手に水虫ができる原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
手に水虫ができる原因は?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年10月23日
この記事3行まとめ
✓手の水虫は「手白癬」といい、多くは自分または他人の足の水虫が原因で起こります。
✓カサカサ、皮むけ、水ぶくれが主な症状で、かゆみがないことも。
✓治療の基本は塗り薬。根気よく続けることと、足のケアが大切です。
手の水虫の正体とは?
手にできる水虫は、医学的には「手白癬(てはくせん)」と呼ばれます。足の水虫と同じ「白癬菌(はくせんきん)」というカビ(真菌)の一種が、手の皮膚の角質層に感染して起こる病気です。
多くの方が「水虫は足にできるもの」と思われていますが、実は手にも感染します。特に、ご自身の足の水虫や他の人の水虫を無意識に触ってしまうことで、手に白癬菌が移り、発症するケースが多いです。
また感染源の足から剥がれ落ちた角質が、床、スリッパ、タオル、バスマットなどに付着し、それを別の健康な人が触ることで感染する場合もあります。
手は頻繁に洗うため感染しにくいと思われがちですが、加齢による皮膚の乾燥や、水仕事、ちょっとした傷が感染のきっかけになることがあります。
50代・60代は、皮膚のバリア機能が低下し始める年代。だからこそ、正しい知識を持つことが大切です。
手白癬の症状は、主に3つのタイプに分けられます。複数のタイプが混在することもあります。
よく見られる身体的症状
- 角化型(かくかがた):手のひら全体の皮膚が、まるで古い角質が溜まったように硬く、厚くなります。特に指紋に沿って白い線が入ったり、皮膚がむけてカサカサしたりします。冬場にはひび割れやあかぎれを伴うことも。かゆみはほとんどないため、単なる「年齢による手荒れ」や「乾燥」だと思い込み、発見が遅れがちになる最も多いタイプです。
- 指間型(しかんがた):指の間にできやすく、赤みが出て皮がむけたり、白くふやけてジュクジュクしたりします。強いかゆみを伴うことが多く、夏場に悪化しやすい傾向があります。
- 小水疱型(しょうすいほうがた):手のひらや指の側面、指の付け根などに、小さな水ぶくれができます。こちらも強いかゆみを伴うことが多く、水ぶくれが破れてじゅくじゅくすることもあります。汗をかきやすい時期に症状が出やすいのが特徴です。
似ているようで違う、他の手の病気
手の症状は、水虫以外にもさまざまな皮膚疾患の可能性があります。自己判断は禁物です。
- 主婦湿疹(手湿疹):洗剤や水仕事などが原因で起こる皮膚炎。両手に対称的に症状が出ることが多く、赤み、かゆみ、ひび割れなどが生じます。
- 汗疱(かんぽう):手のひらや指に小さな水ぶくれができる病気で、特に季節の変わり目に多く見られます。原因は不明な点も多いですが、汗が関係していると考えられています。
- 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう):手のひらや足の裏に、膿のたまった小さな水ぶくれ(膿疱)が繰り返しできます。喫煙者に多いことが知られています。
これらの病気と手白癬を見分けるには、専門医による顕微鏡検査が不可欠です。
心理的な変化
「水虫」という病名に対して、不潔なイメージを持つ方も少なくなく、診断されると大きなショックを受けることがあります。人前に手を出すのが恥ずかしい、料理をするのがつらいなど、日常生活における精神的な負担は決して小さくありません。
また、かゆみや見た目の変化がストレスとなり、気分が落ち込んでしまう方もいらっしゃいます。
統計データ
日本皮膚科学会の「皮膚真菌症診療ガイドライン(2019)」によると、足の水虫(足白癬)の有病率は 約21.6% とされ、日本人全体では およそ2500万人以上 が罹患していると推計されています。
かつては中高年男性に多い病気とされていましたが、近年では女性の患者も増加傾向にあり、男女比はおよそ6:4との報告もあります。
また、爪の水虫(爪白癬)は加齢とともに増加し、60歳以上では約4割が罹患している という報告もあり、50代以降の女性にとっても身近な疾患といえます。
手に水虫ができる原因とメカニズム
主な原因
手に水虫ができる主な原因は、白癬菌との接触と、菌が増殖しやすい環境が揃ってしまうことです。
1. 生理学的要因
