私の生活3本目の柱「旅行」への復帰を果たして_13

私は私として生きていける 2か月間の船旅を終えて

公開日:2020/07/13

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2016年、C型肝炎を克服してわずか21日後に脳出血になったharumatiさん。リハビリを重ね、2019年12月から約2か月間のクルーズ旅行に挑戦。今回は、ついに旅行記の最終回。クルーズ船の旅を通してharumatiさんが得たものとは?

クルーズ旅行

スタンプの数や、写真では表しきれない思い出が

脳出血からの再生に取り組んでいる間に、パスポートの有効期限が切れてしまっていた。新しく作った真っさらなパスポートで出発……スタンプの数だけ思い出が
脳出血からの再生に取り組んでいる間に、パスポートの有効期限が切れてしまっていた。新しく作った真っさらなパスポートで出発……スタンプの数だけ思い出が

入院中に有効期限が切れてしまっていた10年パスポート。船旅にチャレンジすると決めて、再申請した真新しいパスポートに、次々に出入国のスタンプが押され、そのスタンプの数だけ思い出を詰めて、夢のまた夢だと思っていた、脳出血の後遺症を抱えながらの海外旅行が終わりました。

入院中、理学療法士さんから「harumatiさんは、きっと海外旅行だって何だって、できるようになりますよ」と、言われながらも、現実は厳しいものでした。500m歩けるようになるまでに2か月半、じっとその場に立っていたり、体を傾けて前屈みになったり、しゃがんだりできるようになるまでには、1年以上かかりました。

私の左手はあきれるほど不器用。66歳にもなって右手から左手への利き手チェンジができるとは、到底思えませんでした。だから、利き手チェンジのリハビリを断り、食事をするのも、身だしなみを整えるのも、入浴や洗髪をするのも、すべて右手でがんばってきました。

右手の麻痺としびれは、今も変わることはありません。それは、けがなどではなく、脳出血後遺症による障害だからです。それでも、リハビリを続けることによって、たくさんのことができるようになりました。スマホ、パソコン、文字を書くこと。英語の筆記体でさえも! けれども、左手で杖を突いて、右手に荷物を持ったり、傘をさして歩くことは、今でもまったくできません。

それ以上に苦しかったのは、自分でありながら自分でないような、何とも心許ない感覚……。いわば、水の中を漂っているような感覚から2年以上抜け出せなかったことです。

 

 長い間、水の中をフワフワと漂っていたような気がする。
 見るもの聞くことのすべてにリアリティがなく、
 自分でありながら自分でないような、何とももどかしい感覚。

 中略
  
 私は、ハルメクWEBで記事を書き始めた。
 材料となる、過去の記録やメールを何度も読み返していくうちに、
 消えていた記憶が次々とよみがえってきた。
 曖昧だった言葉の意味を調べたり、推敲を繰り返したりする中で、
 思考はどんどん鮮明になっていった。

 私は私に戻っていく!
 たとえ体が不自由でも、自分の意志を持って、私は私として生きていける! 

 

2019年11月26日、船旅に出発する約1か月前に私が書いたエッセイの一部です。

そんな私が海外旅行を決意できたのは、どんなことがあっても夫は私を助け支えてくれると、心から信じることができたからです。夫と一緒になら、何でもできる! 病気と向き合う中で、深い信頼関係が育まれていたからです。

旅の楽しみは3度あるとはよく聞く話ですが、私も3度楽しんでいます。今回の旅での1度目は、元気いっぱいの夫と、体が不自由な私との凸凹コンビで、57日間をどう過ごすのか、計画を練る楽しみ。2度目は、ハプニングいっぱいの凸凹道中の楽しみ。そして3度目は、写真の整理をしたり、ハルメクWEBの原稿を書いたりしながら、旅の喜びをかみしめる楽しみです。

パスポートのスタンプの数や、写真では表し切れない思い出が、心の奥深くに刻まれました。

 

所変われば品変わる ー 厳選のお土産

私たちは、どこへ行っても、あまりお土産は買いません。ほとんどの物、特に食べ物は、その土地の気候や風土と共に味わってこそ楽しめると思っているからです。そんな私たちが厳選したお土産を一挙公開!

まずは、衣類。左は夫用のシャツ。4年前、フィリピンのマニラで見つけて気になっていた物。男性の正装用で、バナナの葉の繊維で作られた涼感たっぷりのシャツ。日本では着ないだろうと、そのときは買わなかったのですが、今回、生地の質感の魅力に負けて、セブ島の同じ系列の店で購入。船内のパーティーで活用しました。

厳選のお土産

右は、私用のポンチョ。シドニーのお土産屋さんでセールに出ていて、色が気に入ったので買うことにしました。ニュージーランド産メリノウールが主原料というのも魅力でした。ニュージーランドへ行けないのならせめて……と。帰国してから、タグを読んでびっくり。10%のシルク、20%のアンゴラに加えて、メルボルンの友人宅で見たあのポッサムの毛が20%使われていたのです。まあ、何はともあれ、真夏から真冬への移動の変身用には重宝しました。

真ん中にあるのは、ポンチョを買ったお土産屋さんで見つけ、珍しく衝動買いしたカンガルーの小物入れ。お腹の袋には赤ちゃんが入っていて、背中の部分がパカッと開いてアクセサリー入れになっています。本場の誇りにかけてか、少しもかわいらしくデフォルメせずに、リアルに作られているのが気に入りました。それでいて、ちりばめられたキラキラの石が、とても似合っているのです。

