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- エッセー作品「8本の木」綱則子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「決める」です。綱則子さんの作品「8本の木」と山本さんの講評です。
8本の木
この春、実家の庭に木を植えた。和室のえん側あたりを囲むように、落葉樹を7本。
なぜ雑木(ぞうき)を選んだかといえば、夏はえん側に木陰をつくって和室に涼風をはこんでくれるだろうし、冬は葉を落として日差しをたっぷり室内に届けてくれるはずだからだ。
又、落ち葉は庭の隅にでも集めておけば、一年もしたらミミズが良質の腐葉土にそだててくれるだろうと。これは庭木にとっても安全な肥料になる。
なぜ7本にしたか。
昨年、実家で一人暮らしだった母が98才で他界。さて、実家を継ぐ者がいない。
過去帳は将軍吉宗の時代から続きてきたが、祖父母がスペイン風邪を患って大正9年に2人共亡くなっている。2人には1才に満たない男児がいたが、これが私の父親になる。
この頃から縁者の少ない家系になってきたが、それでも4代前までの先祖の戸籍を知ることができたことと、母から実家の墓じまいを頼まれてきたことを考えて、実家の庭にご先祖様8人の木を植えようと思うに至った。
ここで実家の庭のトチの木が私を見つめているようで仕方がなかった。毎年、ザラン、ザランと赤い実が成る大木だ。父が植えた木だ。よし、この木は残して父の木としよう。という流れで植える木は7本に決まった。ま、なりゆき!
月2回、実家に来て庭木の水やりと草とりをしている。
自宅から車で4時間かかるが、ひとり暮らしの母を毎月1回は安否確認に通っていた実績(20年以上)があったので、苦でもなんでもない。すべて、なりゆき!
祖母の木に選んだサイフリボク。
今年早くも実がついていて感激。祖母を写真では知っていたが、ずっと身近に感じたしだい。
母の木に選んだヤマボウシ。
5月頃白い花を見ることが出来ず残念。
今夏、この日照りの中、葉先が茶色く枯れている。なんとかせねば。なりゆきなどと言っていられない。
山本ふみこさんからひとこと
作品の中には7本の木を植える話が描かれています。しかし、もともと庭にあったトチノキは残したから(どうしてそうなったかは、皆さん、読みこんでくださいましね)、それを加えて「8本の木」というタイトルにしてみました。
もとのタイトルは「墓じまい」でしたが、どうでしょう、「8本の木」というほうが、読みたい気にさせるのではありませんかね。
それぞれを象徴する木を植えておもらいになった8人のご先祖さま方は、よろこんでおられることと思います。ぜひ、縁側で声に出して読んでみてください。きっと不思議なことが起こります。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在は第5期の講座を開催中(募集は終了しました)。次回第6期の参加者の募集は、2022年12月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年1月号の誌上とハルメク365WEBサイトのページをご覧ください。
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