夫婦キャンピングカーの旅。母とのお別れから帰るまで

大分県から東京へ。帰路の途中に出会った母の恩返し

公開日:2019.05.07

念願のキャンピングカーを購入した蒲池さんが、夫婦で日本全国をドライブして巡ります。母親を見送った蒲池さん。帰路につき車を走らせますが、なんと今度は財布がない! トラブルと夫の運転の疲れを癒すため、しばし寄り道することに。

母の死の手続きに追われて

前回の記事はこちら「突然訪れた母の看取り。1300キロを車で駆けつけて

キャンピングカーで瀬戸内海を走る様子

突然訪れた母の死から、悲しむ暇もないほどいろいろな手続きがありました。5日経って、ようやく火葬まで終えましたので、私たちは東京に戻ることにしました。

今は、1月中旬。雪が降ると車では帰れなくなるからです。行きも帰りも夫の好きな運転がストレスにしかならない状態にただただ申し訳なくて……。せめて私にできることは笑顔で飲み物を勧めるくらいでした。夫の体を心配しながらも亡き母への想いで涙があふれそうになると、外の風景を見るふりして、そっと指で拭いました。

岡山県のサービスエリアからトンボ返り

かなり長距離の運転をしたので、岡山のサービスエリアで休憩をすることにしたのですが……。夫は真っ青な顔をして、車内を探し始めました。

「財布がない! かなりのお金が入っていたのに……」

休憩どころか今度はお金の心配だなんて……。

記憶を辿りながら心当たりの場所を一つ一つ確認しているところへ、警察の方から自宅経由で「財布が見つかった」との連絡が入りました。喜んだのも束の間、岡山から広島へ逆戻りです。夫はさらに無言となっていきました。

「まあ、親切な人のお陰で財布が見つかったのはよかったね。現金が戻ることはほとんどない中で、幸運だったよね」と今の状況下で幸せ探しをすることぐらいしかできませんでした。

無事財布を手にして夫が車に戻ってくると、わずかに笑顔が戻っていて、ホッとしました。
 

 

尾道平原温泉・ポッポの湯で癒されて

問題が解決したらドッと疲れが出たので、広島県尾道市にある「ポッポの湯」に浸かってしばし息抜きです。大好きな温泉で少しでも疲れが取れて、気分が切り替わっていることを願うばかりでした。

私より早めに温泉から出た夫はというと、施設内に設置されたペッパーくんに「見ーつけた。何だか疲れているね」と話しかけられてきたのだとか。

「なんでそう思うの?」と夫が質問すると「声の調子や顔の表情から。いつもの元気を100とすると今は2か3ぐらい」とズバリ指摘されたそうです。ロボットとはいえ、夫の気持ちを察してくれたのが嬉しかったようです。ペッパー君の意外な癒しの力に感謝です。
 

姫路城で観光

帰る道すがら撮った写真
帰る道すがら撮った写真

お天気はよいものの、関ヶ原付近は雪の影響を受けるためにやはり早めに移動していなければなりません。それでもしばらくは一般道で地元の眺めを楽しんでいました。特に海から顔を出している小さな島に感動して、「綺麗だな。こんな風景は滅多に見られない。次回ゆっくり見て回りたい」とちょっと機嫌を取り戻した夫です。

姫路城の標識を見つけると、「ちょっと寄ってみるか。一度見てみたかったんだ」。確かお財布をなくして岡山に行く途中も同じことを言っていました。夫が喜ぶならと立ち寄ることにしたのです。

姫路城
姫路城

戦後焼けずに唯一綺麗に残った別名「白鷺城」、後世にも残せるように5年前に改修工事を終えていました。うっとりするような庭園、広大な敷地にそびえ立つ城、建物内はものすごい傾斜の階段で、手すりに捕まらないと落ちそうになるほどです。想像以上の迫力に大満足で、久しぶりにいつもの笑顔が夫に戻っていました。

遠い地の病院まで娘を連れて来てくれたことに対する、母から夫への恩返しとしか思えないことばかりでした。「香寿代のお義母さんのお陰だな」の夫の言葉に母はきっと微笑んでくれているでしょう。

蒲池 香寿代

大分県生まれ。小学校の時に恩師の先生との日記を機に何かしら記録することが習慣になっていました。結婚後は家計簿日記と運動不足解消の体操が日課になっています。元気なうちに念願のキャンピングカーで日本全国を横断するのが夢です。

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