仕事・生活を分けて考える時代はもう古い

教授が勧める!仕事で「幸福な生活」を目指す考え方

公開日:2022.03.31

更新日:2023.05.31

時代とともに、50代からの女性を取り巻く環境と働き方は変化をしています。50代で、同志社大学グローバル・コミュニケーション学部教授として女性の働き方を専門に研究している中村艶子さんに、「幸福な生活」を目指す働き方を教えてもらいました。

中村艶子さんのプロフィール

中村 艶子 同志社大学 グローバル・コミュニケーション学部教授。専門は「日米の女性労働とワーク・ライフ・インテグレーション」。2009~10年フルブライト客員研究員(スタンフォード大学/ハーバード大学)米国リゾートホテル管理職として勤務後、会議通訳者、企業内翻訳者も経験。趣味は海外旅行。著書に『ワークライフインテグレーション―未来を拓く働き方―』(ミネルヴァ書房刊/共著・平澤克彦)

働くのは十分?それともまだ足りない?

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「一方はこれで十分だと考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。そうした いわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。」―これはパナソニックの創業者、松下幸之助氏の言葉です。

これまで生きてきて、あなたはもう働くのは十分だと考えていますか?それとも、まだ働き足りないと感じていますか?

この考え方や感じ方は、ほんのわずかな違いですが、これからの人生においては大きな違いとなってくるでしょう。

人生100年といわれる時代、やってみたいことがあれば、新たな世界が待っています。セカンドステージにいる今こそ、生活をもっと張り合いのある幸せなものにしていきましょう!

50代女性をめぐる労働環境の変化

1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性をめぐる労働環境は大きく変化してきました。いわゆる「均等法第一世代」は定年を迎えたか、セカンドライフを考える時期にいます。

1991年のバブル経済の崩壊を契機に、いわゆる「専業主婦世帯」が減り、共働きが増大しました(図1)。1999年には男女共同参画社会基本法が施行され、女性の就労が推進され、特に50代女性にとっては、価値観を覆すほどのめまぐるしい雇用環境の変化です。

図1 共働き世帯の変化
図1 共働き世帯の変化
 

子育て期に離職し就業率が落ち込む「M字型労働力曲線」は過去のものとなり、2021年時点では、50代女性の就業率は8割に近づきました(図2)。女性が家庭外で働くことが当然になり、この先も、女性たちは「働く」ことの新しい時代を切り開いていくことになるでしょう。

図2 出所:総務省『労働力調査』
図2 出所:総務省『労働力調査』

働くことは自分の生活の一部だからこそ

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働くことは生活の一部です。仕事と生活を分けて考える時代はもう古いのです。だからこそ、少し上を目指して自分の生活を見直してみることが必要です。

「ワークライフ・インテグレーション(WLI)」という言葉を耳にしたことがありますか。「仕事と生活の統合」という意味です。仕事と生活を働くことと生活を切り分けてそれを両立するワークライフバランス(WLB)から、もっと包括的な考え方へと移行しています。

働くことが生活の一部だからこそ、仕事生活、家庭生活、個人生活、地域生活において、政府や職場で得られる支援などを利用して「幸福な生活」を目指すというものです。

ワークライフインテグレーション

「幸福な生活」を目指すための具体的な考え方

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家族の介護が必要になるなど「家庭生活」の比重が大きくなった場合、一人でがんばるWLBには限界があります。これまでは、多くの女性たちが仕事を辞めてしまっていました。ですが、これからの時代は、継続するために職場や政府の制度を利用しながら前進していけばよいのです。それがWLIです。

例えば、オフにできる日の設定や始業時間を遅らせるなど、柔軟に働けるよう交渉してみる手があります。また、コロナ禍により今では職場に出向かずリモートで働く機会も増えました。リモートワークも可能かもしれません。もしPCが苦手なら、今こそ職場や地域のセミナー利用や友人に習うなどして、オンラインの世界へ一歩踏み出してみませんか。

心が動く働き方を考えてみよう

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また心が動く働き方をしてこそ、ワークとライフを活性化させて統合していけます。心が動くこととは?それは、「前向きに挑戦して幸せを感じること」です。

私の知人には、仕事後にドイツ留学に備えてドイツ語を始めたり、夜間のオンライン大学院で修士号の勉強をしたり、あるいは、最初は英語もドイツ語もまったくできなかったのにイギリスとドイツの大学院で2つも学位を取得したような人たちがいます。いずれも自分の仕事に生かすための行動です。

初めて聞いたときには、どうしてそんなことができるの⁉と驚きました。でも、考えてみれば、それがその人たちがやってみたい、心が求めていることなんですよね。ですから、心が求めることを少しずつで良いから続けてみませんか。一日に15分でも良いのです。

始めてみようかしら?と思ったあなたは、きっと思いがけない幸せに巡りあえるでしょう。幸せなセカンドライフとは「心が求めることに挑戦すること」なのです。人生は思い描いたところに歩んでいけるのですから。

感謝の気持ちを言葉にすると自分の心も満たされる

幸福な生活を目指すWLIの中では、周囲の人たちに支えられて生活が成り立っています。仕事では誰かと一緒に働き、一人では完璧にいかないことを助けてもらい達成していきます。

そんな時は支えてくれた人に、「ありがとう」と感謝の気持ちを言葉にして伝えてみませんか。素敵な人間関係を築くことができ、そのことが、自分の心も満たしてくれるでしょう。

セカンドステージでのWLI。仕事生活、家庭生活、個人生活、社会生活の中で助けを得ながら、思い描く未来を創っていきませんか。あなたの幸せなセカンドライフ、少し考えただけでもワクワクしませんか?

■もっと知りたい■

中村 艶子

同志社大学 グローバル・コミュニケーション学部教授 専門「日米の女性労働とワーク・ライフ・インテグレーション」、2009~10年フルブライト客員研究員(スタンフォード大学/ハーバード大学)、米国リゾートホテル管理職として勤務後、会議通訳者、企業内翻訳者も経験。趣味は海外旅行。
 

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