薬疹とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】

薬疹とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】

公開日:2025年09月30日

薬疹とは?症状・原因・治療法・よくある質問【医師監修】
桐生千鶴 / PIXTA

薬疹でお悩みの50代・60代の女性のみなさんへ。この記事では、皮膚科専門医の小阪捺稀先生の監修のもと、薬疹について分かりやすくお伝えいたします。

小阪 捺稀
監修者
小阪 捺稀
監修者 小阪 捺稀 仙台N美容クリニック

この記事3行まとめ

✓薬疹は薬が原因で起こる発疹で、かゆみや発熱を伴うことも
✓原因薬の中止が基本。50代からは複数の薬を服用していることも多く注意
✓気になる症状があれば自己判断せず、まずはお薬手帳を持って皮膚科へ

薬疹とは?

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薬疹(やくしん)とは、お薬の服用や注射などが原因で起こる、皮膚や粘膜の発疹のことです。治療のために使っているお薬が、思いがけずアレルギー反応などを引き起こしてしまう状態で、多くは原因となるお薬を中止することで改善に向かいます。

50代60代になると、健康のために複数のお薬を服用していることも少なくありません。だからこそ、薬疹について正しい知識を持つことが、ご自身の体を守る第一歩になります。

よく見られる身体的症状

薬疹の症状は、その種類によってさまざまです。まるで「体のサイン」のように、いろいろな形で現れます。

  • 全身に広がる赤い発疹:最も多く見られる症状で、かゆみを伴うことがよくあります。
  • 蕁麻疹(じんましん)のような盛り上がり:蚊に刺されたようにぷっくりと赤く腫れ、強いかゆみが特徴です。
  • 同じ場所に繰り返す発疹(固定薬疹):特定の薬を飲むたびに、体の決まった場所に円形の赤い発疹が現れます。
  • やけどのような水ぶくれや皮むけ:重度のアレルギー反応をひきおこしている場合に見られることがあります。高熱を伴う場合は特に注意が必要です。
  • 目の充血や唇、口の中のただれ:皮膚だけでなく、粘膜にも症状が出ることがあります。

これらの症状は、お薬を飲み始めてから数日~2週間ほどで現れることが多いですが、数時間で出ることも、数か月後に出ることもあります。

心理的な変化

突然のつらい症状は、心にも影響を与えます。「またあの発疹が出るのでは……」という不安や、「お薬を飲むのが怖い」と感じてしまうこともあるでしょう。特に、治療に必要なお薬が原因だった場合、今後の健康管理について心配が募るかもしれません。一人で抱え込まず、医師や薬剤師にその気持ちを伝えることも大切です。

厚生労働省の調査によると、医薬品の副作用報告の中でも皮膚障害は多くを占めています。年齢が上がるにつれて、服用する薬の種類が増える傾向にあるため、50代以降は薬疹を経験する可能性も高まると考えられています。正確な統計は難しいものの、入院患者さんの数パーセントに薬疹が見られるという報告もあり、決して稀なことではありません。

薬疹の原因とメカニズム

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主な原因

薬疹の主な原因は、お薬に対する体の「アレルギー反応」です。しかし、アレルギーではない仕組みで起こることもあります。

1. 生理学的要因

私たちの体には、外から入ってきた異物を排除しようとする「免疫」という仕組みがあります。この免疫が、特定のお薬を「敵」と間違えて攻撃してしまうのがアレルギー反応です。一度「敵」と記憶されると、次に同じ薬が体内に入ってきたときに、薬疹として症状が現れます。

また、肝臓や腎臓の機能が低下していると、お薬の分解や排泄が遅れ、体内に長く留まることで反応が起きやすくなることもあります。加齢に伴いこれらの機能は変化するため、50代以降は注意が必要です。

2. 環境的要因

特定の薬を服用中に紫外線を浴びることで発疹が出る「光線過敏型」の薬疹もあります。外用薬、内服薬どちらでも生じる可能性があります。日頃、何気なく浴びている太陽の光が、症状の引き金になることがあるのです。

3. 心理社会的要因

直接的な原因ではありませんが、ストレスや疲労は免疫のバランスを乱し、アレルギー反応を起きやすくする可能性があります。更年期など、心身のゆらぎを感じやすい私たち世代にとって、心と体のコンディションを整えることは、薬疹のリスク管理にも繋がります。