次は、食べ物。免疫力向上や抗菌作用から最近日本でも大人気のマヌカハニー。ニュージーランドは、その生産地としてよく知られています。行ったらぜひ買おうと思っていたそのマヌカハニーを、何とオーストラリアのメルボルンのマーケットで見つけたのです。

厳選のお土産

ニュージーランドからの輸入品だろうとラベルを見てみると……。正真正銘のオーストラリア産。マヌカハニーは、ニュージーランドだけのものではなかったのです。加えて、タスマニアにはもっと希少な蜂蜜があるとのこと。興味津々です。それは、「レザーウッドハニー」と呼ばれるもの。樹皮がレザー(皮革)のような色であることからこの名前が付けられたそうです。この木、花をつけるようになるまでに70~120年かかるといわれています。要するに蜜を出すまでに、およそ100年かかるというのです。なるほど希少なわけです。タスマニアの高級食材店で買いました。

最後は、メラネシアの島で買ったお土産。石の彫刻でウミガメを表現した置物。1つ15ソロモン$。現地通貨を使い切りたいと、ターミナル近くの出店を見ていて見つけました。

厳選のお土産

この2つをセットにすると、愛嬌が倍増してほのぼのします。でも、2つ分の現地通貨はもうありません。「2つ買うので、2つで20ソロモン$にしてもらえないかしら」と、お願いすると、すぐにオーケーしてくれました。尋ねてみると、自分で作ったものだとか。作品に作者の人柄がにじみ出ています。

もう一つは、最後の寄港地、ラバウルの露店で買った「ビルム」という手編みの袋。前々回書いた美人3姉妹が夫にと薦めてくれたものです。ラバウルでは、男女を問わず全員が持っているもので、各家庭のお母さんの手作りによる物です。おふくろの味ならぬ、おふくろの色合い、センスが表れています。

この他にも、友達に手渡そうと、フィリピンの天然素材のいい香りがするせっけんや貝細工の小物入れを買いました。私たちの旅行中も、仕事に行き、留守番もしてくれた息子用には、オーストラリアのカンガルージャーキー、ニューカレドニアのチョコレートでコーティングされたコーヒービーンズ、船内の売店では、ピープルツリーのドライフルーツを買いました。 残念ながら、写真を撮らずに手渡してしまったので、写真はありません。

そして、いつ会えるともわからないアメリカ在住の4人の孫たちには、オーストラリア固有の動物4種のぬいぐるみ。ぬいぐるみたちとは、船室から海や空を見ながら一緒に旅してきました。

 

小さな自主企画から広がった最高の思い出

2つの自主企画を記録したDVD
2つの自主企画を記録したDVD

「知らない人の前でも、朗読したり、語ったりできる自分に戻れているか」と、自らへのチャレンジのつもりで取り組んだ小さな自主企画「自作エッセイの朗読」。思いがけず、延べ90人以上もの参加者を得て、聞きながら涙を流してくれる人、話をしたいからとその場に残ってくれる人、レストランで、デッキで、ロビーで声を掛けてくれる人も増えました。

自作エッセイ「脳出血からの再生」の朗読
自作エッセイ「脳出血からの再生」の朗読

いつも夫と2人で行動する私たちを見て、「2人を見ていると、優しい気持ちになれる」と言ってくれる人もいました。台湾からの参加者ジェニーさんは、「103回ピースボートの旅で1番よかったのは、あなたたちに出会えたこと」とまで。彼女は「ぜひ遊びに来てほしい」と、台湾の住所、電話番号、メールアドレスを書いて手渡してくれました。

そして、東京から参加のIさん(乗船1日目の夕食のテーブルでご一緒した)が、3日間にわたる「自作エッセイ」の発表のすべてを、ビデオに撮ろうと申し出てくれたことが、さらなる交流の広がり・深まりを生み出すことになりました。

これらの支えに自信を得た私は、最後の自主企画日に、広い部屋を使っての大きな自主企画―パネルディスカッション「3カップルを通して考える、良い人生の築き方」―を実行することにしたのです。

1日目の夕食のテーブル仲間、福岡のMご夫妻、大阪の若いカップルAさん、Y君、船室が近くて毎朝顔を合わせた名古屋のYご夫妻。みなさんの素晴らしい人柄、生き方を広めたい。私は、そのコーディネーターができるようになっているかも知れないという思いが、突然湧いてきたのです。アフタヌーンティーの時間に集まってもらい、相談してみると、みなさん快く引き受けてくれました。

もちろん記録ビデオの撮影は、Iさん。帰国するとすぐに、パソコンが得意なIさんの奥様が、2本のビデオ記録を共有サイトに送ってくれました。それを、息子が編集して、DVDにし、みなさんにお礼のメッセージとともに送りました。こうして、私たちの第103回ピースボートの旅は締めくくられたのです。

ピースボート第103回クルーズ 乗船証明書
ピースボート第103回クルーズ 乗船証明書

 

主観に満ち満ちた13回もの船旅の記録を読んでくださってありがとうございました。

次回は、テーマを変えて、Stay home 期間中にしたこと、考えたことについて書いてみたいと思います。

 

harumati

定年退職・年金生活者。45歳~66歳までC型肝炎と共生。2016年奇蹟とも思える完治から1か月もせず、今度は脳出血に襲われました。1年半の闘病、リハビリ生活後、2018年、旅行・ボランティア・夏休みの娘母子とのプチ同居を3本柱にした、悠々自適のリタイア生活を取り戻すべく仕切り直して再出発しました。

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