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専門家監修│放置NG!かかと・足の痛みの対処法
更年期のかかとの痛みの原因や病気、対処法を解説!
横倉クリニック
横倉恒雄
公開日:2022.07.30
更新日:2023.11.01
若い頃は平気だったヒールのある靴、痛くてもう履けない……という方も多いのではないでしょうか。更年期のかかとトラブルは、加齢や女性ホルモンであるエストロゲンの減少が原因と考えられています。痛みの対処法・予防法を専門家監修のもと詳しく解説!
監修者プロフィール:横倉恒雄さん(横倉クリニック)
よこくら・つねお 医学博士。医師。横倉クリニック・健康外来サロン(港区芝)院長。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設。故・日野原重明先生に師事。婦人科、心療内科、内科などが専門。病名がないものの不調を訴える患者さんにも常に寄り添った診療を心がけている。著書『病気が治る脳の健康法』『脳疲労に克つ』他。日本産婦人科学会認定医 /日本医師会健康スポーツ医/日本女性医学学会 /更年期と加齢のヘルスケア学会ほか。
更年期の足トラブル、4つの原因!
更年期に「歩いたときにかかとが痛い」「階段の上り下りがつらい」「足が痛くてヒールが履けない」などの症状が起こるのは、加齢や女性ホルモンであるエストロゲンの減少が原因と考えられています。
エストロゲンの減少によって、関節を支えている軟骨や筋肉の衰え、関節内の水分減少、血液循環が悪くなるなど、炎症が起きやすい状態になり、かかとの痛みを引き起こすことにつながります。
足のトラブルの4大原因といわれているのが「加齢」「遺伝」「生活習慣」「女性であること」です。
- 加齢
加齢による関節や筋肉などの組織の衰え - 遺伝
先天的に扁平足である場合、母趾の付け根の関節が丸い形の場合、母趾が第2趾よりも長いタイプの足(エジプト型)の場合など - 生活習慣
足に合わない靴を履いている、ハイヒールを履く機会が多い、足の筋力低下 - 女性であること
外反母趾が圧倒的に女性に多いのは、女性の方が男性より筋力が弱く、関節が柔らかいことが原因の一つではないかと考えられている
更年期は足のトラブルが進行しやすい時期
かかとの痛みをはじめとして、足底腱膜炎、外反母趾、強剛母趾(きょうごうぼし)、巻き爪など、50歳前後の更年期は足のトラブルが進行しやすい時期といわれています。
更年期になってエストロゲンの分泌量が急激に低下し、これまで足の骨格を支えてきた靭帯や腱、筋肉に緩みが生じると、足の骨格構造が歪みます。そして、足の形が崩れ、大きく歪みが生じた部分に痛みや変型という症状が現れるのです。
また、これまでハイヒールや足に合わない靴を履いてきたことによって蓄積したダメージが影響している可能性も考えられます。
更年期には骨密度や筋力低下が生じ、かかとの痛みの他にも足底のアーチが崩れることで巻き爪、外反母趾など足のトラブルが起こりやすい時期です。特に、外反母趾の男女比は1:10と、圧倒的に女性に多いことで知られています。
また、女性ホルモンの影響は足だけでなく手指にも現れます。かかとに限らず、関節など体の痛みを感じている場合は早めにクリニックを受診するといいでしょう。
更年期に起こりやすいかかとの病気
更年期に起こりやすいかかとの病気としては「アキレス腱周囲炎(アキレス腱炎)」と「足底腱膜炎(足底筋膜炎)」があります。
ここからは、それぞれの病気について解説します。
アキレス腱周囲炎(アキレス腱炎)
アキレス腱周囲炎(アキレス腱炎)とは、アキレス腱に繰り返し負担がかかることで、アキレス腱の周囲の組織が炎症を起こし、肥厚(腫れて厚くなること)したり癒着したりすることで痛みが生じる病気です。ランニングやトレーニングなどによる負担や、加齢によって起こります。
アキレス腱周囲炎になると、アキレス腱が過敏な状態になり、日常生活やスポーツなどの動きで痛みが起こります。アキレス腱周囲炎は自然に治ることもありますが、症状が改善しない場合は病院を受診した方がいいでしょう。
アキレス腱周囲炎は、主に以下の2箇所に起こりやすいといわれています。
- アキレス腱付着部(かかとの骨に近い部分)
- アキレス腱中央部(ふくらはぎとかかとの中間)
軽いものであれば治療によって1~2か月で治りますが、酷い場合は1年経っても治らないことがあります。
足底腱膜炎(足底筋膜炎)
足底腱膜炎(足底筋膜炎)とは、足底腱膜(足の裏にある、かかとと足の指の付け根まで伸びている組織)やその周辺の筋肉が炎症を起こし、痛みなどの症状が出る病気のことです。
足底腱膜は土踏まずを支え、足への衝撃を和らげるクッションとしての大切な役割を担っています。このクッション性が低下し、足底腱膜に大きなストレスがかかると、炎症が引き起こされてしまうのです。
足底腱膜炎が起こる原因には、更年期などによるホルモンバランス異常の他にも、足に強い衝撃を与えるスポーツを繰り返している、足の構造の問題(ハイアーチ、扁平足など)、靴の問題、加齢、アキレス腱やふくらはぎの硬さなどが考えられます。
加齢に伴い、足底腱膜炎になるケースが増えているようです。足底腱膜炎はセルフチェックもできるので、気になる場合はチェックしてみましょう。
更年期でかかとが痛む場合は病院に行くべき?
