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- 先生の評から私なりに見えてきた「いい折り句」とは
「折り句」を雑誌『ハルメク』に応募し始めて早7か月。一度銅賞に選ばれた後は、『ハルメク』に登場することもなし。続けるからにはうまく作れるようになりたいなあと、先生の評と入選作品から「いい折り句」のポイントを探してみることにしました。
「いい折り句」とは、その1「見立て」
雑誌『ハルメク』の7月号「てがみ」のお題で銅賞に選ばれた私の句は、天窓を 額縁にして 緑萌ゆ 先生の評はこうでした。「天窓を額縁ととらえたところがいいですね。見上げるとそこにある緑。“緑萌ゆ ”に勢いがあって、植物の生命力を感じます」。
この評を読んで、私は子どもの頃の「ごっこ遊び」を思い出しました。砂をご飯に、葉っぱをおかずに、木の実をおやつに見立てたりしての「ままごと」。男の子達は風呂敷をマントに見立てての「ヒーローごっこ」。
鍵っ子生活で、兄がチラシの紙を適当にちぎって「何に見~える?」と遊んでくれたことも思い出しました。「ラクダ」「ウサギ」「お姫様」などと言っては鉛筆で、こぶや長い耳、大きな目などを書き込んでいきました。子どもの「見立て」の何とうまいこと。遊び心あってこその「見立て」です。
7月号の金賞は、手に掬う 硝子めきたる 水の色 先生の評はこうでした。「陽に反射してキラキラ光る水が目に浮かぶようです。“硝子めきたる”とは、簡単そうでなかなかできない、美しい表現です」。
輝く水を硝子に「見立て」たことで、なおいっそう水の輝きが増すようで、私もこんなふうに詠めたらなあと憧れました。
「いい折り句」とは、その2「景が見える」
私は、本で読んだのか映画で見たのかが分からなくなることがあります。実際に経験したかのように錯覚してしまうことすらあります。私はそれを「映像が見える」と言います。俳句の世界では「景が見える」と言うのだそうです。
選からもれた私の句と入賞したものとを比べながら、「景が見える」について考えてみます。
2021年4月号のお題は「かがみ」。私が気に入ったのは、銅賞に選ばれたこれ。母さんの がらくた達は みな宝 「“がらくた”に達がついているところに、作者さんが決して“がらくた”だとは思っていないのが見て取れて、そこがいいなあと思いました」。
この句に寄せた作者の方の文はこうでした。「旅先で拾った貝殻、小さい頃の子供の作品、などなど」。私は、なんて素敵なお母さん、作者さんだろうと思いました。お金では買えない宝物が、親子の絆まで見せてくれるようです。
2021年9月号のお題は「たうえ」。この回で気に入ったのも、銅賞に選ばれた句です。たった今 羽化するところ 枝のセミ 「“う”で“羽化”を見つけられたのがすごい。羽化が終わるまでその場を離れられない作者さんの姿が目に浮かびます」。
昆虫たちの羽化という営みは本当に魅力的です。幼虫の背中が割れて、濡れて縮んだ羽が見え始め、やがてゆっくりと羽を広げる。息を飲んで見守らずにはいられません。
「たうえ」での私の句は、たくさんの 嘘に戸惑う 閻魔王 句に寄せる思いは「またしても出ました黒塗り資料。浄玻璃(じょうはり)の鏡にさえ映り難く、閻魔様も困惑気味」。
森友・加計問題、加えて桜を見る会などの問題で私はとても怒っていました。でも主観だけで詠んだ句からは、少しも景が見えてこないことが分かりました。
まだまだ暑い日が続きます。コロナ禍からも自由になれそうにありません。次回も「折り句」にまつわる話を続けようと思います。
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