食べているのに「たんぱく質不足」?健康リスク&「腸漏れ」という原因
食べているのに「たんぱく質不足」?健康リスク&「腸漏れ」という原因
更新日:2025年08月19日
公開日:2025年07月03日
教えてくれたのは2人の医師
平島徹朗(ひらしま・てつろう)さん
日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本抗加齢学会専門医。「たまプラーザ南口胃腸内科クリニック」「福岡天神内視鏡クリニック」を開設し、院長、理事長を務める。
秋山祖久(あきやま・もとひさ)さん
医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。多くの総合病院勤務を経て、『福岡天神内視鏡クリニック』院長に就任。年間4000例以上の内視鏡検査を行っている。
実は8割が不足! “摂ってるつもり”の落とし穴
「たんぱく質、ちゃんと摂っていますか?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?
「肉も魚も食べてるから大丈夫」「お肉大好き! むしろ食べすぎてるんじゃないかと心配になる」そう答える人が多いようです。しかし、実際にたんぱく質が十分摂れている人は、とても少ないのです。

グラフを見るとわかるように、2019 年のたんぱく質の摂取量が約 70gとは、1950~1960 年代と同程度です。戦後間もないころと同じくらいとは驚きますよね。
では 70g で、私たちはたんぱく質の目標摂取量を摂れているのでしょうか?
厚生労働省の発表によると、たんぱく質の推奨摂取量は、女性は 20 歳以上が 50gなので、推奨量こそクリアしていますが、目標量は 50~69 歳の女性で 68~98gなので、本来はもう少し多く摂るほうがよいのです。
もちろん、これは摂取量の話。「食事で摂り入れたたんぱく質がちゃんと吸収されているのか?」というのはまた別の話です。
私たちのクリニックでは、血液検査によってその人の栄養状態を調べる栄養解析(自費診療)を行っているのですが、たんぱく質量を調べたところ、不足している人がとても多いことがわかりました。8 割がたんぱく質不足という結果が出たのです。
あなたの摂取したたんぱく質が吸収できているか、チェックリストで確かめてみましょう。
たんぱく質不足度 チェックリスト
□食事に関係なくお腹が張ったり、ゴロゴロ鳴ったり、下痢になったりすることが多い
□おならのにおいが気になる
□太りやすく、ダイエットしても体重が落ちにくい
□髪の毛のパサつきが気になる
□肩こりや腰痛がある
□疲れやすく、疲労が抜けにくい
□寝つきが悪く、日中に眠気を感じる
□風邪をひくと治りにくい
□イライラすることが多い
□なんとなくやる気が出ない
あなたはいくつ当てはまりましたか? 3個以上当てはまる方は、たんぱく質不足の可能性大!
「たんぱく質を摂っているつもりが摂れていない」これこそが、老化・肥満などの生活習慣病、さまざまな不調を加速させる大問題なのです。
たんぱく質不足が引き起こす5つの健康リスク
「たんぱく質は筋肉づくりやダイエットのために必要。でも、それ以上のことはよく知らない」という人が多いのではないでしょうか。
たんぱく質が一番大切な理由を、ぜひ知っておいてください。なぜなら、「知らずに食べるか、知って食べるか」の違いはとても大きいからです。では、たんぱく質が不足すると、どのようなリスクがあるのでしょうか。
リスク1. 体の材料が足りなくなる
体を構成する成分のうち、水分を除くと残りの半分弱はたんぱく質でできています。そのため、たんぱく質が不足すると体は材料不足となり、肌や髪が荒れたり、内臓の働きが悪くなったり、骨がもろくなったり、貧血になったりして、あちこちに不調が表れるわけです。
リスク2. 細胞が老化する
体を構成する細胞は、たんぱく質を材料に、絶えず合成と分解を繰り返して作り替えられています。たんぱく質不足が続くと、細胞のターンオーバーの周期が乱れ、細胞は老化。体の機能低下や不調の原因になります。
リスク3. 体の機能が低下する
ホルモン(神経伝達物質)、消化吸収を促す酵素など、さまざまな分泌物はたんぱく質を材料に作られています。たんぱく質不足が続くと、消化吸収力の低下、代謝の低下、神経伝達機能の低下、免疫力の低下など、体のさまざまな機能が低下し、不調が起こりやすくなります。
リスク4. 〝幸せホルモン〟が不足する
やる気が出ない、イライラする……その原因の一つと考えられるのがセロトニンという脳内の神経伝達物質の不足。セロトニン不足は、自律神経や体内リズムの乱れなどによって起こりますが、そもそも、セロトニンの材料となるたんぱく質が不足していると産生量が低下し、意欲が低下したり、イライラしたり、落ち込んだりしやすくなります。
リスク5. 冷えやすく、太りやすくなる
食事で摂ったたんぱく質が体内で分解され、吸収されるとき、その約30%が熱エネルギーに。つまり、たんぱく質を摂取することで熱が生まれて体温が上昇。逆に、たんぱく質が不足していると、体温が上がらず冷えやすくなり、さらに代謝が低下して太りやすくなります。
食べてもたんぱく質不足になる理由「腸漏れ」とは?
たんぱく質の大切さを知り、もっとしっかりたんぱく質を摂ろう!と決意してくださったと思いますが、その前にもう一つ、知っておいていただきたい、とても大切なことがあります。
それは「腸」のことです。ご存じの通り、腸は栄養を吸収する場所。しかし、みなさんの腸はちゃんと吸収できているでしょうか?
実は、不要なものが腸に漏れ出して吸収され、そのぶん摂ったはずの栄養素が正しく吸収されていないケースが珍しくありません。それが、リーキーガット症候群、通称「腸漏れ」です。
正常な場合、小腸では粘膜層から消化酵素が分泌され、胃や十二指腸で消化された栄養をさらに分解し、吸収していきます。しかし、腸粘膜の細胞に炎症が起こると、腸粘膜の細胞と細胞の間にすき間ができてしまいます。
■正常な腸粘膜