発症メカニズム

多くの場合、お薬の成分やその代謝物が、体のタンパク質と結合し、アレルギーの原因物質(アレルゲン)に変化します。これを免疫細胞が「異物」と認識し、攻撃を開始します。その結果、炎症を引き起こす物質が放出され、皮膚に発疹やかゆみといった症状が現れるのです。

リスク要因

  • 過去に薬疹を起こしたことがある:同じ薬や似た構造の薬で再び起こす可能性が高いです。
  • アレルギー体質である:気管支喘息やアトピー性皮膚炎など、他のアレルギー疾患がある方。
  • 特定の病気にかかっている:一部のウイルス感染症などにより免疫力が低下している場合。
  • 複数の薬を服用している:薬の種類が多いほど、原因の特定が難しくなり、リスクも高まります。

診断方法と受診について

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次に、受診する場合の流れについて説明します。

いつ受診すべきか

以下のような症状が見られる場合は、自己判断で様子を見たりせず、早めに医療機関を受診しましょう。特に重症の場合は、命に関わることもあるため、ためらわずに受診してください。

  • 高熱(38℃以上)を伴う発疹
  • 目の充血、まぶたの腫れ、唇や口の中のただれ
  • 皮膚の広範囲が赤くなり、やけどのように水ぶくれや皮がむけてきた
  • 息苦しさや、立ちくらみがある
  • 全身がだるくてぐったりしてしまう

診断の流れ

多くの場合、皮膚科で診断・治療を行います。

1. 問診で確認すること

医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。お薬手帳を持参すると、スムーズに情報が伝わります。

  • いつから、どのような症状が出ていますか?
  • 現在、どのような薬(飲み薬、塗り薬、サプリメント、漢方薬など)を使っていますか?
  • 症状が出る前に、新しく使い始めた薬はありますか?
  • 過去に、薬でアレルギーや副作用が出たことはありますか?
  • アレルギー体質ですか?

問診は、原因を探るためのとても大切なステップです。

2. 身体検査

次に、発疹の状態を詳しく診察します。どのような種類の薬疹か、重症度はどのくらいかなどを判断します。プライバシーには十分に配慮して行われますので、ご安心ください。

3. 代表的な検査例

診断を確定させるために、以下のような検査を行うことがあります。ただし、必ずしもすべての検査を行うわけではありません。

  • 血液検査:炎症の程度や、肝臓・腎臓などの内臓に影響が出ていないかを調べます。
  • 皮膚生検:症状が出ている皮膚の一部を小さく切り取り、顕微鏡で詳しく調べる検査です。重症の薬疹が疑われる場合などに行います。
  • 原因薬剤を特定するための検査:
  • DLST(薬剤リンパ球刺激試験):採血した血液を使い、どの薬にアレルギー反応を示すかを調べます。
  • パッチテスト:原因と思われる薬を皮膚に貼り、反応を見ます。

これらの検査で、原因となるお薬を特定していきます。

受診時の準備

  • お薬手帳:現在服用中のすべての薬がわかるように、必ず持参しましょう。
  • 症状のメモ:いつから、どのような症状が出たか、時系列でメモしておくと役立ちます。スマートフォンのカメラで発疹の写真を撮っておくのも良いでしょう。
  • 原因だと思う薬:もし思い当たる薬があれば、その薬自体か、説明書を持参しましょう。

受診すべき診療科

まずは皮膚科を受診するのが一般的です。もし、かかりつけの内科などで薬を処方してもらっている場合は、その医師に相談するのも良いでしょう。どこに相談すればよいか迷った場合は、お住まいの地域の保健所や、かかりつけ医に相談してみてください。

薬疹の治療法

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治療方針の決定

治療の基本は、原因となっているお薬を特定し、すぐに中止することです。医師は、患者さんの症状の重さや薬疹のタイプ、そしてそのお薬が治療にどれだけ必要かなどを総合的に判断し、患者さんと相談しながら治療方針を決定します。

