年金生活を楽しく!新しいお金との付き合い方#1

老後資金を知ってお金を賢く使う!新・家計メリハリ術

公開日:2023.02.23

更新日:2023.11.17

「年金生活の人こそ、貯めたお金を自分のために使うべきです!」と、経済ジャーナリストの荻原博子さん。え!? 限られた年金収入しかないのに、どういうこと? 2000万問題を解決し、人生を楽しむために、上手なお金との付き合い方を聞きました。

年金世代、まさかの心配の必要がなくなった!?

「老後の備え」と「元気なうちに使う」バランスが大切

雑誌「ハルメク」では、「これからどんなふうにお金を使いたいですか?」というアンケートを、50~70代の女性に実施しました。さまざまな回答がありましたが、その中から4つの回答をご紹介しましょう。

  • 今までさんざん家族のために尽くしました。これからは自分のためにお金を使いたい。
  • 多くはいらないので、プチ贅沢も時にはありの生活がしたいです。
  • 健康管理に気を付けて医療費のかからない体でいたい。その分、残りの人生を豊かに過ごすために使いたい。
  • 増えることのない年金で、増えるであろう医療費など、節約するけれどもストレスフルにならない使い方を。

これらの回答に、経済ジャーナリストで生活に根ざした視点でアドバイスをしてくれる荻原博子さんは、「年金生活は先々まで収入が一定で、家計の見通しを立てやすく、お金の不安はなくせるはずだ」と言います。

「病気や業績悪化などで収入が減る心配のある現役世代と違って、年金はあまり減りません。生活費をその範囲内に収めるようにすれば、将来の“まさか”を心配する必要はないのです」と荻原さん。

老後2000万円問題は、もう解決している!?

でも、年金だけで夫婦で暮らすには貯蓄2000万円では足りないと言われていましたが……。「実は、いわゆる“老後2000万円問題”は、もう解消しているんですよ」と荻原さんはにっこり。

2017年の調査で、年金世代の平均生活費は夫婦で月5.5万円の赤字、30年間で約2000万円の赤字になるとされ、大きな問題になりました。

「ところが、20年の同じ調査では約1000円の黒字に。コロナ禍で旅行や外食、交際費などが減ったせいもありますが、少なくとも基本的な生活は、貯蓄を切り崩さなくてもできるとわかった、と言えるでしょう」と荻原さん。

そのため“老後のために”と貯めたお金は、年金世代になったら使うことを考えていいのだそうです。

「残しておくべき金額」を知って気持ちよく使う!

「残しておくべき金額」を知って気持ちよく使う!

とはいえ、生活費を収入内に収めても、医療費や介護費にいくらかかるかわからないから、怖くてお金が使えない、という声も。でも、「そこは心配しているほどはかからないから大丈夫」と荻原さんは言います。

医療費と介護費、お葬式代を考えても、終末期に必要なお金は、夫婦で1500万円ほどが目安だそうです。「そのお金だけはしっかり守る、と決めれば、あとはメリハリをつけて、使うべきときには気持ちよく使えばいいのです」と荻原さん。

荻原さんは、計画的にお金を使うために、次の4つのポイントを押さえることが大切だと言います。

1.1か月の生活費を書き出し、収入内に収まっているか確認する 
2.収まらない場合は、今後どれくらい貯蓄を切り崩すことになるか計算する
(1年の収まらない金額に平均寿命から現在の年齢を引いた年数を掛けます)
3.貯蓄から医療費・介護費などとして1500万円と(2)を引いて、いくら残るかを明らかにする 
4.何年健康でお金を使えるか考え、(3)をその年数で割る

これで、元気なうちに年間いくら使えるかわかるので、計画を立てて使うのが、年金生活ならではの賢いお金との付き合い方だそう。

「お金はあの世には持っていけません。病気で体の自由がきかなくなって、せっかく貯めたお金を使えなくなったら、それこそもったいない!」と荻原さんは断言します。

2021年末から原油高で物価が値上がりし続けていますから、生活費はその分、節約が必要になってきます。でもケチケチするだけでは続かない。今どきの新しい節約法で楽しみながら値上がり分を取り戻しましょう」と荻原さんは話します。

医療・介護に備えるお金は夫婦で1500万円が目安

医療・介護に備えるお金は夫婦で1500円が目安

介護費:1人600万円
介護に要する費用は、住宅改修や介護用ベッドの購入など一時的な費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8万3000円。そして介護期間の平均は5年1か月です。それを基に計算すると1人約600万円あれば対応できます。

医療費:1人100万円
高齢者負担の上限は月約5万8000円。病院は長く入院させてくれず、8割以上の方が1か月未満で退院しています。また、家族合算で医療費控除が受けられたり、高額な医療費は負担額が決まっているので、1人100万円あれば対応できます。

その他:2人で100万円
最近では家族葬という人も多くなっているので費用はそこまでかからない場合もありますが、いざというときの費用への備えです。

「値上がり分」は「楽しく節約」で取り戻す

「値上がり分」は「楽しく節約」で取り戻す

荻原さんが年金世代に提案する節約は、生活パターンを変えること。

「ネットバンキングやオンライン通話など、パソコンやスマホといった新たな機器を取り入れることに挑戦してみるといいですよ」と荻原さんは言います。

ネットバンキングを使えば手数料が安くなり、LINEなどのサービスで通話すれば電話代の節約にもつながります。「最初は抵抗があるかもしれませんが、上手に使えば節約できる上、認知症の防止にもなりますよ」と荻原さん。

次回以降は、スマホを使った新しい節約術や、買い過ぎため込み過ぎをなくして食費を賢く削る方法食材を使い切る節約レシピについて各専門家に伺います。

さらに、確定申告時の払い過ぎた税金を取り戻す方法などについても詳しく解説します。

荻原博子(おぎわら・ひろこ)さんプロフィール

生活に根ざした視点とわかりやすい解説が好評の経済ジャーナリスト。『一生お金に困らない お金ベスト100』(ダイヤモンド社刊)、『5キロ痩せたら100万円』(PHP新書)他、著書多数。

取材・文=松尾肇子、三橋桃子(ともにハルメク編集部) イラストレーション=飛田冬子
※この記事は雑誌「ハルメク」2022年3月号を再編集し、掲載しています。


【特集】年金生活を楽しく!新しいお金との付き合い方

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  8. 月5万円の年金生活で、おしゃれも楽しむコツ
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