旅先での人との出会い

釧路・街暮らし

公開日:2019/09/17

28

新しい出会いを大切にする翠さんが、2019年の夏に暮らすように旅した、北海道での思い出をつづります。

釧路夕焼け
釧路夕焼け

帯広での出会い

2019年の夏は夫婦二人、北海道で2週間ほど暮らすことに決めた。
早々と夏休みを取り、先ずは北海道の帯広空港に到着し、帯広で3日を過ごす。
帯広の今はNHKの連続テレビ小説「なつぞら」一色で、駅でも観光協会でもテーマソングが流れて耳に染み付いてしまう。が、帯広はガーデン街道があり、いくつもの庭園が点在し、温泉もありその上、豚丼がおいしい。

やはり素通りできない立地ですから、貸自転車で「真鍋庭園」まで走ります。約5キロの道のりを爆走する自転車。園内では香港から来ていたご夫婦と知り合った。一緒に池の鯉に餌をやったり、記念撮影したり、片言の英語を交えての楽しい異文化交流のひと時。園内の樹木も空気も爽やかで、売店での買い物も楽しめました。

帰路はまた駅まで自転車を飛ばして帰ります。
貸自転車を返した後は、バスターミナルで販売しているバスと温泉がセットになったのお得なチケットを買って、バスに乗り込みます。バスで20分ほどの所にある「水光園」は木々の中にあるモール泉の温泉。モール泉とは、植物の堆積した地層から湧き出る温泉のこと。茶色の泉質は、まるでコーヒーのお風呂に入っているようで泉質もやわらかく良い温泉です。北海道や東京都内の温泉ではよく見かけます。
温泉では、いろいろな方とサウナの中でのおしゃべりに交じって楽しいひと時を過ごした。
「どこから来たの?旅が好きなの?」と質問攻めにあったものの、帰り際にはロッカーからパックに入った自家製キュウリのお漬物を取り出して持たせてくれる、親切な人のいる帯広です。
お礼に静岡から絵葉書を書きますと言ったら、「また来年帯広においで、この温泉でまっているよ」とのこと。是非また来年、今度は手土産を持ってこの温泉に来ることにします。

「水光園」

真鍋庭園の大きな柳の木
真鍋庭園の大きな柳の木

 

釧路で探索

帯広をあとにして、JRでガタゴト揺られて釧路に到着。釧路にも何度か訪れており湿原などの観光はすでに済んでいるので、今回の滞在の目的は「暮らすこと」。
釧路は霧と夕焼けが美しい街。

霧と夕焼けが美しい街

霧と夕焼けが美しい街

ホテルにチェックインし、貸自転車で街歩き、地の利の確認しつつ、おいしい寿司に舌鼓。翌日は朝一番でホテルの領収書を持って市役所へ行き、市民カードを発行してもらいます。市民カードは釧路ステイする人に便利なカードで、図書館の貸し出しカードを作ってもらえたり、シニアは博物館が無料になったり、駅前の有名海産物販売の和商市場が5パーセント割引対象になる……などの特典があるカードです。

釧路の街は、幣舞橋(ぬさまいはし)と駅の間の商業地区と幣舞橋を渡った先の住宅&歴史地区に分かれていて、駅周辺市街から少し離れると大きなショッピングモールや商業施設、日帰り温泉などが点在し申し分ない環境都市です。

バスで住宅街の通りに降り立つと……、すぐ森に入る入口があります。「武佐の森」の中には木道や小道が整備されつつ深い古代の森や湿原を堪能でき、ウバユリやクルマユリが群生している中を小一時間歩くことができます。すぐそばに住宅があることなど忘れてしまう深い森を小鳥の声を聴きながら味わえる貴重な一帯です。

ウバユリ
ウバユリ
クルマユリ
クルマユリ
森一番の巨木の看板
森一番の巨木の看板
森一番の巨木
森一番の巨木

また、幣舞橋から小一時間歩くと春採湖(はるとりこ)と言う静かな湖に着き自然の緑の中を遊歩道に沿って歩くことができます。はるとりは、縄文時代からの遺跡も点在しアイヌ語で「向こう側」という意味だそうです。

春採湖
春採湖

湖の対岸には商業施設があり食料品、衣類、おしゃれな雑貨、本などの買い物も充実し、寿司、焼肉などの食事、日帰り温泉も楽しめます。私はすっかりこの地域がお気に入りになり、毎日のように食事や買い物に、また湖散策に日参していました。

その先、「ひぶな坂」を大きく回り込んで登りきると「六花亭」のお店&カフェがあり、湖を臨みながらのティータイムもお気に入りでした。「六花亭カフェ」はコーヒーが無料、軽食やケーキ、あんみつパフェなどが楽しめ、店員さんたちもとても気さくで気持ちの良い接客、湖の景色と共にとても素敵な時間が過ごせます(ひぶな坂の「ひぶな」は、珍しい赤い色の鮒が生息することからついた名前だそうです)。