薬物療法

症状を和らげるために、以下のようなお薬が使われます。

  • 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬:かゆみなどのアレルギー症状を抑えるための飲み薬です。
  • ステロイドの塗り薬:皮膚の炎症を抑えます。
  • ステロイドの飲み薬や点滴:症状が強い場合や、重症の薬疹では、炎症を強力に抑えるために使用します。

これらの薬は、症状や体の状態に合わせて処方されます。ご自身の判断で量を調整したり、中断したりせず、必ず医師の指示に従ってください。

非薬物療法

重症の薬疹で、ステロイドだけでは効果が不十分な場合には、血漿交換療法(体から血液を取り出し、原因物質を取り除いて体内に戻す治療)や、免疫グロブリン製剤の大量静注療法など、専門的な治療が行われることがあります。これらは入院して行う治療です。

生活習慣による管理

薬疹の治療中は、お薬による治療と並行して、日々の生活習慣を見直すことが、症状の早期改善と再発防止につながります。焦らず、ご自身の体をいたわる時間と考え、丁寧なセルフケアを心がけましょう。

1. スキンケア:優しく、清潔に、そして保湿

発疹が出ている肌は、非常にデリケートな状態です。外部からのわずかな刺激も、かゆみや炎症を悪化させる原因になりかねません。

入浴・シャワーの工夫

  • 温度:熱いお湯は血行を促進し、かゆみを強くしてしまいます。38~40℃程度のぬるめのお湯に設定しましょう。
  • 洗い方:石鹸やボディソープは、よく泡立ててから、手で優しくなでるように洗いましょう。ナイロンタオルなどでゴシゴシこするのは厳禁です。洗浄成分が肌に残らないよう、シャワーで丁寧にすすぎます。
  • 石鹸の選び方:低刺激性で、香料や着色料が含まれていない、敏感肌用の製品を選ぶと安心です。

入浴後の保湿ケア

  • 時間との勝負:お風呂上がりは肌の水分が最も蒸発しやすいタイミングです。タオルで優しく水気を押さえるように拭いたら、5分以内を目安に保湿剤を塗りましょう。
  • 保湿剤の選び方:皮膚科で処方された保湿剤があればそれを使用します。市販のものを使う場合は、こちらも低刺激で、アルコールや香料などを含まない、セラミドやヒアルロン酸などの保湿成分が配合されたものがおすすめです。
  • 塗り方:清潔な手のひらに保湿剤をとり、肌のきめに沿って優しく、擦り込まずに広げるように塗布します。特に乾燥が気になる部分には、重ね塗りをすると効果的です。

2. 衣類・寝具の選び方:肌への刺激を最小限に

肌に直接触れるものは、素材選びが重要です。

  • 衣類:チクチクする化学繊維(ポリエステル、アクリルなど)やウールは避け、吸湿性・通気性に優れた綿(コットン)100%やシルクなどの天然素材を選びましょう。締め付けの強いデザインも、摩擦で肌を刺激するため、ゆったりとした服装を心がけてください。
  • 寝具:シーツやパジャマも同様に、肌触りの良い綿素材が最適です。こまめに洗濯し、常に清潔な状態を保つことも、肌トラブルの予防につながります。

3. 食生活の見直し:体の中から健やかに

特定の食べ物が薬疹を直接治すわけではありませんが、バランスの取れた食事は、肌の再生能力や免疫機能を正常に保つために不可欠です。

積極的に摂りたい栄養素

  • ビタミンC:皮膚のコラーゲン生成を助け、炎症を抑える働きがあります。(例:パプリカ、ブロッコリー、キウイフルーツ)
  • ビタミンA:皮膚や粘膜の健康を維持します。(例:にんじん、かぼちゃ、ほうれん草)
  • 亜鉛:肌の新陳代謝を促します。(例:牡蠣、レバー、赤身肉)
  • 症状悪化の可能性があるため控えたいもの
  • アルコール:血管を拡張させ、かゆみを増強させます。治療中は禁酒が原則です。
  • 香辛料:唐辛子などの刺激物は、体を温め、かゆみを引き起こすことがあります。
  • ヒスタミンを多く含む食品:症状が強い時期は、サバなどの青魚、タケノコ、ほうれん草、ナスなどを一時的に控えると、かゆみが和らぐことがあります。

