私の選択「小さな暮らし」で「豊かな人生」を(13)

予想外の、「終の棲家」での日常生活

公開日:2022.10.25

老人ホームには「サークル活動」がどこにでもあることは知っていました。コーラス、社交ダンス、詩吟etc.でも小・中・高校のように委員会活動まであるとは!! 「終の棲家」での私たちの日常生活に、新たに「図書委員会」の活動が組み込まれました。

事の発端は?

これもまた、風呂友から始まって夫婦で友達になった方からのお誘いです。「自治会が図書委員を募集しているんだけど人数が集まらないらしい。僕たち夫婦もやるから一緒にやらない?」

入居してすぐ好奇心から館内探検をしたとき、部屋いっぱいに日差しが降り注ぐ大きな窓と、座り心地の良さそうなソファ、センスの良い置物が、いい雰囲気を醸している図書室は印象的でした。しかも、本がぎっしり。

自宅にいた頃は、2週間に1度は公立図書館に通い、たくさんの単行本や雑誌を借りて読んでいた私たちです。こんな居心地の良さそうな図書室で1日中本を読んで過ごせたら幸せだろうなとワクワクしたことを思い出します。

とはいうものの、老人ホームの図書委員って何をするのだろう? まさか本の貸し出しなどの当番活動をするんじゃないでしょうね。取りあえず、せっかく誘っていただいたのだからと引き受けることにしました。今年(2022年)3月のことでした。

目指すは「図書室活性化」

図書委員会活動に先駆けて、総支配人・自治会長ご参加の下、メンバーの顔合わせが行なわれました。事務局としてのマネージャーを含む総勢9人の図書委員会の発足です。

まず、自治会長から図書室の現況が報告されました。この図書室では、年間500冊前後の書籍が借り出されている一方で、長期間新陳代謝が行なわれておらず、何十年も前からの寄贈本であふれているとのこと。

続いて、「図書委員会」設置の意図が示されました。コロナ禍で外出もままならない中、新刊図書への要望は相当に高いものと推測されるので、「購入する新刊図書の選定」「廃棄図書の選定」を進め、図書室の活性化を担って欲しいと言うものでした。

目を見張るばかりの「シルバーパワー」

4月、第1回図書委員会が開かれました。新刊図書を入れるためには、まず本を減らす必要があります。1975年(昭和50年)より前に発行された本は廃棄しようと決め、1冊1冊奥付を見て発行年を確かめながら、対象となる本を長机に並べて「自由にお持ち帰り下さい」コーナーを作りました。

図書委員会は1か月に1回持つことにして、その時点で残っている本は処分することにしました。それでも、使いやすいように本を分類して整理できるだけのスペースは作れませんでした。

そこで方針転換。1985年(昭和60年)以前の本も同じように「自由にお持ち帰り下さい」コーナーを経て、処分することにしました。これで、元あった本の4割程度が削減されることになるそうです。

図書室に通い詰めて、分析をして下さる方、分類の仕方を提案して下さる方、恐るべき80、90歳代パワーに圧倒されます。「月刊誌を置いて、最新号は図書室内でのみ読めるようにすることも、図書室活性化につながるのではないか」と言う私の意見も取り入れられました。

目を見張るばかりの「シルバーパワー」

こうして、「廃棄本の撤去」「シールを貼っての分類」「図書室リクエスト」「月刊誌購入のための人気投票」が、並行して5月から7月まで、猛烈な勢いで進んでいきました。その動向は逐一、「図書委員会だより」「レジデンスの月報」「自治会だより」等で広く住人に知らされました。

目を見張るばかりの「シルバーパワー」
図書室に入ってすぐの場所には、「月刊誌」「新着本」コーナーを設置して
目を見張るばかりの「シルバーパワー」
部屋の奥には「お持ち帰りコーナー」が、棚には未整理本が横積みに残っているものの分類も進んできて

図書室の整理が進む中で、利用率が昨年度比で7月38%増、8月31%増になっているそうです。誘われるままに始めた図書委員ですが、入居者の方々に役立つ活動に関われることもまた、喜びです。

目を見張るばかりの「シルバーパワー」

 

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harumati

45歳~66歳までC型肝炎と共生。2016年奇蹟とも思える完治から、今度は脳出血に襲われ右半身麻痺の大きな後遺症が残り身体障害者に。同居する息子と夫に家事を任せての暮らしにピリオドを打ち、2021年11月「介護付き有料老人ホーム」に夫と入居。「小さな暮らし」で「豊かな生活」を創り出そうと模索中です。

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