大沼進さんは、新聞の取材に答える形で、すでに最終処分場の建設が進むフィンランドでは全国で十分に対話を重ねて合意を得ていった方法を参考に、日本でも東京を含む全国の都市でそもそもの選定基準から話し合う必要があることを指摘しています。

原子力発電を使う限り、核のゴミは他人事ではない

原発政策が進められても、脱原発の方向に舵が切られても、これまでに蓄積してきた核のゴミを、将来世代のために安全に処理していく必要があります。「科学的特性マップ」には、今回の北海道の2町村の他に「好ましい特性」があるとされた自治体が多数あります。

今回、選定プロセスの過程をスタートさせた北海道の2町村が、核のゴミの最終処分場として客観的にふさわしい場所なのか、他にふさわしい場所はないのか、あるいはこれ以上、核のゴミを増やさないために脱原発を進めることは可能なのかなど、電力の恩恵を受けている私たち一人一人が、この問題を自分事として考えていきたいものです。                  

ではこの問題を、もっと自分事として考えていくために、具体的に何から始めればよいのでしょうか。寿都町で核のゴミの文献調査に反対する住民で構成する「子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会」は、フェイスブックで全国に情報を発信しています。またNUMOが各地で開催中の「対話の場」に足を運んだりしてみることも、一つのきっかけになることでしょう。

 

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■参考資料■

清水 麻子

しみず・あさこ ジャーナリスト・ライター。青山学院大学卒、東京大学大学院修了。20年以上新聞社記者や雑誌編集者として、主に社会保障分野を取材。独立後は社会的弱者、マイノリティの社会的包摂について各媒体で執筆。虐待等で親と暮らせない子どもの支援活動に従事。tokyo-satooyanavi.com

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