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生活環境を整えることが対策?五月病の乗り越え方
五月病の基本を知って、憂うつな気分から抜け出そう
有限会社ウエストフィールド・コンサルティング
産業医 野尻紀代美
公開日:2021.05.25
更新日:2023.05.11
5月の大型連休明け頃から症状を感じるといわれる五月病。そもそも五月病とは、どんなものなのでしょうか?新入社員や学生に限ったことではないという五月病の概要や具体的な症状・原因、なりやすいタイプ、予防や対策に効果のある行動などをご紹介します。
五月病とは?どんな症状?
そもそも「五月病(ごがつびょう)」とは、どのようなものなのでしょうか? ここでは、五月病の医学的な概要をはじめ、肉体的、精神的、行動の変化といった具体的な症例を見ていきましょう。
「五月病」は医学的な病名ではない
その名前から「何かの病気?」と思われがちな五月病。しかし、実際のところ、正式な医学用語ではありません。医療機関で診察を受けた場合は、「軽度のうつ状態・気分障害」「不安障害(適応障害など)」「不眠症」などの病名で診断されることがあります。
五月病は、5月のゴールデンウィーク明けあたりから気分がすぐれなかったり、軽いうつ状態に陥ったりすることから「五月病」と呼ばれています。学生や新入社員が陥りやすいイメージの五月病ですが、転勤や人事異動など環境の変化でいつもと違ったストレスを受ける社会人にも、当てはまる症状が多くあります。その症状を「肉体に出る症状」「精神に出る症状」「行動の変化」別に説明しましょう。
肉体に出る症状
肉体的な症状としては、疲労感、頭痛や肩こり、寝つきが悪いのに朝早く目覚める睡眠障害などが挙げられます。また、自律神経の乱れから起こる動悸やめまいや、血圧の上昇などの症状が肉体に表れるのも、五月病の特徴です。さらに、食欲の減退による体重の減少、嘔吐や吐き気、胃痛なども症状の一つといわれています。
精神に出る症状
精神的に表れる代表的な症状が、憂うつになりやすいことです。理由もないのにひどく気分が落ち込み、何もやる気が起こらない、興味が湧かないといった無気力状態に陥ることもあるでしょう。常に倦怠感や気だるさを感じる上、不安や緊張、悲壮感にさいなまれ、焦りやイライラが募ることも、精神に表れる症状の特徴です。
行動の変化
行動に現れることとして、遅刻が増えたり、欠勤・欠席が増えたりすることがあります。落ち着きがなくなる、身だしなみが乱れる、飲酒量や喫煙量が増えるなどの行動の変化も現れるようです。さらには、仕事のミスが増える、仕事の能率が落ちる、ぼーっとしていることが増えるなども。 また、何事に対しても消極的になってしまい、周囲との接触も避けるようになるため、引きこもりになりがちです。思うように仕事や家事がこなせなくなり、自暴自棄になる傾向が見られることもあります。
五月病の原因とは?なりやすい人とは?
一般的な社会人でも陥ることがある五月病。その原因は、一体どこにあるのでしょうか? ここでは、五月病の原因や他の病気とのつながりなどを解説します。また、五月病になりやすいタイプの人の特徴も集めてみました。
精神面でのストレスが原因
五月病になる主な原因は、精神的なストレスといわれています。新年度や新学期は、進学や就職、転勤や部署異動、転居などにより、生活スタイルや人間関係が一変しやすい時期。そのような環境の変化がストレスを蓄積させ、ゴールデンウィークの長期休暇を機に表出してしまい、五月病を患う引き金となってしまうようです。
また、受験や就活、仕事や家庭内の行事にひと区切りがつくなど、目標を達成した反動から陥る「燃え尽き症候群」の状態も、五月病の原因の一つに挙げられます。人生の節目やイベントを迎えることの多い季節ゆえに、精神面でのストレスが生じ、五月病が出やすくなってしまうのでしょう。
精神面でのストレスは他の病気とのつながりも
五月病が短い期間で終わり回復すれば問題はありませんが、「気分障害」「不安障害」の症状が悪化したり長期化したりした場合は、精神疾患の可能性があります。抑うつの症状が表れる「気分障害」であれば「うつ病」、躁状態とうつ状態を繰り返す「躁うつ病(双極性障害)」、抑うつ気分が2年以上にもわたる場合は「気分変調症」などの可能性があります。また「不安障害」は「パニック障害」「適応障害」が含まれます。
