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- 独りででも愉しむには読書が一番
5月は共に楽しむ行事が目白押しでした。6月・7月は雨と異常な暑さで出掛ける気にもならず、おかげで独りででも愉しむ時間がたっぷり取れました。私の独りでの愉しみの一番は読書。中でも同じ作家の本を続けて読むのが好きです。
終の棲家の図書室へ…徒歩5分
大雨が降ろうが、酷暑であろうが、エアコンの効いた廊下を歩くこと5分。明るく居心地の良い図書室がそこにあります。
居住者の残した本が無造作に置かれただけの部屋が、居住者有志からなる「図書委員会」の2年間の活動で整理され、新刊書や月刊誌も入り、すっかり生まれ変わったのです。
その図書室で、内舘牧子作「終わった人」「すぐ死ぬんだから」を連続で借りました。
「終わった人」を読んで
老後小説3部作「終わった人」「すぐ死ぬんだから」「今度生まれたら」の内の第1作。映画化もされたベストセラーです。「終わった人」は、「定年って生前葬だな」という強烈な独白で始まります。
14年前の自分自身の定年退職の日の気持ちと重ね合わせてみて、あまりの違いに驚かされました。
出世コースから運悪く外れてしまって定年の日を迎えた東大卒の銀行員田代。退職しても没頭できる趣味もなく気力も湧かない毎日を重ねるだけの正に「終わった人」。
出世と言う言葉さえ考えることなく定年の日を迎えた公務員の私。やりきった感いっぱいに退職し、「これまで十分できなかった家事に明日から没頭できる」と、気力が漲ぎり退屈する日は1日もありませんでした。
都会の会社員はこんな気持ちで定年退職するのかと、一頃流行った「濡れ落ち葉」が脳裏をよぎりました。彼もそうはなるまいとカルチャー教室やジムに通ってみたり、恋をしてみようとしたり……でも満たされることはありません。
そんな彼に活気を取り戻すチャンスが。ベンチャー企業の顧問に請われ就任したのです。「定年後も社会に出て、競争したり張り合ったり、肝を冷やしたり、走り続けたりするのが自分の身の丈に合った暮らし」と張り切りますがしかし……。
「生前葬」以降の生き方全てに妻からは愛想を尽かされ、自分は自分の故郷盛岡で、妻は妻の故郷東京でこそ生かされるのではないかと、妻の申し出「卒婚」を受け入れます。
筆者は後書きに書きました。「若い頃に秀才であろうとなかろうと、美人であろうとなかろうと、一流企業に勤務しようとしまいと、人間の着地点って大差ないのね」と。
「受け入れ、断ち切り、可能性の取捨」
再度私に立ち戻って考えてみます。退職して一番に取りかかったのは、在職中は事務職員に任せっきりだったお金のこと。「退職金」はいつどれ位入るのか、「年金」はどうか。職場で積み立てていた「保険」や「預貯金」はどう切り替えるのが良いのかetc.
在職中は大雑把になっていた家事にゆとりを持って楽しく取り組みつつ、1年がかりで資産を把握し、働かなくなった代わりにそのお金に働いてもらえる方法を自分なりに見出しました。
翌年夫が退職してからは待ち望んでいた海外旅行に。多少なりとも英語は身につけていたので、まずは非英語圏へのツアー。イタリア、スペイン、ポルトガルetc.
英語圏の国々、オーストラリア、ニュージーランドには、ホームステイで長期間滞在して英語を深めるのも良いなあと思っていた矢先、夫の故郷活性化のボランティア活動に関わることになり、ますます暇な日は1日たりともない充実した退職後の暮らしでした。
そんな日々を送っていた6年目、私は突然脳出血に襲われ、一旦全てのことが断ち切られました。けれども、これまでC型慢性肝炎と長く共生した経験からか、「今の自分の受け入れ」「未練の断ち切り」「可能性の取捨」へと考え方の移行はスムーズに進み、ポジティブに退職後14年目を送っています。
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