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- エッセー作品「小さなお庭」橋本桂子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「昨日」です。橋本桂子さんの作品「小さなお庭」と山本さんの講評です。
小さなお庭
昨日、やっと、8畳ほどの庭の雑草取りを終えました。
暑い夏の終わりの4日間のわたしの朝仕事。
この夏はあまりの暑さに蝉も蚊までもいくらも姿をみることがなく、耳には寂しい静かなひと時でした。
庭仕事完了の「お疲れさん!」の一声と共に飲んだ冷え冷えビールのおいしかったこと。
ちなみに相棒爺様は朝食後のコーヒーです。
さて、お庭の様子を紹介しましょう。
芝生の薄緑をぐるりと囲んで四隅には、別名ヨロイドオシと呼ばれる目木(メギ)。香り豊かな金木犀。紅白のバランスが見事な花を付ける椿。ミツバチを呼ぶ山葡萄。
山葡萄の蔓と葉の重なりが強い日差しをさえぎり、たくさんの蔓先に付いたかわいい房の実は薄緑、黄色、薄紫など色とりどりできれいです。も少し季節が進むと、実の色が濃くなり鳥が実をついばみにやってきます。
マンション1階の庭ですが、前面は3メートルの高みからの芝の斜面、左右にも広がって視界が開けています。今は金木犀の手前横に萩の花がしだれ咲いています。
この庭の主はというと、去年のお正月、招き入れた山燈籠でしょうか。
俗に化け燈籠ともいうそうですが、片方の目がしっかり空けられていない、腰の曲がったいざりのような佇まい。大きな鉢のような石帽子をかぶっている様はお爺さんのようです。
名前を「ロンジー」と付けていつも話しかけています。
雨の日、雨の日の後、雪の日などそれぞれに「ロンジー」の姿は愛しく、どっしりと格好いいです。
昨年の夏はとても暑そうでしたから、今年の春「ロンジー」の横にバショウを植えました。
これが大正解で、今、広げた大きな葉で「ロンジー」を強い日差しから守ってくれています。
夜中から朝にかけてシュルシュルと幹の真ん中から、横巻き簀巻きの形で伸び上がり、お昼前には体に似合わぬ大きな葉を目いっぱい広げます。その潔さがたまりません。
江戸時代の俳人松尾芭蕉が深川に居を構えたとき、弟子から贈られたバショウをとても気に入り、葉の破れやすいのに魅了されたと記しています。
確かにそうなのです。葉脈に沿ってハラハラと破れやすいのです。
「芭蕉」の名をいただいた俳人芭蕉が、「バショウ」への愛着を示した一句。
芭蕉葉を柱にかけん庵の月 芭蕉
俳句は好き。横好きな私も下手な一句を。
芭蕉葉に昨日いだいた夢かさね 桂
山本ふみこさんからひとこと
うっとりしました。
朝仕事。冷え冷えのビール。ロンジー(タイトル、「ロンジー」でもいいかもしれませんね)。
そうして俳句も。
これからは俳句も大切にしてくださいね。文中に活かしていただきたいと希って(こいねがって)います。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、2024年1月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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