4. ストレスマネジメント:心と体のバランスを整える

ストレスは免疫のバランスを乱し、薬疹の回復を遅らせる一因となり得ます。ご自身に合った方法で、心穏やかに過ごす時間を作りましょう。

  • 十分な睡眠:睡眠不足は、肌のターンオーバーを乱し、ストレスを増大させます。夜更かしは避け、リラックスできる環境で質の良い睡眠をとりましょう。
  • リラックスできる趣味:読書、音楽鑑賞、穏やかな散歩、ガーデニングなど、夢中になれる時間を持つことで、心身の緊張がほぐれます。
  • 深呼吸:不安を感じたときには、ゆっくりと深い呼吸を数回繰り返すだけでも、自律神経が整い、リラックス効果が得られます。

治療期間と予後

原因となったお薬を中止すれば、軽症の場合は多くが1~2週間で快方に向かいます。発疹が消えた後も、しばらくは茶色っぽい色素沈着が残ることがありますが、これは時間の経過とともに(数か月~数年単位で)徐々に薄くなっていきますので、過度に心配する必要はありません。

ただし、DIHS(薬剤性過敏症症候群)などの重症薬疹の場合は、原因薬を中止した後も症状が続いたり、再燃したりすることがあり、治療が数か月に及ぶこともあります。

最も大切なことは、一度薬疹を起こしたお薬の名前を正確に記憶し、二度と使用しないことです。お薬手帳への記録は、将来のあなた自身を守るための、非常に重要な習慣です。

予防法と日常生活での注意点

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一次予防(発症予防)

残念ながら、薬疹を完全に予防する方法はありません。初めて使うお薬で薬疹が起きるかどうかを、事前に予測することは非常に難しいからです。だからこそ、新しいお薬を飲み始めた後は、ご自身の体調の変化に気を配ることが大切になります。「いつもと違うな」と感じたら、それが体からのサインかもしれません。

二次予防(早期発見・早期治療)

薬疹の経験者にとって、最も重要なのが二次予防、つまり「再発させない」ことです。

お薬手帳の徹底活用

  • 正確な記録:原因となったお薬の名前、発症した年月日、どのような症状が出たかを、必ずお薬手帳に記録しましょう。可能であれば、発疹の写真を貼っておくのも有効です。
  • 毎回必ず提示:新しい病院にかかるときや、薬局でお薬をもらうときはもちろん、歯科や眼科など、すべての医療機関で毎回必ずお薬手帳を提示する習慣をつけましょう。「この薬で薬疹が出たことがあります」と口頭で伝えることも大切です。
  • 薬疹カード(アレルギーカード)の携帯:お薬手帳を持ち歩かないときのために、原因薬の名前を書いたカードをお財布や定期入れに入れておくと、急に体調を崩した際などに役立ちます。
  • 家族・キーパーソンへの情報共有:万が一、ご自身で意識がなくなり、医療機関に運ばれたような場合でも、周りの人が医療従事者に情報を伝えられるように、ご家族や親しい友人などにも原因薬の名前を共有しておきましょう。

日常生活の工夫

薬疹の治療中や、肌がまだ敏感な時期は、日常生活での少しの工夫が、回復を助け、快適さにつながります。

かゆみへの対処法

  • 冷やす:かゆみが強いときは、患部を冷たいタオルや、タオルで包んだ保冷剤などで冷やすと、一時的にかゆみが和らぎます。ただし、直接保冷剤が皮膚に触れないようにし、冷やしすぎには注意してください。
  • 掻かない工夫:無意識に掻いてしまうのを防ぐため、爪は常に短く切っておきましょう。就寝中にかきむしってしまう場合は、綿の手袋をして寝るのも一つの方法です。
  • 気を紛らわす:かゆみに意識が集中すると、ますますかゆく感じてしまいます。趣味に没頭したり、誰かとおしゃべりしたりと、意識を別の方向に向ける工夫も大切です。

紫外線対策

薬疹の種類によっては、日光で症状が悪化する「光線過敏型」があります。また、炎症後の色素沈着も、紫外線を浴びることで濃くなる可能性があります。日中の外出時は、日傘、帽子、長袖の衣類などを活用し、肌への直接的な日差しを避けましょう。日焼け止めを使用する場合は、肌への負担が少ないノンケミカル処方(紫外線吸収剤不使用)の製品を選ぶとより安心です。