■腸漏れを起こした腸粘膜

腸粘膜にすき間ができて腸漏れを起こすと、本来ブロックするはずの不要なものを取り込んでしまい、その影響で肝心の栄養素の吸収がおろそかになってしまうのです。これが、腸漏れで栄養不足になる理由。
つまり、腸漏れが起こると、口から栄養を十分に摂っていたとしても体内ではそれを吸収できておらず、栄養不足を招くのです。
■腸漏れから始まる悪循環
腸粘膜の細胞の炎症
↓
腸漏れ
↓
栄養吸収力が低下
↓
たんぱく質などの栄養が不足する
↓
細胞のターンオーバーの周期が乱れる
↓
腸粘膜の免疫力が低下
↓
ウイルス、菌、有害物質などをブロックできない
↓
さらに免疫力が低下
↓
心身の不調が起こりやすくなる
↓
体中の細胞に炎症が広がる
↓
ますます腸漏れするエンドレスループに!
次回の記事では、「腸漏れ」危険度をセルフチェック!を紹介していきます。
※本記事は、書籍『たんぱく質と腸の新常識: 絶対に漏らしてはいけない 新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』より一部抜粋して構成しています。
■「たんぱく質と腸の新常識「腸漏れ」」をもっと読む■
#1:「たんぱく質不足」になる原因「腸漏れ」と健康リスク
#2:「腸漏れ」危険度をセルフチェック!
#3:効果的にたんぱく質を摂る方法&腸活の新習慣
もっと詳しく知りたい人は、平島さん&秋山さんの書籍をチェック!

『たんぱく質と腸の新常識: 絶対に漏らしてはいけない 新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken 刊)
「たんぱく質が大事」と多くの人が知っているのに、摂取量が足りていないのはもちろん、たくさん摂ったとしても、腸が栄養を吸収できていないのが問題。漏れない腸にするための「新しい腸活」と、たんぱく質を不足なく摂れる「たんぱく質の正しい摂り方」をお伝えします。




