山本ふみこさんが選んだエッセーの紹介とQ&A動画

山本ふみこさんエッセー通信講座第6期参加者の3作品

公開日:2023.06.25

随筆家の山本ふみこさんが講師を務めるハルメクのエッセー通信講座。エッセーの書き方を半年間で学んでいきます。今回の動画では「自分の感性の蓄え方や活かし方」についてのお話と、参加者の作品から山本さんが選んだ3本のエッセーをお楽しみください。

山本ふみこさんエッセー通信講座第6期第3回
山本ふみこさんエッセー通信講座第6期第3回

山本ふみこさんが選んだ3つのエッセー

クリックすると、作品と山本ふみこさんの講評をお読みいただけます。第6期第3回で取り組んだエッセーのテーマは「仕上げる」です。

「一丁上がり」石川久子さん
先日、久しぶりに映画を観に行った。観たい映画はたくさんあるの……

「癖」小田原薫さん
昔から悪い「癖」がある。何事もあと「もう少し」というところまで……

「自然流」傳田啓子さん
移り変わりする庭の1年がある。現実は、芽が出た、花が咲きそう……

人気随筆家の山本ふみこさんから半年間でエッセーの書き方を学ぶ通信制エッセー講座には、日本各地から応募した41名が参加しています。毎月1本書きあげたエッセーに、山本さんのアドバイスや添削を受けて、実践的に学んでいます。

参加者一人ひとりが直面する悩みや疑問は、実は、エッセーを書く人にとって共通する学びの宝庫です。
ハルメクでは、月1回山本さんが参加者の質問に回答する動画を制作。現在の参加者が生き生きと学べるように、また、どなたでもご覧になって学びを生かせるように公開しています。

今回は第6期の3回目。動画では、正確な文章を心がけていると忘れてしまいがちな「自分の感性」と、その蓄え方や生かし方について山本さんにお聞きしました。

自身の「感性」を大切に書く。そのヒントは武田百合子の作品の中に

山本ふみこさん:最近はみなさんからエッセーの書き方についての質問は少なくなっています。
書くうえでの決まり事はあっても、自由に書いていい、自分で決めていいということがみなさんに伝わってきていると実感します。

今回は「書き方」から踏み込んで、少し高度なお話をしようと思います。

エッセーを書く人に是非読んでもらいたい随筆家・武田百合子

『富士日記』

『日日雑記』

みなさんは武田百合子(たけだ・ゆりこ)という随筆家をご存じでしょうか?
作家・武田泰淳(たけだ・たいじゅん)の妻で、元々は妻として母として支える役割を果たしてきたので、ご本人は物書きになろうだなんて考えてもいなかったのではないかと思います。

ただ、とても魅力的で、憧れずにはいられない人です。
私は物を書く人、特に随筆やエッセーを書く人に、武田百合子の作品を読むことをおすすめします。

今回ご紹介する2冊の本が出たのは、夫の泰淳が亡くなった後のこと。
彼女自身もあまり長生きとは言えないので、著作物も多くはありません。けれど、どれも本当に素敵です。

まず1作目は『富士日記』

この作品は、武田家の富士山麓の家で過ごす日々を日記風に綴った作品です。
食べ物のことや、買い物に行ったときの品物、また、その品物の値段も書いてあって面白いです。それから、大工さんや、その山の家の世話をしてくれる人とのやりとりなど、地元の人の様子も書かれています。

「日常のこんなことが、こんな風にみずみずしく書けるんだ」ということがよく分かると思います。

続いて『日日雑記(にちにちざっき)』

「日日雑記」の中で、私がとても魅かれた内容があるのでご紹介します。

場所は山梨県の下部(しもべ)温泉。ここは武田信玄の隠し湯として有名な秘湯です。
この温泉に1日6回入り、鉱泉水を1日3リットルも飲んでいるという人が、話の中に出てきます。その人を周りの人は「すごい!」という目で見ていて、百合子さんにも「あの人、いくつに見える?」と聞いてきます。
実際は70代なんですが「40代かな?」なんて言うと周りは満足気になって…。

でも、百合子さんはこう思うんです。
「それで若く見えたり丈夫になったりしたとしても、どうということだろう」と。
でも、百合子さんは「それは口に出して言わなかった」と書いています。

みなさんも私も「ちょっとこれはどうなのかしら」と思うことがあって、それを書きたいときがありますよね。
でも、それをストレートに書くのはきつすぎる。
そこを百合子さんは「でも、口に出しては言わなかった」と密やかなものとしています。

武田百合子という人は「感性の人」と評されています。決して批評をしない。解説もしない。「感性」で描ききってしまう人です。

自分の感性の蓄え方や生かし方を考える

みなさん、今まで正確に書こうとか、読者によく分かるように書こうと心がけてきましたよね。
けれど、心がけるばかりにみなさんがお持ちの豊かな「感性」で書くことを忘れてしまうことがあります。

親しい間柄で正直に話す分には辛口トークで収まる内容でも、書くとなるとそれではよくない。
かと言って、書き方ばかりにとらわれると面白味に欠けてしまう。
難しいですが、そこで働くのが「感性」です。
皆さんがエッセーを書きたいと思ったのも、豊かな感性をお持ちだからだと思います。そのことを思い出してみてください。

百合子さんの作品を読むと、百合子さんの感じていることと自分の感じていることが似ていると思う瞬間があると思います。
好きな作家の本、その文章からヒントを掴んで、ご自身の感性を磨くのもひとつの手です。
「文句とかいろいろ書いているけれど、嫌な気はしなくて共感できる技ってこれか!」とか、見つけられるはずです。

読み手が興味を惹かれる、書いたみなさんと読み手の距離が近づくような、「もっと知りたい!」と思ってもらえる文章を書くには感性が大切。
ぜひ、自分の感性の蓄え方や生かし方を考えてみましょう。

今回の動画でお話いただいた随筆家・武田百合子さんについて、ハルメク365で公開している山本さんのラジオエッセー「だから、好きな先輩」でもお話いただいています。(視聴は会員限定)

随筆家・山本ふみこの「だから、好きな先輩」15 随筆家・武田百合子

https://movie.halmek.co.jp/contents/834

随筆家・山本ふみこさんのプロフィール

「エッセーの書き方講座」講師の山本ふみこさんとは?

1958(昭和33)年生まれ。出版社勤務を経て随筆家に。ハルメクでは連載「だから、好きな先輩」やエッセー講座(会場開催と通信制)の講師でおなじみ。著書に『朝ごはんからはじまる』『まないた手帖』(ともに毎日新聞社刊)『おとな時間の、つくりかた』(PHP文庫刊)『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)『こぎれい、こざっぱり』『台所から子どもたちへ』(ともにオレンジページ刊)『家のしごと』(ミシマ社刊)ほか多数。公式ブログは http://fumimushi.cocolog-nifty.com/

ハルメクの通信制エッセー講座とは?

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。

エッセー作品一覧

ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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