かかとの痛みが起こる頻度が少ないなど、生活に支障が出ていないのであれば、基本的には心配し過ぎることはありません。
しかし、以下のような場合は病院を受診した方がいいでしょう。
- かかとや足底の痛みが3、4日以上続く
- 痛みが強くて歩けない、靴を履くことができない など
足のトラブルを抱えたまま歩き続けると、症状が悪化してしまう可能性があります。「足のサイズが大きくなった」と感じる場合、足の形が崩れてしまっているのかもしれません。
痛む場所をかばって歩くことで全身の不調につながり、重症化してしまうことも考えられます。
また、足が痛むことで歩くことに抵抗を感じるようになり、外出や運動の機会が減れば、筋力や体力が落ち、免疫が低下して病気にかかりやすくなるなど、悪循環に陥ってしまう可能性も。
痛みが続く場合は放置せず、早めに病院を受診することが大切です。
更年期のかかとの痛みは何科を受診すればいい?
更年期の影響によるかかとや足底の痛みは、整形外科を受診するといいでしょう。
他にもホットフラッシュやのぼせ、イライラ、不安感、不眠などの更年期症状が見られ、全体的な症状について相談したい場合は婦人科を受診するのがおすすめです。
更年期のかかとの痛みの対処法・予防法
ここからは、更年期のかかとの痛みの対処法・予防法をご紹介します。
積極的な栄養補給
更年期症状を和らげる効果が期待できる栄養素や食材を積極的に食生活に取り入れるのもおすすめです。
- イソフラボン……豆腐、納豆、油揚げ、厚揚げ、きなこ、おから、豆乳 など
- ビタミンE……ほうれん草、ブロッコリー、にんじん、かぼちゃ、ピーマン、トマト、アボカド、アーモンド など
- カルシウム……牛乳、小魚、海藻 など
女性ホルモンに似た働きをするといわれているイソフラボンは、更年期症状を和らげるために積極的に取りたい栄養素。上記の通り、さまざまな食品に含まれており、ドリンクとして飲んだり、料理に使ったりと、手軽に取り入れやすいです。
イソフラボンと合わせて摂取したいのが、エストロゲンを分泌する卵巣をサポートし、ホルモンバランスを調整する作用のあるビタミンE。
また、エストロゲンが減少すると骨密度が急激に減少するため、骨を強くするカルシウムなどの栄養素も積極的に摂取しましょう。
サプリメント(エクオール)を活用する
最近では、「エクオール」が注目されています。
大豆や大豆製品には、大豆イソフラボンが含まれています。エクオールは、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが腸内細菌によって代謝されてできる物質で、女性ホルモンであるエストロゲンとよく似た働きを持っています。
しかし、エクオールはすべての人が生み出せるわけではなく、日本人でエクオールを生み出せる人の割合は5割ほど。つまり、2人に1人はエクオールを体内で作り出せません。自分がエクオールを作り出せるかどうかは、市販の検査キットでチェック可能です。
もしもエクオールを腸内でつくれない体質だった場合は、サプリメントで摂取できます。
四谷メディカルキューブ手の外科・マイクロサージャリーセンターが手指に不調を抱えた100例以上の患者さんを対象に行った調査では、一定量のエクオール摂取を3か月間続けたところ、6割近くの人に改善が見られたそうです。
この調査では、手指の関節の腫れや痛みの改善の他にも、肩こりや便秘が改善する、シミが薄くなる、髪の毛にツヤが出るなどの効果を感じた人もいました。
かかとの痛みの他にも気になる更年期症状を感じている場合は、主治医に相談の上エクオールのサプリメントを取り入れてみてもいいかもしれません。
かかとの痛みには、漢方薬の服用もおすすめ
漢方薬は更年期の症状を和らげる薬物治療として推奨されており、かかとや関節などの痛みにも用いられています。
足やかかとの痛みには、
- 筋肉の緊張や関節の痛み、炎症をやわらげる
- 患部に溜まった水を取りのぞく
- 血流を促進する
などの作用がある生薬を含む漢方薬で治療を行います。
漢方薬は、血流を改善したり、筋肉の緊張や痛みをやわらげたりするので、足やかかとだけでなく、肩こりや腰痛などの改善も同時に行います。
また、血流の改善によって全身に栄養が届くので、疲れにくい体も手に入れることができます。漢方は、人それぞれの症状や体質に合わせて選ぶことで素早い効き目を感じられ、体質を根本から改善することができます。毎日を健康にいきいきと過ごしたいなら、漢方薬がおすすめです。
