カメラ片手に、美しい自然と向き合いにいく旅物語

冬の道東一人旅(前編)

公開日:2018.07.03

更新日:2018.08.24

国内旅行で巡った観光地や心に刻まれた風景を、撮影した写真とともに綴ります。今回は冬の北海道釧路市へひとり旅。釧路湿原での丹頂鶴、和商市場、幣舞橋と、訪れた先々で見た美しいシーンを紹介します。

始めに

「旅」……良い響きです。「旅行」と呼ぶより「旅」の方が私は好きです。旅という言葉の響きの中には、浮き立つ想いより一つの目的に向けてさらりと飛び込んで行くような、潔さを感じてしまいます。旅立つ前のいつ行こうか、誰と行こうか、どこへ行こうか、行った先で何を見ようか、 何を食べようかというあれこれも、心楽しい時間ではないでしょうか。ですが時としてふと美しい自然と向き合いたくなる瞬間があり、私はカメラ片手に一人で旅立つことがあります。

一路釧路へ

数年前の冬、私はずっと思い続けていた丹頂と流氷を求めて北海道へ旅立ちました。交通手段と宿泊施設だけがセットになったプランを利用しました。飛行機で降り立ったのは釧路丹頂空港、真っ青な空が目にまぶしく冬にしては暖かな日でした。

空港からのタクシーの中で、釧路は昨日まで冬の嵐が吹き荒れていたと聞きましたが、窓の外に広がる穏やかな空気の流れる釧路の風景からは想像もできませんでした。物静かな運転手さんの案内で、川の中州に群れる丹頂、雪一面の釧路湿原、和商市場の勝手丼を堪能させてもらいました。

丹頂と紅(くれない)の章

釧路湿原は豊富な湧き水のおかげで凍りにくく、丹頂は夜を釧路川の支流の中州で過ごすことで外敵から身を守ると聞きました。群れから離れ始めた二羽の丹頂が、白と黒の美しい衣で舞うがごとく飛び立ってゆく様に、鶴と一緒に私の心も高い空の中へ吸い込まれていくような、軽いめまいすら感じたものです。

ホテルで釧路の夕日が素晴らしいと知り、歩いて10分ほどの釧路川河畔、釧路港の河口あたりに出かけてみようと思い立ちました。対岸の岸壁に、漁船数隻が夕日を受けて大きく黒いシルエットを作り出していました。その夕日の大きさと美しさに私自身も赤く染め上げられ、夕日が海の向こうに落ちかかるときの言葉で言い表せない切なさに、涙がこぼれそうでした。

港を背にして幣舞橋に向かいます。橋を渡らずそのまま橋を背にしてしばらく進むと、小さな公園があったように思います。人一人いない、どちらをむいても一面雪野原です。けれど目を幣舞橋に転じたとたん、そこに私の思いをはるかに超えた美しくも不思議な光景が現れてきました。神々の悪戯かほんの少しの気まぐれでしょうか。言葉はいらない、言葉にしたらいま目の前にあるすべてのものが、ぼろぼろと崩れ去ってしまいそうでした。

丹頂
丹頂。

 

幣舞橋
幣舞橋。

 

一日の終わりに

北の旅の初日、この一日で自分がこれまで求めてきたものが、いかに卑小なものであったかを思い知らされました。向き合う自然のたたずまいは、私の思いを遙かに遠く大きく越えて、泰然とそしてあるがままの姿で存在していたのです。ひたすら瞑目し、私はそっとカメラをしまいました。


次はSLに乗って標茶へ-。

こすず

趣味は、読書(といっても多読、乱読)、旅をすること、写真、登山を含むアウトドアライフです。食べることへの興味も尽きない方で、旅先での食の探訪も結構好きです。少しでも長く趣味を楽しむために体力の温存を図るべく、夫と共に週4回ほどウォーキングとジョギングを行っています。

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