- 白癬菌の感染:原因は白癬菌というカビの一種です。この菌は、皮膚の角質層に含まれる「ケラチン」というタンパク質を栄養にして生きています。
- バリア機能の低下:加齢や乾燥、水仕事、アトピー性皮膚炎などによって皮膚のバリア機能が低下すると、角質層に傷がつきやすくなります。その小さな傷から白癬菌が侵入し、感染が成立します。
- 免疫力の低下:糖尿病やステロイド薬の長期使用など、体の免疫力が低下している状態では、通常よりも感染しやすくなるため注意が必要です。
2. 環境的要因
- 自己感染(足からの伝播):手白癬の最も一般的な原因です。ご自身の足の水虫(足白癬)や爪の水虫(爪白癬)を、入浴時や就寝時に無意識に掻いたり触ったりすることで、手に菌が付着し感染します。
- 家庭内感染:家族に水虫の人がいる場合、その人が使ったスリッパや足ふきマット、爪切りなどを共有することで感染するリスクがあります。
- ペットからの感染:稀ですが、犬や猫などのペットが白癬菌に感染している場合、そのペットとの接触を通じて人にうつることがあります。ペットの毛が抜けたり、皮膚に円形の脱毛が見られたりする場合は注意が必要です。
3. 心理社会的要因
50代・60代の女性は、ご自身の体の変化に気を配る一方で、家族の世話や仕事に追われ、忙しい毎日の中で足のケアを後回しにしてしまいがちです。
足の水虫はかゆみがないことも多く、「年のせいだろう」と放置してしまうことが、結果的に手への感染という二次的な問題を引き起こすリスクを高めてしまいます。
発症メカニズム
白癬菌が手に付着しただけでは、すぐに感染するわけではありません。通常、健康な皮膚であれば、菌は24時間以内に洗い流されます。
しかし、手に傷があったり、手袋などで蒸れて高温多湿の状態が12時間以上続いたりすると、菌が角質層の奥深くに侵入し、増殖を始めてしまいます。そして、皮膚のターンオーバー(約28日間)に合わせて、徐々に症状として現れてくるのです。
リスク要因
- 足に水虫(足白癬・爪白癬)を治療せず放置している
- 家族に水虫の人がいる
- 長時間、ゴム手袋などをつけて作業をする
- 手荒れや乾燥がひどい
- 糖尿病や膠原病などの持病がある、またはステロイド薬や免疫抑制剤を使用している
- ジムや温泉など、裸足になる場所をよく利用する
診断方法と受診について
次に、受診する場合の流れについて説明します。
いつ受診すべきか
以下のような症状が見られる場合は、自己判断で市販薬を使う前に、まずは皮膚科を受診しましょう。
- ハンドクリームを塗っても、手のカサカサや皮むけが全く改善しない
- 左右どちらか、片方の手だけに症状が集中している
- 指の間が白くふやけたり、ジュクジュクしたりする
- 小さな水ぶくれができて、かゆみが強い
- 足の裏や爪にも、似たような症状や変形がある
診断の流れ
手白癬の診断は、見た目だけでは判断が難しいため、検査によって確定診断を行います。
1. 問診で確認すること
的確な診断のため、医師は以下のような点を詳しく質問します。事前にメモしておくとスムーズです。
- 症状について:いつから、どの指、手のひらのどの部分に、どんな症状がありますか?(かゆみ、痛み、皮むけ、水ぶくれなど)
- 生活習慣について:ご職業、水仕事の頻度、手袋の使用状況、ペットの有無など。
- 既往歴・家族歴:ご自身の持病や服用中のお薬、ご家族の水虫の既往など。
- 足の状態:足にも水虫がないか、必ず確認されます。
2. 身体検査
問診に続き、医師が手のひらや指、爪の状態を詳しく観察します。多くの場合、手白癬は足白癬を合併しているため、靴下を脱いで足の状態も診察します。恥ずかしがらずに、ありのままを見せることが大切です。
3. 代表的な検査例
診断を確定するための最も重要な検査が「直接鏡検」です。
症状が出ている部分の皮膚の角質(カサカサした部分や水ぶくれの膜)を、ピンセットやハサミでごく少量こすり取ります。痛みはほとんどありません。採取した角質を水酸化カリウム(KOH)溶液で溶かし、顕微鏡で白癬菌がいるかどうかを直接観察します。
この検査で白癬菌が見つかれば、手白癬と確定診断されます。
受診時の準備
- メモを持参する:症状の経過や質問したいことをまとめたメモがあると、伝え忘れを防げます。
- お薬手帳を忘れずに:服用中の薬がある場合は、飲み合わせの確認に必要です。
- 素のままの状態で:受診当日は、ハンドクリームや市販薬、マニキュアなどを塗らずに診察を受けましょう。薬や化粧品が検査の妨げになることがあります。
