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- エッセー作品「癖」小田原薫さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「仕上げる」です。小田原薫さんの作品「癖」と山本さんの講評です。
癖
昔から悪い「癖」がある。
何事もあと「もう少し」というところまで来ると気力が萎えてしまう。
最後まで仕上げるという強い意志がないのか、飽きてしまうのかわからない。
例えば押入れを整理すると、裁断したままの木綿生地が出てくるが「もう少し」どころか、ミシン縫いも手縫いの跡もない。
スクールバッグを製作しようと思った時のワクワク感が胸に蘇るが、意志の弱い中途半端な自分を突きつけらたような気がして情けない。
手芸だけではない。
もうとっくに忘れてしまっている「仕上げるまで到達しなかったサムシング」の数々。
折りかけの折り紙でつくる四角い箱、会いたいなと思う友達に書きかけた手紙、テレビで見た美味しそうな外国料理を作ろうと買った、冷蔵庫に入れたままの香味野菜、京都に移住した友達からの「京都でお茶しましょ!」の誘いの返事など、次々と頭に浮かぶ。
年を重ねるという厳しい現実を忘れないようにしなくては、仕上げられないままの諸々がたまっていくだけだ。
仕上げても仕上げられなくても、毎日の生活に支障をきたさないからと、自分に甘くしていると碌(ろく)なことはない。
挑戦してみようかなと思って取りかかった「何か」は、たとえ小さなことでも頑張って最後まで仕上げるからこそ価値がある。
何より「達成感」は「魔法の力」となって私を応援し続けてくれるに違いない。
1つだけ、必ず最後まで仕上げるものがある。
「文章を書く」ことだ。
何を書こうかなと家事の合間に問いかけたり、送ったり、「創造の世界」を訪ねる楽しさは、ひとり遊びの第1位に位置する。
「ようこそ、言葉の世界へ!」 という声とともに、扉が開く。
山本ふみこさんからひとこと
「小田原薫」の癖が、ご本人が書いているほどのこととは思えません(これまでのやりとりにより、わたしにはわかるのです……)。しかし、ともかく書き手は「悪い癖」と呼び、ユーモアをもってとらえているところが、魅力的。
「ようこそ、言葉の世界へ!」
これが原文の結びです。
という声とともに、扉が開く を足したのはわたしです。へんてこですかね。
じつは「ようこそ、言葉の世界へ!」をトルとして、
(前略)「想像の世界」を訪ねる楽しさは、一人遊びの第1位に位置する。
で結んでもいいなあと思うのです。
「ようこそ、言葉の世界へ!」が胸に迫って、トルとすることができなかったのでした。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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