家族・周囲のサポート

ご家族や周りの方のサポートは、ご本人の心理的な安心感に大きく繋がります。

精神的なサポート 突然の発疹や、原因が治療に必要なお薬だった場合の不安など、ご本人は心身ともにつらい状態にあります。「大丈夫?」という声かけや、ただ黙って話を聞いてあげるだけでも、ご本人の気持ちは楽になります。決して「気のせい」「大げさだ」などと否定せず、そのつらさに共感し、寄り添う姿勢が大切です。

具体的な生活のサポート 症状が強い時期は、入浴や着替えといった日常動作も一苦労です。食事の準備や掃除、洗濯などの家事を代わってあげる、買い物に行くなど、具体的な行動でサポートできることはたくさんあります。また、病院への付き添いも、ご本人にとっては心強いものです。医師からの説明を一緒に聞き、記録することで、情報の整理もできます。

よくある質問(FAQ)

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Q1: 薬疹はうつりますか?

A: いいえ、薬疹は他人からうつされたり、他人にうつしたりする感染症ではありません。お薬に対するご自身の体の反応ですので、ご家族や周囲の方も、どうぞご安心ください。お風呂やタオルを共用しても問題ありません。見た目の症状から誤解されがちですが、隔離などは一切不要です。

Q2: 市販薬やサプリメントでも薬疹は起きますか?

A: はい、処方薬だけでなく、市販の風邪薬や痛み止め、胃薬などでも薬疹は起こります。また、意外に見落とされがちなのが、健康のためにと飲んでいるサプリメントや栄養ドリンク、漢方薬です。もし発疹が出る前に新しく飲み始めたものがあれば、どんな些細なものでも、受診の際に医師に伝えることが原因究明の重要な手がかりになります。

Q3: 原因の薬をやめたのに、症状がひどくなるのはなぜですか?

A: お薬の成分は、服用を中止してもすぐには体内からなくなりません。成分が分解・排泄されるまでには数日かかるため、その間は体内に残った成分が反応し続け、一時的に症状が悪化するように見えることがあります。これは異常なことではなく、多くの場合、数日をピークに徐々に改善に向かいます。ただし、悪化が続く、あるいは高熱など他の症状が出てきた場合は、重症薬疹の可能性も考えられるため、すぐに医療機関に連絡してください。

Q4: 以前は大丈夫だった薬で、急に薬疹が出ることはありますか?

A: はい、十分にあり得ます。これを「感作(かんさ)が成立した」と言います。以前使ったときには体がアレルギー反応を起こさなかったものの、その経験によって免疫がその薬を「敵」として記憶してしまうのです。そして、次に同じ薬を使ったときに、アレルギー反応として薬疹が現れます。また、加齢やその時の体調(疲労、ストレス、風邪など)によって免疫の状態が変化し、今まで大丈夫だった薬に反応してしまうこともあります。

Q5: 薬疹の治療費はどのくらいかかりますか?

A: 治療費は、症状の重さや治療期間によって大きく変わります。

  • 軽症の場合:皮膚科への通院で、抗アレルギー薬の飲み薬やステロイドの塗り薬が処方されるのが一般的です。この場合、医療保険の3割負担で、1回の診察と処方で数千円程度が目安です。
  • 重症の場合:入院が必要になると、医療費は高額になります。例えば、ステロイドの点滴や専門的な治療が行われると、1か月あたりの医療費の総額が数十万円になることもあります。しかし、日本には「高額療養費制度」があり、所得に応じて定められた自己負担限度額を超えた分は、後で払い戻しが受けられます。入院前に申請できる「限度額適用認定証」を提示すれば、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることも可能です。詳しくは、ご加入の健康保険組合や、病院の医療相談室にご相談ください。

Q6: 薬疹が出やすい体質は遺伝しますか?

A: 「薬疹そのもの」が直接遺伝するわけではありません。しかし、アレルギー反応を起こしやすい「アレルギー体質」は、ご家族から受け継がれることがあります。また、近年では、特定の種類の薬に対して重症薬疹を起こしやすい遺伝子の型(HLA型)があることも分かってきています。もしご両親やご兄弟に、特定の薬で薬疹を起こした経験がある方がいらっしゃる場合は、念のため医師に伝えておくと、薬を選択する際の参考情報として役立つことがあります。

Q7: 薬疹の跡は残りますか?きれいに治す方法はありますか?