- 脱ぎやすい靴下で:足の診察も行われることが多いため、着脱しやすい靴下がおすすめです。
受診すべき診療科
手に気になる症状があれば、まずは「皮膚科」を受診してください。お近くの皮膚科がわからない場合は、自治体の保健所や、日本皮膚科学会のウェブサイトなどで専門医を探すことができます。
手の水虫の治療法
治療方針の決定
検査で手白癬と診断された場合、医師は症状のタイプ(角化型、小水疱型など)、範囲、重症度、そして患者さんのライフスタイルや希望を考慮して、最適な治療法を一緒に考えていきます。
基本は塗り薬による治療ですが、爪への感染の有無が大きなポイントになります。
薬物療法
1. 外用薬(塗り薬)
治療の第一選択であり、基本となるのが「抗真菌薬」の塗り薬です。
- 薬の種類:クリーム、軟膏、液体(ローション)、スプレーなど、さまざまな剤形があります。カサカサした角化型には保湿効果も期待できるクリームや軟膏、ジュクジュクした指間型には刺激の少ない軟膏、といったように症状に合わせて処方されます。
- 正しい塗り方:これが最も重要です。1日1回、入浴後の皮膚が清潔で柔らかくなっている時に塗るのが効果的です。症状が出ている部分だけでなく、手のひら全体と指の間すべてに、シワに沿ってすり込むように広く塗りましょう。白癬菌は症状のない部分にも潜んでいる可能性があるからです。
- 副作用:まれに、塗った部分が赤くなったり、かぶれたり、刺激を感じたりすることがあります。その場合は自己判断で中止せず、すぐに処方した医師に相談してください。
注意:市販の塗り薬は効果が弱く、持続的な使用には向かないので、症状が長引く場合や症状が重い場合はすぐに病院へ行ってください。病院では、医師の診察や採血を行い、内服薬(処方薬)を併用し、しっかりとした治療を進めることができます。
2. 内服薬(飲み薬)
以下のような場合には、抗真菌薬の飲み薬が選択されます。
- 爪白癬を合併している場合:塗り薬は硬い爪には浸透しにくいため、飲み薬で体の内側から菌を攻撃する必要があります。
- 角化型が重症で、塗り薬の効果が乏しい場合
- 症状の範囲が非常に広い場合
飲み薬の種類:現在、主に3種類の系統の薬が使われています。いずれも効果が高い一方、肝臓への負担や、他の薬との飲み合わせ(相互作用)に注意が必要です。またある程度の期間飲み続けることが必要です。そのため、治療前と治療中には、定期的に血液検査で肝機能などをチェックしながら、安全に治療を進めていきます。外用薬に比べ、効果は高く出ます。
注意:いかなる場合も、薬の使用は必ず医師の診断と処方に従って行ってください。かゆみや皮むけがなくなったからといって自己判断で治療を中断すると、生き残った菌が再び増殖し、ほぼ確実に再発します。
生活習慣による管理(セルフケア)
薬物療法の効果を最大限に引き出し、再発を防ぐためには、日々のセルフケアが欠かせません。
- 正しい手の洗い方:石鹸をよく泡立て、ゴシゴシこすらず、泡で優しく包み込むように洗いましょう。特に指の間や爪のまわりは丁寧に。その後、流水で十分にすすぎ、清潔なタオルで水分をしっかり拭き取ります。濡れたままは禁物です。
- 徹底した足の治療:手白癬の再発予防は、感染源である足白癬の根治にかかっていると言っても過言ではありません。手の薬と同時に、足にも忘れずに薬を塗りましょう。
- 保湿ケアとの両立:治療中は皮膚が乾燥しやすくなることも。保湿剤を併用する場合は、抗真菌薬を塗ってから5〜10分ほど時間をあけ、薬が十分に浸透した後に重ねるのが一般的です。どの保湿剤が良いか、どのタイミングで塗るべきか、医師や薬剤師に相談しましょう。
- 家事の工夫:水仕事の際は、まず木綿の手袋をし、その上からゴム手袋をはめる「二重手袋」がおすすめです。汗を吸い取り、ゴムによるかぶれや蒸れを防ぎます。
治療期間と予後
皮膚の細胞が新しく生まれ変わるには、少なくとも1か月かかります。そのため、症状がきれいになっても、角質層の奥に潜んでいる菌を完全に退治するために、医師から指示された期間(通常1か月以上、角化型では数か月〜半年以上)は必ず薬を続ける必要があります。
途中でやめない限り、予後は良好で、ほとんどの場合きれいに治すことができます。根気強く治療を続けることが、完治への一番の近道です。
予防法と日常生活での注意点
一次予防(発症予防)
手白癬にならないために最も大切なのは、白癬菌を寄せ付けない、増やさない環境づくりです。
