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- 夫亡き後、おひとりさま時間を楽しく過ごすには?
明るくユーモアあふれる人柄で、テレビなどで人気を集めていた料理研究家の清水信子さん(享年82)。77歳でひとり暮らし歴25年だった当時、おひとりさまを楽しむレッスンを、暮らしの中で自然に取り入れていらっしゃるコツを教えてくださいました。
25年前に夫をがんで亡くし、約3年落ち込みました
「私は結婚するまで4人きょうだいの家族の中で育ち、一人になるということがなかったんです。子どもがいないので、51歳で夫を亡くして“おひとりさま”になり、窓から家族連れの姿を見掛けると、パッとカーテンを閉めたりして、孤独を感じていました。家にいてもすべてに夫との思い出があり、何をしたらいいかわからなかった。
でも何かをしなくてはいけないという気持ちはあって。出版社の方が料理の本を作ろう、と声を掛けてくれ、夢中で作りました」 と、清水信子(しみず・しんこ)さんは振り返ります。
仕事に熱中し続けるうちに、「人間は適応していくものですね。妹2人は心配してくれましたが、なるべく頼らず、背すじを伸ばして生きていきたいと思うようになりました」
困ったことを乗り越え、徐々についた「一人力」
今は一人暮らしベテランの清水さんですが、時には困ったり、落ち込んだりすることもあるそう。そのたびに「一人力(ひとりりょく)」が鍛えられていると語ります。
「夫は大工仕事などが得意だったので、おひとりさまは何かにつけて不便で。例えば、年齢とともに缶詰やビンのふたが開けにくくなりました。でも便利グッズがいろいろあるから、雑貨店で見掛けると買っておくの。セールスに困ったときは、玄関近くにドーベルマンの声が出るスピーカーを置いて、“猛犬注意”の貼り紙をしたら効果抜群でした」
また、一人暮らしで困るのは、体調を崩したとき。「私は食べることが好きだから、具合が悪くても食べられなくなるってことはないの(笑)。リンゴのすりおろしたものはどんなときも食べられるから、リンゴは年中切らしませんし、すっぽんスープの缶詰など簡単に栄養を取れるものも常備しています」
毎日、時間を決めて3食バランスよく食べているのも元気の源だそうです。そして信子さんといえば、“万能だし”。「だしを飲むの? と驚かれますが、疲れたとき飲むだけで元気が出るのよ」
清水さんの万能だしの作り方
- 鍋に水1L、昆布12g、かつお節12gを入れ、中火にかける。
- 煮立つ直前に火を弱め、3分煮る。火を止めて3分おいて昆布を取り出す。大きめの茶こしでこして、器に入れる。
- すぐに塩少々を加える。
- 氷水をはったボウルなどに器を入れて冷まし、冷蔵庫へ。2~3日保存もできる。
”おひとりさま”こそ時には友に甘えつつ、社会にも目を向けて
信子さんは、お互いが元気になれるような人付き合いを心掛けています。人から元気?と聞かれるといつも「元気よ!」と答えています。
「手紙を書くときも、『もう4月も終わりね』ではなく、『5月になったわね』と書いた方が前向きな気持ちになれるな、と。私たち世代は月日が流れていくのに敏感になっているので。贈り物なども、相手がどうしたら喜んでくれるかと考えることがうれしいの」
そして、時には人に甘えることがあってもいいと話します。「愚痴を言っても解決にはならないから、普段は、ちちんぷいぷい飛んでけ! と自分で解消して誰にも言いません。でも、この人なら大丈夫と心を割って話せる友だちがいるって大事ですね。そのためには日頃のお付き合いから」と言います。d
もともと好奇心が旺盛で、研究熱心な清水さん。最近、魚や野菜の入った冷凍されているスープを入手。「簡単で栄養も取れるので、自分で根菜類などを入れて似たようなものができないかなって研究中なのよ」と笑います。
「料理研究家と名乗る以上、時代に合わせて、若い人でも簡単にできる料理を伝えていきたいのです。今の自分のいる場所でできることを楽しんで、少しでも人のお役に立てたらと思うの。
喜びって人にあげたら倍、倍になって、世の中が明るくなるから。それは一人でも誰と居ても変わらないこと。最後まで大好きな料理を追究して、私らしく生きていきたいわ」
清水さんがしている「おひとりさま時間を楽しむレッスン」
運動する:健康維持にも、落ち込んだときにも、とにかく歩く
お気に入りのシューズでほぼ毎日30分以上、5000歩以上歩きます。「落ち込むことがあった日も、体を動かすのがいいみたい。歩いていると、しょうがないな元気出さなくちゃ、という気持ちになるんです」
声を出す:早口言葉は、はっきりと話す訓練になる
壁には、早口言葉の表や、何かのおまけに付いてきた「うれしいなあ たのしいなあ」といった言葉が。「大きな声でものを読むことは頭の回転にも健康維持にもよいと思っています」
友を持つ:心を割って話せる友に、喜んでもらえることを考える
多くの友人がいるという清水さん。年末に年賀状を書くのではなく、2月の上旬に料理レシピ付きの「立春大吉カード」を送ります。「レシピ、おいしかったわ」などと好評だそう。
仕事する:次世代のための料理の研究などに情熱を注ぐ
「若い世代が持っていない調理道具などで料理を提案しても、作ることができないでしょう。今のライフスタイルに合った料理を紹介したいと思っています」
6時起床24時就寝、清水さんの一日のスケジュール
6:00 起床。語学番組を見て、頭の体操をする
6:20 テレビを観ながらラジオ体操をする。NHK Eテレ「0655」を楽しむ
7:00 入浴
8:00 朝食。その後、新聞を読んだりテレビを見たりする
10:00 家事、仕事などをする
12:30 昼食。午後は、外出、仕事など
18:00 ラジオを聴きながら、夕食準備
19:00 夕食。その後の時間は原稿執筆など
24:00 Eテレ「2355」を見て、就寝
■教えてくれた人
清水信子さん
しみず・しんこ 1938(昭和13)年、東京生まれ。懐石料理から惣菜まで旬の素材を生かした簡単でおいしい和食を紹介。テレビ、ラジオ、書籍、講習会、講演会などで活躍中。ライフスタイルの変化に合わせた調理法なども追究。『「ひとり力」を鍛える暮らし方』(講談社刊)『和食かんたんおけいこ帖』(NHK出版刊)など著書多数。2021年ご逝去。
取材・文=野田有香(ハルメク編集部) 撮影=篠塚ようこ
※この記事は「ハルメク」2016年5月号に掲載した記事を再編集しています。
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