医師が解説!尿トラブル撃退の新常識#1

頻尿&尿漏れ…多くの女性が悩む2大トラブルを解説

公開日:2022.12.15

更新日:2023.09.01

尿トラブルを抱える方は、加齢とともに増加。「くしゃみをした拍子にもれてしまう」「よくトイレに行きたくなり、外出中も心配」と多くの女性が悩んでいます。頻尿や尿漏れなどの原因や症状について、医師の武田さんに教えてもらいました。

60代以上の女性の約75%が経験!「尿トラブル」

60代以上の女性の約75%が経験する「尿トラブル」

尿漏れや頻尿などの尿トラブルを抱える方は、加齢とともに増えていきます。「特に女性は大きなリスクを抱えがち」と話すのは、尿トラブルに詳しい整形外科医の武田淳也さん。

「女性は男性に比べて尿道が短く、また閉経後にエストロゲンの分泌が減少するなど、ホルモンバランスの変化によっても尿トラブルが起こりやすくなります。また排泄の調整に特に重要な役割を担うのが骨盤底筋。

尿トラブルの多くが、骨盤底筋の衰えによって起こります。原因は加齢や運動不足などさまざまですが、女性の場合、出産によって骨盤底筋を収縮させる神経が深刻なダメージを受けることも大きな要因です」と武田さん。

膀胱まわりの構造

膀胱まわりの構造

厚生労働省の調査によれば、「過活動膀胱」などによる頻尿を除けば、尿トラブルに悩む人は女性が男性の2倍に上るそう。

4_過活動膀胱の発生率
出典:本間之夫他『日本排尿機能学会誌』14巻2号(2003年)

また日本排尿機能学会の発表では、尿漏れの症例で最も多い「腹圧性尿失禁」は、60代以上の女性の約75%が経験しているといいます。

5_腹圧性尿失禁no
出典:本間之夫他『日本排尿機能学会誌』14巻2号(2003年)

尿トラブルを撃退する骨盤底筋強化の新常識とは?

「尿トラブルを予防・改善するためには、やはり骨盤底筋の強化が必須」と武田さんは言います。そのための方法として、肛門や膣を締める・緩めるを繰り返す「骨盤底筋体操(ケーゲル体操)」が知られていますが、武田さんいわく「実は正しく行うのが難しい体操」なのだそうです。

「骨盤底筋は骨盤の一番底という体の奥深くにあるため、意識しても十分動かせない方が多く、骨盤底筋が弱っている方ほどそれが顕著です。そんな方でも簡単に、効率的に骨盤底筋を強化できるのが、『骨盤バウンド体操(正式名称・ピフィラティス)』です」

骨盤底筋まわりの構造

6_骨盤底筋まわりの構造

骨盤底筋は骨盤の一番底にある筋肉で、膀胱や尿道の筋肉とともに排尿を調整する働きを担っている他、膣や子宮、直腸などの臓器を下から支える役割もあります。

そのため骨盤底筋を弱らせてしまうと、尿トラブルだけでなく、内臓の働きの低下や、“ポッコリお腹”を招きます。

加齢による二大尿トラブル

トラブル1:尿漏れ

  • 腹圧性尿失禁
    症状

    くしゃみや咳、重いものを持つなど、瞬間的にお腹に力(腹圧)がかかったとき、無意識に尿が漏れる。産後や40代以上の女性に多い。
    主な原因
    出産による骨盤底筋やそれを支えるじん帯へのダメージなどにより、膀胱の位置が下がってその出口が開き、腹圧への抵抗力が弱まるため。
  • 切迫性尿失禁
    症状
    膀胱に尿がたまっていないのに、急に激しい尿意が起こり、我慢しきれず尿が漏れてしまう。特に高齢の女性に多い。
    主な原因
    膀胱が勝手に収縮する「過活動膀胱」が背景にあることが多い。症状が重い場合は、薬物療法や手術などで治療することも。

トラブル2:頻尿

  • 過活動膀胱
    症状
    突然激しい尿意に襲われ、排尿の回数も多くなる(1日に8回以上)。上記の「切迫性尿失禁」の原因にもなる。
    主な原因
    脳と、膀胱や骨盤底筋を結ぶ神経が正常に働かず、排尿が調整できなくなるためといわれるが、はっきりとわかってはいない。
  • 骨盤臓器脱
    症状
    頻尿の他、股間に何か挟まったような違和感や、膣から臓器がはみ出す症状を伴うことも。出産経験のある女性に多い。
    主な原因
    骨盤底筋やじん帯が衰えることで、骨盤内にある膀胱や子宮、直腸などの臓器が下がること。

次回は、1日5分でできて、過活動膀胱患者の改善率80%超えという骨盤バウンド体操について詳しく教えてもらいます。

武田淳也(たけだ・じゅんや)さんプロフィール

武田淳也(たけだ・じゅんや)さんプロフィール

整形外科 スポーツ・栄養クリニック理事長。日本整形外科学会認定専門医。福岡大学医学部卒業。スポーツドクターとしてオリンピック、ワールドカップ等に携わる。ピフィラティス(骨盤バウンド体操)を日本へ初導入し、自らもマスタートレーナーの資格を持つ。近著に『頻尿・尿もれ 米国式最新自力克服法 骨盤バウンド体操』(わかさ出版刊)などがある。

取材・文=新井理紗(ハルメク編集部) イラストレーション=イオクサツキ
※この記事は雑誌「ハルメク」2022年3月号を再編集し、掲載しています。

 

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