かかとの痛みにお悩みの方におすすめの漢方薬を2つ紹介します。
・麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)
冷えや湿気で悪化しやすい関節や筋肉の痛みに使われる漢方薬です。
冷えにより溜まった患部の水を取り除いたり、腫れや痛みを抑えるはたらきにより、関節痛を和らげます。
・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
汗をかきやすく、疲れを感じやすい水太りタイプにおすすめの漢方薬です。
水の代謝を促し、余分な水を取り除くことにより、むくみや関節痛を改善します。
自分の症状や体質に合う漢方薬を手軽に試すなら、漢方に精通した医療チームがあなたにぴったりな漢方薬をお手頃価格で自宅に届ける「オンラインAI漢方」を活用してみてはいかがでしょうか。
診断、処方、漢方薬の購入から配送まで、すべて自宅にいながら完結できるのもメリットの一つです。
足底にかかる負担を軽減するストレッチ
かかとを含めた足底は、体重を支える重要な役割を担う部分です。歩いているときはもちろん、走っているときは、足底にかかる負担がさらに大きくなります。
足底の柔軟性が失われると痛みが生じやすくなるため、筋肉や腱を柔軟に保つことが大切です。
足底腱膜炎に効果的な対処法として、足底にかかる負担を軽減するストレッチがあります。ふくらはぎの筋肉が硬くなると足底にかかる負担が大きくなるため、足底のストレッチと合わせて周囲のストレッチを行うといいでしょう。
【足底のストレッチ】
- 座って左手でふくらはぎ周辺を支え、右手でつま先のあたりを持ってゆっくり反らしていく
- 足底が伸びるの意識しながら行い、10回1セットとして1日3セット以上行う
【ふくらはぎのストレッチ】
- 痛みがある方の足を後ろに大きく引く。このとき、かかとはしっかり床につけたままにする
- 前に出している足に両手を乗せ、重心をゆっくりと前足に移動させる
- これを1日2、3回行う
痛みが少ないときは無理のない範囲で運動する
運動する機会が少ないと、筋力がさらに落ちていってしまいます。痛みが少ないときは適度に運動をして、体力や筋力アップ、血流改善につなげましょう。
ただし、無理をして症状が悪化してしまったら大変です。医師に相談した上で、できる範囲で運動しましょう。
歩き方や姿勢を改善する
かかとや足底のトラブルを防ぐためには、正しい姿勢で歩くことが大切です。大股歩きはダイエットに効果的ですが、足の健康のためには小股歩きの方がいいといわれています。
自分の歩き方が正しいか心配な場合は、理学療法士に相談して見てもらうのがおすすめです。
靴を見直す
靴がかかとや足の痛み、変形に影響を及ぼしている場合、正しい靴を選ぶ必要があります。靴の専門家や足の専門医に相談して、今履いている靴を見直すことを検討しましょう。
以下のような靴、靴下を履いている人は、注意が必要です。
- 足を固定できない靴(サンダル、スリッパ、草履、下駄、長靴など)
- ひもが緩く、中で足が泳いでしまう靴
- かかとの部分が柔らかい靴、クッション性があり過ぎる靴
- 幅が広い靴
- アーチの部分が盛り上がった(凹凸のある)中敷の靴
- 指先を圧迫したり、滑りやすい素材の靴下(ストッキングやチューブソックスなど)
また、サポート靴下などのケア商品もあるため、これらを取り入れるのもおすすめです。
更年期のかかとの痛みは早めに対処しよう
更年期はエストロゲンの減少によって、かかとの痛みなど足のトラブルが進行しやすい時期といわれています。
数日で痛みが治まり、その後も生活に支障がないようであれば様子見でも大丈夫ですが、痛みが続く場合や、他の更年期症状がつらい場合などは、早めにクリニックを受診するといいでしょう。
かかとや足の痛みが続くと運動や外出が億劫になって、体力や筋力低下が生じ、体の免疫が落ちて病気にかかりやすくなるなど、悪循環を招いてしまうこともあります。我慢せず、適切に対処することが大切です。
※この記事は2020年7月の記事を再編集して掲載しています。
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