あなたの睡眠タイプは?ショート・ロング・バリアブル

ショートスリーパーとは?体に悪い?誰でもなれるの?

白濱龍太郎さん
監修者
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長
白濱龍太郎

公開日:2022.11.11

更新日:2024.01.25

人の睡眠のタイプは3つに分けられることを知っていますか? 偉人に多いショートスリーパー(短時間睡眠でも健康に過ごせる)は遺伝子によって決まっていて、他にロングとバリアブルがあります。自分の睡眠タイプをチェックしてみましょう!

日本人の平均睡眠時間は最下位!

ショートスリーパーについて確認する前に、まずは日本人の平均睡眠時間をチェックしてみましょう。

厚生労働省が公表した「令和元年 国民健康・栄養調査結果」によれば、日本人の1日の平均睡眠時間は、6時間以上7時間未満の割合が最も多く、男性32.7%、女性36.2%。6時間未満の人は、男性 37.5%で女性40.6%という結果になっています。

株式会社ブレインスリープが継続して行っている日本の平均睡眠時間の調査によれば、日本人の睡眠時間は増えており、睡眠負債も改善傾向であるそうです。

しかし、経済協力開発機構(OECD)の調査では、加盟33か国の平均睡眠時間は8時間27分であるのに対し、日本は最下位の7時間22分。平均値よりも1時間以上も睡眠時間が短く、まだ改善の余地があるといわれています。

睡眠のタイプは3種類

睡眠のタイプは3種類

睡眠は誰もが同じではなく、人によって違いがあります。人の睡眠のタイプは大きく分けると、以下の3タイプです。

  • ショートスリーパー
  • ロングスリーパー
  • バリアブルスリーパー

ここからは、それぞれのタイプについて詳しく見ていきましょう。

ショートスリーパーとは

ショートスリーパーとは、体質的に短い睡眠時間でも十分に健康を維持できる人のことです。何時間未満の睡眠であればショートスリーパーと呼ぶかの明確な定義はありませんが、かつては5時間未満、最近では6時間未満の睡眠でも健康状態に問題がなく、日常生活をアクティブに活動できる人のことを指すことが多いようです。

6時間未満という一般的には短い睡眠時間も、ショートスリーパーにとっては十分な睡眠時間であるため、健康や寿命への悪影響はないとされています。

正確な割合は調べられていませんが、ショートスリーパーの人はとても少なく、日本人の場合、睡眠時間が6時間未満のショートスリーパーは5%〜8%であるといわれています。

ショートスリーパーは、一般の人に比べてレム睡眠(脳の眠りが浅い時間)は少ないものの、ノンレム睡眠(脳の眠りが深い時間)の時間はほとんど変わりありません。

そのため、5時間未満しか眠れない日が何日続いても日中に眠気が起こるなどの症状がなく、健康にも問題がないことが特徴です。

ロングスリーパーとは

ロングスリーパーとは、10時間以上の睡眠が必要な体質の人のことです。長時間睡眠者ともいいます。ロングスリーパーは入眠に時間がかかり、浅い睡眠であるレム睡眠を繰り返す傾向があるといわれています。

ロングスリーパーの場合、日中に支障なく過ごすには平均よりも長く眠る必要があるため、活動時間が短くなることで、悩みにつながってしまうケースも。

日本人では、3%〜9%ほどがロングスリーパーだと考えられています。

バリアブルスリーパーとは

バリアブルスリーパーは、ショートスリーパーとロングスリーパーの中間に位置し、睡眠時間が6時間~10時間の人を指します。バリアブルスリーパーはその時の状況によって睡眠時間をカットしたり、延ばしたりできるため「変化しやすい(Variable)」という名前が付けられました。

日本人では、全体の80%〜90%ほどがバリアブルスリーパーだと考えられています。

6時間から10時間ほど眠れば、午後2時〜4時以外は特に眠気もなく活動できるのであれば、バリアブルスリーパーの可能性が高いでしょう。(午後2時〜4時頃に眠くなるのは体内時計では自然)

ただし、「寝る前にスマホやテレビなどのディスプレイを見ている」「ストレスが強い」「寝付きが良くない」「深夜に何度も目が覚めてしまう」など睡眠の質が低下していると6時間~10時間睡眠しても眠気が起こることがあります。

「自分はショートスリーパー」だと思う人は23%以上も

株式会社ブレインスリープが行った「睡眠偏差値」の調査結果によれば、自分をショートスリーパーだと思っている人が23.4%にものぼることがわかっています。

調査で自分はショートスリーパーであると回答した人の平均睡眠時間は6時間15分で、日本全体の2022年の平均睡眠時間である6時間48分よりも30分以上少ない結果です。

しかし、日本の統計では、平均睡眠時間が4時間未満のショートスリーパーの人は全体の1%であるといわれています。実際にはショートスリーパーではなく、無理をしているのに気づいていないというケースも考えられるため、注意が必要です。

ショートスリーパーになるには?

ショートスリーパーになるには?