A: 薬疹の炎症が治まった後、茶色っぽいシミのような「炎症後色素沈着」が残ることがあります。特に、症状が強かった場合や、掻き壊してしまった場合に残りやすい傾向があります。これは、肌が炎症から回復する過程でメラニン色素が過剰に作られたもので、病的なものではありません。 この色素沈着は、肌のターンオーバー(新陳代謝)とともに、数か月から数年かけてゆっくりと薄くなっていきます。早くきれいに治すためには、以下の点を心がけましょう。

  • 紫外線対策:色素沈着は紫外線を浴びると濃くなります。患部には日焼け止めを塗る、衣類で覆うなど、紫外線対策を徹底しましょう。
  • 保湿:肌が乾燥しているとターンオーバーが乱れがちです。しっかりと保湿し、肌の再生を助けましょう。
  • 摩擦を避ける:患部をゴシゴシこするなど、物理的な刺激を与えないようにしましょう。 気になる場合は、ビタミンCの内服薬やハイドロキノン、トレチノインなどの外用薬によって症状が改善する場合もあるので医師に相談してみてください。

Q8: どんな検査で原因の薬がわかりますか?

A: 原因薬を特定するための検査はいくつかありますが、どれも一長一短があり、100%特定できるわけではありません。

  • DLST(薬剤リンパ球刺激試験):血液検査で、どの薬にアレルギー反応を示すかを調べます。比較的安全な検査ですが、感度はそれほど高くなく、「陰性」でも原因薬ではないと断定はできません。
  • パッチテスト:原因と思われる薬を皮膚に貼って反応を見ます。特定のタイプの薬疹には有効ですが、これも万能ではありません。
  • 内服テスト(誘発試験):最も確実な検査ですが、アナフィラキシーショックなどの重篤な症状を誘発する危険があるため、入院して厳重な管理のもとで、ごく少量から試すなど、慎重に行われます。 実際には、これらの検査結果だけでなく、お薬の服用歴と症状の経過を詳細に検討する「臨床診断」が最も重要になります。

Q9: 複数の薬を飲んでいますが、どれが原因か分かりません。

A: 一般的には、症状が出る2週間~1か月ほど前から新しく飲み始めた薬が最も疑わしいとされます。しかし、何年も飲み続けている薬が原因となることもあります。ご自身で判断せず、まずは皮膚科医に相談してください。医師は、それぞれの薬が薬疹を起こす頻度や、過去の報告などを考慮し、最も可能性の高い薬から中止を検討します。自己判断で中止すると、持病が悪化する危険がありますので、絶対にやめましょう。

Q10: 薬疹を経験してから、薬を飲むのが怖くなってしまいました。

A: 一度つらい経験をすると、すべてのお薬が毒のように思えて、飲むのが怖くなってしまいますよね。その不安な気持ちは、決して特別なことではありません。まずは、その恐怖心をかかりつけの医師や薬剤師に正直にお話しください。専門家は、あなたの気持ちを受け止めた上で、今後どうすれば安全にお薬と付き合っていけるかを一緒に考えてくれます。

原因となった薬を避けることはもちろん、代替できる安全な薬を探したり、万が一、初期症状が出た場合の対処法を具体的に決めておくだけでも、心の負担は軽くなるはずです。一人で抱え込まず、専門家を頼ってください。

Q11: 薬疹がなかなか治らないのですが、どうすればよいですか?

A: 原因薬を中止して1~2週間経っても改善が見られない、あるいはむしろ悪化している場合は、注意が必要です。考えられる可能性として、(1)原因薬の特定が間違っていて、真の原因薬の服用が続いている、(2)「薬剤性過敏症症候群(DIHS)」のような、ウイルスの再活性化が関与する特殊な重症薬疹である、などが挙げられます。

特にDIHSは、原因薬中止後も長期間にわたり症状が続いたり、肝機能障害など内臓の症状が出たりすることがあります。自己判断で「治りが悪い」と様子を見るのは危険です。必ず主治医に現状を伝え、治療方針を再検討してもらう必要があります。場合によっては、より専門的な医療機関への紹介を相談することも重要です。

Q12: 薬疹が出ているとき、食事で気を付けることはありますか?