1. 最大の感染源「足水虫」の管理
- 足水虫の完治:何よりもまず、足の水虫を完全に治すことが最も効果的な予防法です。
- 正しい足の洗い方:入浴時は、石鹸をよく泡立て、指の間まで丁寧に手で洗いましょう。軽石などでゴシゴシこするのは、皮膚を傷つけ逆効果です。
- 乾燥の徹底:お風呂から上がったら、趾の間までタオルでしっかり水分を拭き取ります。ドライヤーの冷風を当てるのも効果的です。
2. 環境からの感染を防ぐ
- 共有物の見直し:家族に水虫の人がいる場合、足ふきマット、スリッパ、爪切り、タオルは絶対に共有しないようにしましょう。
- こまめな掃除:白癬菌は、剥がれ落ちた皮膚(垢)の中で数か月間も生き続けることがあります。フローリングやカーペットはこまめに掃除機をかけ、お風呂場も定期的に洗い流しましょう。
- 公共の場での注意:スポーツジムや温泉、プールなど、裸足になる場所を利用した後は、シャワーで足をしっかり洗い流しましょう。
二次予防(早期発見・早期治療)
- 日々のセルフチェック:「いつもの手荒れ」と油断せず、片手だけのカサカサや、治りにくい指の間のジュクジュクなど、普段と違う症状がないか、自分の手を観察する習慣をつけましょう。
- 迷わず受診:少しでも「おかしいな」と感じたら、早めに皮膚科に相談することが、早期治療と早期回復につながります。
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日常生活の工夫
- ガーデニングや土いじり:土の中にもカビは存在します。作業をする際は、必ず手袋を着用し、終わった後は丁寧に手を洗いましょう。
- ペットとの触れ合い:ペットを触った後は、手を洗う習慣をつけましょう。ペットの皮膚に異常を見つけたら、動物病院に相談してください。
- 靴の管理:足が蒸れると白癬菌が増殖しやすくなります。同じ靴を毎日履かず、複数の靴をローテーションさせ、風通しの良い場所で乾燥させましょう。
家族・周囲のサポート
ご家族に水虫の方がいる場合、お互いの協力が感染拡大を防ぐ鍵となります。
- お風呂の順番は?:水虫の人が最後に入るのが望ましいですが、順番を気にするよりも、出た後に足ふきマットを共有しない、床をシャワーで軽く洗い流すといった対策の方が重要です。
- 洗濯物は一緒に洗って大丈夫?:通常の洗濯で菌が他の衣類にうつることは、まずありません。ただし、乾燥機を使ったり、日光でしっかり乾かしたりするとより安心です。
水虫は誰もがなりうる病気です。責めるような態度は避け、「一緒に治そう」という気持ちで、治療や生活習慣の改善をサポートしてあげることが、ご本人の精神的な支えになります。
治療後の再発予防のために
医師から「治癒」と診断された後も、油断は禁物です。再発を防ぐために、以下の習慣を続けましょう。
- 足の観察を続ける:毎日お風呂上がりに、足の裏や指の間、爪に異常がないかチェックする習慣をつけましょう。
- 清潔と乾燥を維持する:足を清潔に保ち、よく乾燥させるという基本のケアを続けましょう。
- 通気性の良い靴を選ぶ:普段から足が蒸れないように、通気性の良い素材の靴や靴下を選びましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 手にも水虫はうつるのですか?
A: はい、うつります。足の水虫(足白癬)にかかっている方が、その足を触った手でいると、手に白癬菌が付着して「手白癬」になることがあります。また、他人の水虫に無意識に触れることでも手白癬になります。
Q2: 手の水虫は、手荒れや湿疹とどう違うのですか?
A: 見た目だけでは区別が難しいことが多いです。一般的に、手荒れや湿疹は両手に対称的に症状が出ることが多いのに対し、手白癬は片方の手だけに症状が出ることが多いという特徴があります。
また、かゆみのないカサカサしたタイプ(角化型)は、ご自身で判断するのは困難です。正確な診断のためには、皮膚科で顕微鏡検査を受ける必要があります。
Q3: かゆみがないのですが、それでも水虫の可能性はありますか?
A: はい、十分に可能性はあります。特に手のひら全体が硬くカサカサになる「角化型」の手白癬は、かゆみを伴わないことがほとんどです。
そのため、単なる加齢による手荒れだと思い込んでしまい、発見が遅れるケースが多く見られます。「かゆくないから大丈夫」という自己判断は禁物です。
Q4: 市販薬を使っても大丈夫ですか?
