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- 漫画家みつはしちかこさんが夫の墓を樹木葬にした訳
自分のお墓の選択方法についての4回にわたる企画の最終回。今回は、実際に樹木葬を選択した、漫画家・みつはしちかこさんへのインタビュー。2010年にご主人を亡くし、故人の遺志を尊重して樹木葬を選んだ、その思いなどを伺いました。
植物や自然が好きだった夫は生前から樹木葬を希望
※このインタビューは2021年9月に行いました。
夫は植物や自然が好きな人で、自宅の庭でバラを育てたりするほど。生前から「樹木葬がいいな」とよく言っていました。夫の実家のお墓は京都にあって、夫の母(私の姑)は、そこに埋葬されているのですが、「遠いし、京都の墓はちょっと……」ということもありました。
夫が亡くなったのは2010(平成22)年です。69歳でした。お酒とたばこが大好きで、病院嫌いだった夫。喉頭がんが見つかったと思ったら、あっという間に帰らぬ人になってしまいました。
慌ただしく葬儀を済ませて、その1か月後に、今度は私自身も心不全で倒れ、心肺停止、生死の境をさまようことになったのです。
景色を見て「ここがいい!」と即決
奇跡的に回復しましたが、そんなこともあって、自分のことも含めてお墓のことを真剣に考えるようになりました。そして夫が、生前ことあるごとに話していた樹木葬で探すことに。
ところが探し始めてみると、一番近いところでも伊豆大島とか(笑)。そんなに遠いところでは、京都と変わらないなと思っていたところ、私の友人が、近くの樹木葬を見つけてきてくれました。
さっそく見に行ってみると小高い丘の斜面に広々と敷地が広がっていて、後ろにはクヌギ林。景色がよくて、「ここがいい!」とすぐに決めました。
斜面に向かってベンチがあり、細い溝にはきれいな水が流れていて、そこにお花を挿せるようになっています。たくさんの区画があるのですが、ちょうど「風の旅人」という名前の区画が空いていて、自由奔放だった夫にぴったりだと思いました。
お墓自体は、木の近くに小さなプレートがあるだけなんですけどね。
眺めがよくて、俳句をひねりたくなるような場所
お墓って暗くて怖いイメージがありますが、ここは真逆です。心地よくて、ベンチに座って、丘からの景色を眺めたり、好きな俳句をひねってみたり……。
生前はもちろんケンカもしましたけど、そこに行くと面白かった夫のいいところばかり思い出します。春にはあちこちに桜が咲いて、2021年はコロナの影響で中止でしたが、桜葬というイベントもあります。
私もここに眠るつもりです。1区画で10人まで入れるんですよ。息子のお嫁さんも、気に入って、「私も入りたい」と言っていましたが、どうなることか(笑)。
樹木葬といっても、木はなくてちょっとお庭っぽいものとか、いろいろなタイプがあるみたいですね。だからご自身の目で見て決めるのが一番だと思います。
私は運よく素敵な所に出合えました。お墓に来るとビールが大好きだった夫がマスクもせずに、木の下でビールを飲んでいるような気がするんですよ。
みつはしちかこさん
1941(昭和16)年、茨城県生まれ。漫画家。2022年で、デビュー60周年を迎える。80年から22年間にわたり、朝日新聞日曜版に連載した『ハーイあっこです』(テレビ朝日系でアニメ化)の他、『わたがしふうちゃん』(ポプラ社刊)、『アララさん』(講談社刊)など漫画著書多数。漫画家デビュー60周年にあたる2022年、エッセイ集『小さなひとり暮らしのものがたり』(興陽館)が発売中。
『小さな恋のものがたり』(学研)コミックス最新46集が、2022年秋に発売予定。
樹木葬を選ぶときのポイント
(編集部まとめ)
- 形態
お骨は自然に還るのか、容器に入れるのか、合葬型か個別か、家族も入れるのか、期間はあるか。
- 木の種類
1人につき1本の木か、数人で1本か、木はなく花や芝生だけの場合もあるので、足を運んで確認。
- 交通手段
郊外は、安価で広い場合もありますが、近くに公共交通機関があるか、行きやすい場所かも注意。
- 供物の可否
樹木や花が中心のお墓なので、供物を置けるのか、線香など、火を使えるのかなども確認しましょう。
- 宗派
「宗旨宗派不問」のところもありますが、運営母体がお寺の場合は、その後の供養は、お寺の宗派です。
取材・文=原田浩二(ハルメク編集部) イラストレーション=鈴木なるみ
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年11月号を再編集し、掲載しています。
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