ハーブ研究家・ベニシアさんの人生と遺した言葉たち
2024.06.162021年07月07日
徒然なるままに
我が家の庭は、狭いながらも天然の林です
茶畑と田圃が広がるこの地に越してきたのは、35年前。森を切り崩して開発が始まったばかりの住宅地でした。自宅周りに建っていたのは7軒だけ。住宅地として造成されていた土地もまだわずかで、周りは雑木林に囲まれていました。
小鳥たちが集まる庭
毎朝、小鳥たちの鳴き声で目を覚まします。昼間、私が朗読の練習をしていると、その声に合わせるかのように小鳥がさえずり始めます。春が過ぎると繁殖期に入るためか、姿は滅多に見られません。でもあの美しいさえずりは、きっとオオルリです。
3月、啓蟄(けいちつ)の頃をすぎると、土の中で目を覚ました虫や、木の皮の下に巣くっている虫、木の新芽や蕾(つぼみ)を求めて、たくさんの小鳥たちが我が家の庭に姿を見せるようになります。コゲラ、ヒヨドリ、キビタキ、シジュウカラ等々。中でもメジロが現れると私たちは大喜び。この時ばかりは朝食のフルーツを餌台にお裾分けです。
ベランダで洗濯物干しをしていると、ウグイスの盛んなさえずりレッスンの声が聞こえてきますが、なかなか姿を見ることはありません。美しい鳴き声とは裏腹に、地味な姿だからでしょうか。
まるで雑木林のような我が家の庭
35年前には造成地だった我が家の周りにも、今ではぎっしりと住宅が建ち並び、150戸以上の団地となりました。そんな住宅の建て込んだところに、こんなにもたくさんの野鳥がやってくるのはなぜでしょうか。それは、我が家の庭の造り方に理由がありそうです。
建て売りのこの家を買ったとき、門を入ったところの小さな築山に楓・ツツジ・サルスベリ・モッコクなど、数本の庭木が植えられているだけでした。家の中が表からも横からも丸見えでした。庭造りに造詣が深かった父から、「木は年々大きくなるから、早く植えておけば、数年で立派な庭になる」とのアドバイスをもらい、まだ若くて資金がなかった私たちは、雑木林から苗木を採らせてもらうことにしました。
檜・クヌギ・南天・万両・千両・柘植……たくさんの苗木が集まりました。その後、子どもたちもまだ小さかったので実のなる木も育てようと、食べた果物の種を植え、芽生えるのを待ちました。柿・枇杷・胡桃・キウイ・グミ・グレープフルーツ……。
それらはぐんぐん大きくなり、実を付けるようになりました。けれども、大きく茂った雑木林の木々に囲まれ、昼間留守になる我が家は、野鳥たちの絶好の餌場となってしまいました。明日には赤く熟れるだろうと楽しみにしていたグミも、もうすぐ食べられそうだと期待していた枇杷も、その寸前に、野鳥たちに食べられてしまう結果となり、野鳥の集まる庭となったのでした。
いつもとちょっと違う今年の庭
旅行が趣味の私たちは、退職してからも、夫のふるさとに建てたログハウスに滞在する期間を含めると、1年の半分近くを自宅を留守にして過ごしていました。そうなるとそこはもう野鳥たちの楽園です。
そこでは、自然の営みが繰り広げられていました。柿や柘植の木に巣作りをするシジュウカラ、その卵を狙うヒヨドリ、時には蛇。グレープフルーツの葉に卵を産み付けるアゲハチョウ。葉はアッという間に食いつくされ、グレープフルーツの葉がなくなると、ミツバ、青じそ、山椒など、香りの良い葉なら何でも食いつくすたくましさ。
そんなアゲハチョウの幼虫も、鳥のフンに擬態している4齢幼虫までは野鳥に狙われることなく、柑橘類の葉を旺盛に食べ、脱皮を繰り返しながら成長していきます。緑色の見るからに柔らかそうな5齢幼虫になった途端、たちまち野鳥たちの餌食となり数を減らしてしまうのが例年です。
けれども今年はちょっと違いました。自粛期間が長く、私たち人間が家にいることが多かったので、野鳥たちも少し警戒したのでしょうか。久しぶりにルビーのように輝くグミが、私たちにも回ってきました。アゲハチョウの幼虫も生き延びたのが多く、庭の林に飛び立つ美しいアゲハチョウを久しぶりに見ることができました。
この機会に、何もかもを自然淘汰任せにするのではなく、香草類、孵化したばかりのメダカ、アゲハチョウの終齢幼虫をサンルームに置き、気温に応じて窓の開け閉めをこまめにするなど、良い条件を整えて育てることにしました。
逞しい生命力を身近に感じながら、生き物たちが育っていく様子を観察するのも楽しいものです。
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