うまくいくうま

今回の釧路暮らし、我が夫婦はいつもそうなのですが、ホテルは必ずシングル二部屋がお約束。
洗面所とトイレの使い方、就寝時間、テレビ好みなどで一人時間の快適さを知り尽くしているので、とても部屋をご一緒できかねる夫婦なのです(笑)。と言うことで、食事後の夜の時間はゆっくり好きなテレビを見ながら針仕事がはかどるだろうと予測して、スーツケースの中には鋏と針道具を忍ばせています。そこで始まったのが100均ショップで買ってきたフェルトで作る馬の人形です。毎晩、せっせと好きな針仕事に精を出し作ります。

そして付けた名前が「うまくいくうま」中々のネーミングでしょ?毎日釧路で持ち歩くリュックサックにも取り付け、一つ二つをポケットに入れてあります。

うまくいくうま

うまくいくうま

 

釧路での出会い

ある日、春採の日帰り温泉の露天風呂に入っている時のこと、水面に無数の虫が浮かんでいて網ですくっていました。すると「この時期は虫が急に発生するんだよね
」と声を掛けられ、それをきっかけに湯船の中で色々なおしゃべりをした婦人がいました。
2週間の滞在で釧路にいると話したり、旅の話をしました。すると、その方が「私は娘が今年の3月に亡くなり、ようやくこうして温泉に来る気持ちになってきたの。あなたのように前向きに明るく暮らさないといけないです。」と話し始めました。

お風呂を出えるときに、脱衣所でその方に「うまくいくうま」を手渡し、「娘さんもきっと自由に天空を馬のように走り回っていることでしょう、だから元気を出してくださいね。女の人の人生にはいろいろなことが待ち受けているけれど負けずに乗り越えることが大切ですよね」と伝えました。
すると、ハラハラ涙をこぼし「見ず知らずの方にこの人形をもらいびっくりしたけれど、一生大切にして元気に生きていきます」とおっしゃり、お別れしました。

また、ある日のこと。幣舞橋近くの大型観光施設内で、ガラス越しに川面を眺めながらウロウロしていると和雑貨を取り扱う店の人が、隣のデスクを指して「この女性は海外で資格を取って帰国した方で、今日はお試しで無料ハンドマッサージをしているので、是非どうぞ」と声をかけてくれました。

それならばお願いします、と椅子に座ると優しくハンドマッサージをし始めましたが、どことなくぎこちなく会話も少なく、慣れていないからなのかなと……思っていると、静かに話し出しました。「オーストラリアで学んでいる時に交通事故に合い、気が付いた時は1月半経過していて断片的に記憶が飛んでいた。今年になって帰国したのですが生活のために思い出しながら習ったハンドマッサージを始めたのです」と言うのです。

マッサージが終わり席を立つときに、そっと千円札をデスクに置き、「うまくいくうま」を手渡しました。「この馬はきっとあなたに良いことを運んでくるからね、負けないで頑張ってくださいね!」
翌日、そこを通りかかった時に「バッグに着けて毎日持ち歩くことにしました」と言ってくれました。

そして、またまたある日のこと。ホテル近くの日帰り温泉施設に開始時間を間違えて少し早めに到着してしまいエレベータ前の椅子に座り待っている時に話しかけてくれた老婦人が居ました。
13年前に夫と息子を亡くしそれからは一人で生活していること、漁業加工工場でずっと働いてきたこと、娘や孫もその同じ工場に勤務していると、などを話しだしました。私は「きっとあなたの働き方がよいので信頼されているからこそ、その娘さんもお孫さんも同じ工場で働けるということですね、素敵な働きと生き方をなさった証拠ですね」と話すとぽろぽろ涙をこぼしながら「私はこんな話を人様に話したことはないんですよ、なんであなたに話したのかしらねぇ?」
と、言いました。「うまくいくうま」を取り出して、「これから先もお元気でよい毎日でありますように。」と手渡すと「初めて会った方から手作りの馬をいただき、この先毎日あなたの健康を祈り続けて大切にします」と言って、その後も何度も何度も湯船で涙を流して喜んでくださいました。

そのほかにも楽しい出会いなどで「うまくいくうま」を差し上げた方もいて……釧路の街で「うまくいくうま」はきっと今も皆さんの幸せのために活躍してくれているはず。
ちょっとしたふれあい、出会いの中で、しんみりした会話、深い人生のお話をしてくださった方々のこの先の日々が素敵な毎日でありますように、ホテルで過ごす夜の時間にそっとお祈りをしていました。
夏の暑さしのぎに、と出かけてきた釧路の街滞在ですが、思いがけずに出会った方々と素敵な触れ合いができたことを深く感謝し、ますます釧路の街の良さ、人情の奥深さを知る思いです。
釧路生活ができた2019年の夏は素晴らしい夏になりました。深く深く感謝しつつ私の夏を終わります。

富士山の見える町で暮らす元気な65歳。半日仕事をし、午後はジムで軽く運動。好きなことは絵画を見ることと針仕事。旅先の町で買い求めた布でポーチやバッグを作っています。雨の土曜日は映画を観て、晴れた土曜日には尾根道を3時間ほど歩く。楽しいことが大好きです

この記事をマイページに保存

\この記事をみんなに伝えよう/

ページ先頭へ