通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第3回

エッセー作品「ありがとう!!」花鳥風月さん

公開日:2021.02.02

「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。花鳥風月さんの作品「ありがとう!!」と青木さんの講評です。

ありがとう‼
エッセー作品「ありがとう‼」花鳥風月さん

ありがとう!!

行ってみたい。
区報に載っていた絵本作家レオ・レオーニ展に無性に行きたいと思った。

幼い頃から大好きな絵本作家の1人だ。社会人となった娘も同じファンだ。
コロナ禍で観覧は予約が必要となる。区美術館は、徒歩で10分程だが、介護中の母は主人にみてもらって、娘と久しぶりに出かけられた。レオ・レオー二はオランダ生まれの絵本作家である。

たっぷり2時間かけて堪能した。見慣れた愛しい絵本のキャラクター達に心の底から癒された。
中でも代表的なキャラクターは、日本でも教科書に載録され、知られている絵本「スイミー」。
描かれた美しい海にスイミーをはじめ海の生き物達の様子が愛らしくお話を展開してくれる。

個人とコミュニティー、コミュニティーの中の個人の在り方、在り様の悩ましさが、心に残っている。50代を過ぎても、まだ、私自身が「スイミー」のように思い悩む瞬間がある。

娘もまた、自分を「スイミー」と感じる瞬間があるという。
小学校の時は、自分だけが、「スイミー」なのではないか、と悩んだと。私も共感した。
親として同じ「スイミー」だった。力強く、コミュニティーの中を個性を大事に個人として、生き抜く。
スイ、スイとレオーニが描く美しい海を「スイミー」と共に私達親子も泳いでいたのかな。

レオーニは、ユダヤ系の父とオランダ人の母との間に生まれ、ナチス台頭により亡命を余儀なくされ、たどり着いたアメリカやヨーロッパで活躍することになる。
絵本制作のはじまりは49歳で、決して早くはなく、同世代の今の私は、力をもらえる。才能が有る無いにかかわらず、いつからでも好きなものに挑戦、いや、好きではなく、嫌いなものにも挑戦できるのではないかと思える程であった。

私と娘に力をくれたレオーニ。国を越え、世代を越え、親子の絆を深くしてくれた様で、感謝の気持ちでいっぱいになった。

帰宅し、美術館のグッズコーナーで購入した「スイミー」の描かれたハガキを家計簿にはさんで、お守りとして日々ながめる様にしてみた。
娘と同じものを好きで楽しめるのは幸せだ。
母は主人の言う事をきき、大人しくしていてくれた。主人の緊張がとける顔を見て、感謝の念がこみ上げた。

母は、のん気で、私の顔を見て、「老けたね。でも、小さい時と変わらんよ。」ときげん良く笑った。
私にレオーニの絵本を与えてくれたのは母なのだ。
ありがとう! お母さん!!

 

青木奈緖さんからひとこと

レオ・レオーニの展覧会と、「スイミー」という絵本について書かれています。
このように「自分に大きな影響を与えた作家・作品」について書くことはよくありますし、読者がそれを知っていれば共感を覚えやすいです。
けれど、初めてその名を聞く読者も置いてけぼりにするのではなく、このエッセーをきっかけに「その作家・作品に接してみたい」と思わせることができたら成功でしょう。

冒頭の「行ってみたい」という書き出しがストレートで、勢いを感じさせます。


ハルメクの通信制エッセー講座とは?

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師でエッセイストの青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。

現在、雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで3月から始まる第2期の参加者を募集しています。詳しくは、こちらをご覧ください。

 

■エッセー作品一覧■

 

ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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