それぞれの症状は、体調不良、情緒不安定や睡眠障害、無気力感や倦怠感などを引き起こし、日常生活に支障をきたしてしまいます。このように、精神面でのストレスの蓄積は、他の病気とのつながりを生んでしまう恐れがあるため、十分な注意が必要です。
五月病になりやすいタイプの人
環境の変化や心身のストレスなどで、誰でも五月病に陥ってしまう可能性があります。中でも、特になりやすいタイプがあることをご存じでしょうか? 以下にその特徴を挙げてみました。
- 几帳面で真面目な人
- 責任感や義務感の強い人
- 仕事・勉強熱心な人
- 完璧主義者
- 凝り性
- 自己主張ができないおとなしい人
- 問題をすべて一人で抱え込んでしまう人
- 周囲の視線や評価ばかりを気にする人
- 自分よりも人間関係を最優先に考える人
- 受験や就活など、大きな目標に区切りがついた人
五月病の対処法は?予防や対策に効果のある行動
学生や新入社員のみならず、一般の社会人でも注意したい五月病。ここからは、五月病にならないための予防策、そして、自分が「五月病かも?」と思った場合の対処法をご紹介します。
五月病対策1:趣味に打ち込む
自分の趣味に打ち込み、ストレスを解消することをおすすめします。好きなことに没頭するだけで、脳内にある「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの分泌が活性化され、ストレスが緩和されるでしょう。買い物、映画鑑賞、料理、読書、創作活動、ドライブなど、楽しく熱中できることなら何でも構いません。ぜひ、積極的に趣味に取り組んでみてください。
五月病対策2:適度な運動
ストレスを発散するために、適度な運動を心掛けるのもいい方法です。体を動かすと、精神的な緊張感がほぐれ、肉体的な倦怠感も緩和されるはずです。理由もなく体が重たいと感じるときこそ、スポーツジムやヨガ、ランニングなどで汗を流し、心身のリラックスとリフレッシュを試みましょう。
五月病対策3:規則正しい生活習慣
生活リズムが乱れると、肉体的にも精神的にも健康を害し、ストレスや疲労感を溜めることになります。また、極端な休息、ないしは睡眠不足も、五月病につながる原因の一つです。体を労わるためにも、質のよい睡眠を適切にとるように心掛けましょう。毎日の就寝・起床時間を管理し、一定の生活リズムで規則正しい生活を送るようにしてください。
五月病対策4:食事にも気を配る
心身を安定させる役割を持つセロトニンを体内で生成するため、乳製品・大豆製品・鶏肉・いも類・雑穀入りの白米などを積極的に摂取しましょう。セロトニンを生成するのに必要なビタミンB6を多く含むバナナもおすすめの食材。ただし、それらだけを食べるのではなく、あくまでも偏りのないバランスの取れた食事をすることがポイントです。
五月病対策5:悩みや問題を話せる仲間をつくる
慣れない環境のもとでは、誰しも何らかのストレスを抱えてしまうものです。同じような悩みや問題などを打ち明けられる仲間をつくり、おしゃべりをしながらストレスを解消することも、五月病の予防や対策になります。それぞれの悩みや問題を共有し、気兼ねなく話し合うことで、思いもよらない突破口や解決策が出てくるかもしれません。
ストレスが原因となる五月病は、特別な病気ではありません。しかし人間は、大なり小なりストレスを抱えやすいため、誰でも五月病に陥る可能性がありますし、放っておくと別の病気につながる可能性もあります。規則正しい生活を送り、自分にとって最適なストレス解消法(どんな方法でも楽しくストレスが軽減される行動)に積極的に取り組みましょう。
また、自分の状態から五月病を疑う場合、早めに病院の診察を受けるようにしてください。まずは、肉体的な症状を相談し、何も問題がないと判断されるた場合は、心療内科や精神科で診てもらうことを考えましょう。
■五月病について教えてくれたのは?
野尻紀代美さん
のじり・きよみ 産業医、日本ストレスチェック協会ファシリテーター、内科認定医、日本呼吸器内科学会所属。
1997年佐賀医科大学(現佐賀大学)医学部医学科卒業後、東京逓信病院の内科レジデント、呼吸器内科レジデントを経て、呼吸器内科スタッフとして勤務。のちに有限会社ウエストフィールド・コンサルティングを設立。2011年、労働衛生コンサルタント免許習得。現在は14社のクライアントを持ち、2018年より家族のためのシッター事業も開始。臨床医としても週に一回の勤務を継続中。
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