A: まずは皮膚科で正確な診断を受けることを強くおすすめします。もし自己判断で水虫ではない皮膚炎に水虫薬(抗真菌薬)を使ってしまうと、かぶれなどの副作用で症状が悪化することがあります。逆に、水虫にステロイド系の湿疹の薬を使うと、菌が増殖してしまい、さらに治りにくくなります。
診断が確定した上で、薬剤師に相談して適切な市販薬を選ぶのは選択肢の一つですが、2週間ほど使っても改善しない場合は必ず受診してください。
Q5: 治療はどのくらいの期間かかりますか?
A: 症状やタイプによって異なりますが、皮膚が新しく生まれ変わるサイクルに合わせて、少なくとも1か月以上は塗り薬を続ける必要があります。特に皮膚が厚くなる角化型の場合は、数か月から半年以上かかることもあります。
症状がきれいになっても、医師の指示があるまで根気よく治療を続けることが再発防止のために最も重要です。
Q6: 家族にうつさないために、どんなことに気を付けたらいいですか?
A: 手を介して直接うつることは稀ですが、念のため、タオルや爪切りなどの共有は避けましょう。最も大切なのは、感染源となりうるご自身の足の水虫をしっかり治療し、家庭内に白癬菌をばらまかないことです。
お風呂の足ふきマットを別にしたり、こまめに掃除をしたりして、ご家族に足の水虫がうつらないように配慮することが、結果的にご自身の手白癬の再発予防にもつながります。
Q7: 治療中、ハンドクリームなどで保湿しても良いですか?
A: 保湿は皮膚のバリア機能を保つために大切ですが、自己判断は禁物です。抗真菌薬を塗るタイミングと、保湿剤を塗るタイミングや種類について、必ず医師に確認してください。
一般的には、入浴後にまず抗真菌薬を塗り、薬が十分に浸透した5〜10分後に、刺激の少ない保湿剤を重ねるよう指導されることが多いです。
Q8: 治ったと思ったら再発しました。なぜですか?
A: 再発の最も多い原因は、症状が消えたからといって自己判断で薬をやめてしまうことです。見た目がきれいになっても、角質層の奥に菌が潜んでいることがあります。
また、感染源である足の水虫が治っていなければ、そこから再び手に感染してしまいます。手の治療と足の治療を、医師が「治癒」と判断するまで続けることが大切です。
Q9: アルコール消毒は水虫菌に効果がありますか?
A: 残念ながら、一般的な手指用のアルコール消毒は、白癬菌に対して十分な殺菌効果は期待できません。白癬菌はアルコールへの抵抗性が比較的強い菌です。
予防の基本は、アルコール消毒よりも石鹸による物理的な洗浄、つまり「手洗い」で菌を洗い流すことだとお考えください。
Q10: 年齢とともに治りにくくなりますか?
A: 年齢とともに皮膚のターンオーバーが遅くなったり、バリア機能が低下したりするため、若い頃に比べて治療に時間がかかる傾向はあります。しかし、正しく診断し、根気よく治療を続ければ、年齢に関わらずきちんと治すことができます。諦めずに皮膚科医と一緒に治療に取り組みましょう。
まとめ
大切なポイント
- 手の水虫(手白癬)の多くは、ご自身またはひとの足の水虫から感染して起こります。
- 治療の基本は抗真菌薬の塗り薬です。症状がなくなっても医師の指示通りに続けましょう。
- 手の治療と同時に、感染源である足の水虫もしっかり治療することが、完治と再発予防の鍵です。
- 内服薬は手・足そして爪白癬に有効です。塗り薬で効果が出にくい方、こまめに塗れない方は、医師の管理下で服薬するとよいでしょう。
- 「ただの手荒れ」と自己判断せず、片手だけの症状が続く場合は皮膚科を受診しましょう。
- 根気強い治療と生活習慣の見直しで、水虫は必ず治る病気です。
手の不調は、見た目の問題だけでなく、日々の生活の質、そして心の健康にも大きく影響しますよね。「水虫かもしれない」と一人で悩まず、まずは専門医に相談する勇気を出してみてください。
正しい知識を持ってきちんと向き合えば、手の水虫は決して怖い病気ではありません。適切な治療とケアで、自信をもって手を見せられる、すこやかな毎日を取り戻しましょう。私たちも、あなたが前向きな一歩を踏み出すことを、心から応援しています。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。
適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:近藤 惣一郎 先生

美容外科SOグレイスクリニック(東京/大阪)総院長。医学博士(京大卒)、日本美容外科学会専門医(JSAS)、日本脳神経外科学会専門医、日本抗加齢学会会員。