ショートスリーパーは、短い睡眠時間でも健康に問題なくアクティブに活動できるため「ショートスリーパーになりたい」という人も少なくないようです。

しかし、ショートスリーパーは体質的な要因が関係しており、なろうと思ってなれるものではないということが明らかになってきています。ショートスリーパーになるための訓練やトレーニング法が紹介されていますが、科学的根拠はありません。

無理に短い睡眠時間を続けていると慢性的な睡眠不足になり、健康に悪影響を及ぼしてしまう可能性があるため、注意しましょう。

ショートスリーパーは遺伝子で先天的に決まっている

最近では、ショートスリーパーは遺伝子で先天的に決まっていると考えられています。

カリフォルニア大学神経科学科が行った研究では、ショートスリーパーは睡眠に関連する遺伝子に変異があることがわかりました。

それが「β1-アドレナリン受容体遺伝子(ADRB1)」と呼ばれる遺伝子で、この遺伝子にショートスリーパー特有の変異が見られる人は、睡眠時間が短くなっただけでなく、眠りから目覚めやすいという特徴が見られたそうです。

マウスを使った実験では、ショートスリーパーの遺伝子を持つマウスは睡眠時間が短く、深い眠りからも素早く覚醒できたという結果が出たといいます。

ショートスリーパーの人はエネルギッシュで楽観的、マルチタスクに向いている傾向があり、痛みに強く、時差ボケにも影響されない傾向があるとされています。

偉人や著名人・有名人の睡眠時間は短い?

偉人や著名人・有名人の睡眠時間は短い?

「偉人にはショートスリーパーが多い」と聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

ここからは、ショートスリーパーという説がある偉人についてご紹介します。なお、偉人の逸話については諸説あります。

トーマス・エジソン:4時間

蓄音機、発熱電球、キネトスコープ(映写機)を発明し、発明王とも呼ばれるアメリカ生まれの発明家、トーマス・エジソンはショートスリーパーで、睡眠時間は4時間ほどだったそうです。

「4時間以上寝ると気分が悪くなる」と話していたエジソンですが、実際には短い時間の睡眠を複数回取り、足りない分を補っていたともいわれています。

ナポレオン・ボナパルト:3時間

ショートスリーパーとして広く知られているのが、フランス革命家のナポレオン・ボナパルトです。

ナポレオンが3時間睡眠だったことは有名で、足りない分の睡眠は馬に乗りながら寝ることで補っていたという逸話があるほど。

しかし、近年の研究ではナポレオンも3時間睡眠の他に、昼寝の時間を取っていたと考えられています。

レオナルド・ダ・ヴィンチ:90分

モナ・リザや最後の晩餐で知られる芸術家のレオナルド・ダ・ヴィンチは、エジソンやナポレオンよりもさらに短く、睡眠時間は90分だったといわれています。

レオナルド・ダ・ヴィンチの場合は、一気に睡眠を取るのではなく、15〜20分ほどの短い睡眠を複数回に分けて取っていたそうです。

アインシュタイン:10時間

中には、ロングスリーパーの偉人も存在します。

相対性理論で知られる理論物理学者のアルベルト・アインシュタインは、1日10時間眠るロングスリーパーだったそうです。

アインシュタインは「睡眠時間が9時間以下の日は頭が冴えない」と周囲の人に話していたこともあったといわれています。

ジェフ・べゾス:8時間

では、現代の偉人の睡眠時間はどうでしょうか?

日本でもおなじみの通販サイトであるAmazonの元CEOとして知られるジェフ・べゾスは良質な睡眠を取ることの重要性について語っており、毎日7〜8時間眠るようにしているそうです。

自分に合った睡眠時間を取ることが大切

自分に合った睡眠時間を取ることが大切

ショートスリーパー・バリアブルスリーパー・ロングスリーパーと睡眠のタイプが人によって異なるように、人それぞれ適した睡眠時間は異なります。

現在ではショートスリーパーになるかどうかは遺伝子によって決まると考えられており、トレーニングや訓練などの方法で自分に合った睡眠時間を変えることは難しく、無理にショートスリーパーになろうとすれば睡眠負債の蓄積など、体に悪影響をもたらしてしまう可能性もあります。

そのため、「睡眠時間を減らす」よりも、「睡眠時間の質を高める」ことで生活の質を高めていくのがおすすめです。睡眠の質が高まると生活リズムが整いやすくなり、体の中のホルモンバランスが保たれやすくなります。

肥満や高血圧、メタボリックシンドローム、循環器疾患、耐糖能障害といった生活習慣病の予防、不安や抗うつなど精神面の不調の予防、ストレス解消、肌質の改善、記憶の定着など睡眠にはさまざまな効果があり、人間にとって非常に重要なものです。

50代女性は、更年期の影響で不眠や寝付きの悪さなど、睡眠の悩みを抱えることも少なくありません。

自分に合った長さの質のいい睡眠を取ると日中も活動的に過ごすことができ、生産性の向上につながるでしょう。

睡眠は人それぞれ!睡眠負債につながる無理は避けよう

ショートスリーパーとは、6時間未満の睡眠でも健康に問題がなく、日中も活動的に過ごせる人のことを指します。

ショートスリーパーかどうかは遺伝子によって先天的に決まることが最近の研究でわかってきており、体質的なものであるため、トレーニングによってショートスリーパーになることは難しいと考えられるでしょう。

睡眠時間が不足すると睡眠負債が蓄積していき、やがて心や体の不調につながります。自分に合った睡眠時間を知り、眠りの質を高めていくことが大切です。

監修者プロフィール:白濱龍太郎さん

RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長 白濱龍太郎さん

しらはま・りゅうたろう RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック 院長。2002年、筑波大学医学群医学類卒業。東京医科歯科大学大学院統合呼吸器病学修了。東京共済病院、東京医科歯科大学附属病院を経て、13年にクリニックを開設。日本睡眠学会専門医。『誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法』(アスコム刊)をはじめ著書多数。

※この記事は2022年11月の記事を再編集して掲載しています。

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