50代からの女性のための人生相談・26

人生相談:親のお墓の管理をどうするか悩みます

公開日:2021/07/05

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「50代からの女性のための人生相談」は、専門家がハルメク読者のお悩みに答えるQ&A連載です。今回は59歳女性の「お墓の管理」についてのお悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く住職・名取芳彦さんが回答します。

人生相談:親のお墓の管理はどうする?
50代からの女性のための人生相談・26

59歳女性の「親のお墓の管理」についてのお悩み

4年前に亡くなった実母のお墓のことで悩んでおります。

後にお墓に入る人はおらず、私が死んだらお墓を守る人がいないため、親のお墓をどうするのがいいのかわかりません。そのまま放置することは絶対にしたくないので悩んでおります。

私は結婚していて夫の家のお墓があるので、将来的に自分のお墓は義理の両親や夫と同じになる予定ですが、自分の親と一緒のお墓に入りたいという気持ちもあります。

何かアドバイスがあれば、ぜひよろしくお願いいたします。
(59歳女性 I.Sさん)

名取芳彦さんの回答:両家の墓をまとめる両家墓を検討

2つのお墓をまとめる両家墓・二世帯墓

多くの方がお墓に抱くイメージは、亡き人がゆっくり休んでいる場所、安心して眠っている場所でしょう。そのお墓にお参りする人も絶えて朽ち果てていくのは、やはり忍びないことです。

少子化の影響で、夫婦で夫側・妻側、2つのお墓を管理しなければならないケースが増えてきました。もしお墓がある土地に思いが強ければ移転できないでしょうが、そうでなければ一つにまとめて管理する方がいいでしょう。

今回のケースでは、ご主人の家のお墓(夫側)にあなたのご両親の家のお墓(妻側)をまとめる形になるかと思います。

両家の墓をまとめる場合はまず、夫やその兄弟に了解してもらいましょう。その上で、墓地全域を管理している人(霊園管理者、墓地世話役、お寺の住職など)にも確認しましょう。

個人的には、墓の所有者が納得していれば、お墓に誰が入ろうと断る理由はないように思われますが、市区町村の経営する公営墓地の場合や寺院が管理している寺院墓地の場合は、それぞれルールを設けている場合もあるようです。

お墓に刻む文字も連名や「先祖代々之墓」に変更を

夫側・妻側など、姓の異なる二世帯の家を一緒に埋葬するお墓を「両家墓」と言います。最も多い両家墓の形式は、一つの墓石に、両家の姓を縦に並べて彫るものです。

「家(イエ)」の意識や一族意識の強い地域では、墓石正面に〇〇家と彫られていることが多いものですが、その石だけを替えて連名にすることが可能です。

また、墓石に家名でなく「先祖代々之墓」とだけ彫って、両家の故人の戒名を墓石の側面に彫る方法もあります。

納骨堂に預ける、墓じまいして永代供養墓にする方法も

ただ、両家墓にすることを相談した結果、ご主人やその兄弟、あるいは親戚の「家」意識が強いことがわかった場合には、いったんお墓はそのままにしておくのも一つの方法です。

もしお母さんのお墓が遠方でお墓参りが大変だという事情なら、一緒のお墓に入れるようになるまで、あなたがお参りしやすい場所にある個人墓、納骨堂(合同墓を含みます)にお母さまのご位牌だけを預けるという選択肢もあります。

その場合、自分の死後、ご両親のお墓がどうなるのか気になるかと思いますが、最近は後継者がいなくなるお墓が増加しているので、多くの墓地では永代供養墓が用意されるようになっています。納骨期間や供養の仕方によって、金額もさまざまなようですから、遠慮なく住職などの管理者に聞いてみるといいでしょう。

ちなみに私が住職をしている寺の永代供養(預骨)墓は、1年契約の更新制で年間3万6500円。「毎朝夕に坊さんがお経をあげて線香を手向けてくれるのだから、朝50円、夕50円で1日100円のお布施だと思って1年分納めてください」とお伝えしています。

独身の人の場合や自分のお墓を作るという場合は、元気なうちにご両親の家の墓じまいをして、上記のような方法で位牌の居場所をいったん確保しておくといいでしょう。そして、ご自身が亡くなった時の葬儀やお墓については、信頼できる人(友人、葬儀社、僧侶、行政書士、司法書士など)にお願いしておくといいと思います。

お墓の場所や形にこだわる必要はない

お墓の場所や形にこだわる必要はない

最後に「お墓がある土地に思いが強いので移転したくない」、「お墓を勝手にまとめるなんて!」という人のために、場所に対するこだわりを解消するのに欠かせない仏教の詩をご紹介します。

迷故三界城(迷うがゆえに三界は城なり)
悟故十方空(悟るがゆえに十方は空なり)
本来無東西(ほんらい東西なし)
何処有南北(いずこにか南北あらん)

上の詩は「心が迷っているうちは城壁で囲まれた城の中にいるようなもの(迷故三界城)なので、どこへ行っても壁にぶつかる。悟れば、自分の心を含めた宇宙全体が何者にも遮られていないことがわかる(悟故十方空)」と、こだわりから離れることをすすめています。

旅行は東に行ってはダメだとか、お墓は西向きがいいとか、方角にこだわる人がときどきいます。でも、特定の場所にこだわっていると窮屈な生き方をすることになります。

方角とはあくまで自分のいる位置から見たときの話であって、別の場所から見たら正反対の方角になることもあるからです。

わかりやすい例でいうと、磁石を使って「北」を目指すと北極点にたどり着きます(あくまで思考の例で科学的な話は別)。地球上にこれ以上の「北」はありません。北極点からどの方向に一歩踏みだしても、今度は南極点に近づくため「南」にしか行けません。究極の「北」を目指して到達した結果、目の前に「南」しかなくなってしまうのです。

こうした考え方から、僧侶にとってお墓とは、“どこでもドア”、もしくは故人との一時的な「面会用の窓」という意識の方が強いかもしれません。どこにお墓があっても、どんな形であっても、故人と心をつなげることはできます。

お母さまへのあなたの思いが、すとんと落ち着く方法にたどり着くことを、お祈りしています。

回答者プロフィール:名取芳彦さん

名取芳彦さん

なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)など、著書多数。

構成=竹下沙弥香(ハルメクWEB)

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