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- エッセー作品「自然流」傳田啓子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「仕上げる」です。傳田啓子さんの作品「自然流」と山本さんの講評です。
自然流
移り変わりする庭の1年がある。
現実は、芽が出た、花が咲きそうだと、その周囲を追いかけるように草を取る。
霜柱とともに土が持ち上げられる頃になると、日中の暖かさに、そろそろ雑草が動き出す。
この時期に草を持ち上げると、簡単に除草できるので頑張りたいところだが、まだまだ寒いしと、年々ずくをやむようになった(※註)。
すると、たちまち雨や陽の強さで雑草はしっかり育ち、あわてて除草をはじめるが、庭を一周しないうちに、草を追いかけていたはずが、追い越されていることに気付く。
遅れた結果、ドクダミは純白の花のかたまりとなってきれいに咲いている。
まあ、これも有りかなと残しておく。
その間、球根類、サクラソウ、アヤメ、ツツジなど次々と咲いてくれ、視線は草から花へ移り、雑草に慣れてくる。
木々が落葉した頃、年1回、植木屋さんがせん定に来てくれる。
以前は、葉が繁ってうるさくなると、勝手に切り、花が付かなかったりもしたが、うっかり松の頭を切り落とした時、「松だけはいじらないでください。」と注意を受けた。
最近は、いじるどころか草取りさえもパス状態。
そんな荒れた庭が2日間でできるかしらと安じていたが、散髪の後のように庭は整った。
「やった感」を感じられるのは、どうもチリひとつも落ちていない状態ではないようだ。
きちっと見せる部分を際立たせることは、他をボヤカシてくれるのだろうか。
完ぺきにすることもできるはずだが、日数もかかり、金額も高くなる。
年金生活者の家の作業は、2日間程度で、それなりの形になる事が重要なのかもしれない。
長年我家の庭のせん定経験から、今回する場所と次回に回すものを選択し、全体バランスを調整しているのでは、と思う。
母のデイ等施設との連絡帳も、最初はきれいに書いたり、気取りもあり、時間がかかっていた。
そこで、お迎え前、時間は10分という制限で書くことにした。
スピード優先のなぐり書きした頭に浮んだ内容は、意外に、意識せずとも選択されていた。印象に残った順に浮んだということか。
1箇所を、チマチマ完ぺきに草取りし時間をかけた割に、他の部分が大幅に残り、全体を見れば「やった感」のないこれまでの作業方法は見直したほうが良いようだ。
年を重ねるごとにできることが少なくなる。
季節の移り変りという制限の中、「自然風」という言い訳で、雑草も含めて、折々ならびの草花のイキイキ感を好きになる庭を楽しみたい。
※註:「ずくをやむ」はやる気のない様を表現する長野県の方言
山本ふみこさんからひとこと
流れるように読める、うつくしい随筆です。そうして共感にうち震えました。
ねこ車(一輪車です)をいっぱいにするのを目標に、庭であちらに飛び、こちらに飛びするようなわたしの草とりを肯定していただいたような気持ちです。
お母上の通われる施設の連絡帳のことも、そうです。
これにも感心しました。はじめのうちの「気取り」というのも、愉快。わかるわー。
そうして皆さん、エッセー、随筆を書かれるときも、同じです。エッセー、随筆は10分では書けないけれど、そうですねえ、2時間で仕上げるというのはどうでしょう。
日を過ごしながら、書くことを考え、書きだしを決めます。構成もなんとなくつくっておきます。そうしたところで、椅子に坐って書きはじめましょう。
坐ってから、何を書こうか考えたって、だめです。うんうん唸って時間だけが過ぎてゆくことになるでしょう。
大切なのは、イメージをつくってから坐ることと、もうひとつ「2時間で書き上げる」と自らの脳に云い聞かせること。ぜひ、お試しください。
そうそう、「傳田啓子」の作品を見返していたら、オレンジ色のペンを引き損なっていることがわかりました。夢中で読んだのですね、ごめんなさい。でも……、全部にオレンジのラインを引きたい思いです。
文中の「ずくをやむ」は長野のことばでしょうか。ずく(根気やら、意欲やら、でしょうか)を出してがんばれない、というような?
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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