A: 薬疹は食物アレルギーとは直接関係ありませんが、症状が出ているときは、体も皮膚も非常に敏感な状態です。食事の内容によっては、かゆみを悪化させてしまうことがあるため、少し注意すると楽に過ごせる場合があります。具体的には、アルコール、香辛料(唐辛子、コショウなど)、アクの強い野菜(タケノコ、ナスなど)、鮮度の落ちた青魚(サバ、アジなど)は、体内でヒスタミンという物質を増やしたり、血管を広げたりして、かゆみを増強させることがあります。

症状が落ち着くまでは、これらの刺激物を避け、消化が良く、栄養バランスの取れた和食中心の食事を心がけるとよいでしょう。

Q13: 塗り薬だけで薬疹は治りますか?

A: 症状がごく軽度で、範囲も狭い場合は、原因薬を中止した上で、炎症を抑えるステロイドの塗り薬だけで改善することもあります。しかし、薬疹は皮膚の表面だけの問題ではなく、体の中で起きている免疫反応です。そのため、多くの場合、かゆみや炎症を内側から抑えるための抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の飲み薬を併用するのが一般的です。

症状が中等症以上であれば、ステロイドの飲み薬が必要になることもあります。塗り薬だけで済ませようと自己判断せず、まずは皮膚科を受診し、ご自身の症状の重さに合った適切な治療法を選択することが、きれいに治すための近道です。

Q14: これからインフルエンザなどの予防接種を受けたいのですが、薬疹が心配です。

A: 過去に薬疹を経験されていると、ワクチン接種にもご不安を感じますよね。ワクチンも医薬品の一種ですから、接種後にアレルギー反応として薬疹が起こる可能性はゼロではありません。接種を受ける際は、予診票の「これまでに薬を飲んだり、注射を受けたりして、具合が悪くなったことがありますか」という質問に必ず「はい」と答え、具体的な薬の名前や症状を記入してください。

そして、問診の際に医師に「〇〇という薬で薬疹が出たことがあります」と明確に伝え、接種の可否についてよく相談しましょう。ほとんどの場合は問題なく接種できますが、過去の症状の重さや、ワクチンの成分によっては、慎重な判断が必要になることもあります。

Q15: 重症の薬疹になると、どうなってしまうのですか?

A: 重症の薬疹は、命に関わる危険な状態です。代表的なものに「スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)」や、さらに重症な「中毒性表皮壊死症(TEN)」があります。これらの病気は、38℃以上の高熱とともに、唇や口の中、目、陰部といった粘膜がひどくただれ、全身の皮膚にやけどのような水ぶくれや赤い斑点が急速に広がります。

皮膚が広範囲にわたって剥がれ落ちてしまうため、体液の喪失や感染症のリスクが非常に高くなります。治療が遅れると、後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至ることもあります。高熱と粘膜症状を伴う発疹に気づいたら、絶対に様子を見たり、自己判断したりせず、夜間や休日であっても、すぐに救急外来などを受診してください。

まとめ

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大切なポイント

  • 薬疹は誰にでも起こりうるお薬の副作用です。新しい薬を飲み始めたら体調の変化に注意しましょう。
  • 原因薬の中止が治療の第一歩。自己判断せず、必ず医師に相談してください。
  • お薬手帳は「命を守る手帳」です。薬疹の記録を必ず残し、常に携帯しましょう。
  • 信頼できるかかりつけ医や薬剤師を持つことが、今後の安心に繋がります。


健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ

この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。

かかりつけ医について詳しく知る(厚生労働省)

 

監修者プロフィール:小阪 捺稀 先生

監修者プロフィール:小阪 捺稀さん

日本医科大学卒業。大手美容クリニックにて院長経験後、2024年に仙台駅前で「仙台N美容クリニック」を開業。カウンセリングからアフターサポートまで全て院長自らが行い、県外からも指名多数の人気クリニック。目元整形の症例は年間1500件以上を誇る。

HALMEK up編集部
HALMEK up編集部

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