【美和55歳の場合】母の背中が小さく見えた日
10年ぶりに外へ出た息子、再び引きこもりへ。60代夫婦に残された時間と現実
10年間引きこもっていた息子の悟志が、やっと部屋を出てアルバイトを始めた。安堵したのも束の間、わずか一週間で退職。また引きこもりに戻るのかと不安がよぎる中、母として何ができるのか悩みながら、家族で悟志の再出発を信じ見守る日々が続く。
登場人物
智子(私)
60歳。母。パート。
悟志
33歳。息子。高校時代のいじめや就活の失敗などが原因で10年間引きこもっていた。最近やっと引きこもりを脱出し、アルバイトを始めたが、うまくいっていない。
哲郎
61歳。父。会社員。昨年役職定年を迎えたが、70歳まで働く予定。
息子がやっと外に出た日のこと

10年もの間、家に引きこもっていた息子の悟志が、1か月前にやっとアルバイトを始めたんです。正直、私の心はほっとしました。
「このまま老後を迎えても大丈夫かもしれない」と、久しぶりに少しだけ安心できたのを覚えています。
長い間、家族で見守るしかできなかった私にとって、悟志が自分から一歩踏み出したことは本当に大きな出来事でした。
ぎこちない会話、続かない返事

ある夜、食後のデザートを食べながら、私は悟志に「今日は早かったね」と声をかけました。
「なんのアルバイトだっけ?」と聞いても、「なんか…品出し?」と、はっきりしない返事。続けられそうか尋ねても、悟志は黙り込んでしまいます。
私もどう声をかけていいのかわからず、気まずい空気が流れていました。
突然の「辞めた」のひと言

しばらくして、悟志がぽつりと「辞めた」と言いました。
「アルバイトを?辞めたの?」と聞くと、「うん」とうなずくだけ。せっかく面接に受かったのに、もう少し続けてみたら?と声をかけても、「もう、辞めるって言ったから」と言い張ります。

夫の哲郎は「また次見つければいいじゃん」とあっさりしていましたが、私は思わず「えー」と声をあげてしまいました。
“2度目”の引きこもりを前に思うこと

悟志はそのまま席を立ち、「また引きこもろうかな……」とつぶやきながら部屋へ戻っていきました。
私は、また元に戻ってしまうのかという不安と、「母親として私は何ができるのだろう」という自問自答で胸がいっぱいでした。
家族でできることは限られているけれど、私は息子のそばで、もう一度見守る覚悟を決めました。この先、私たち家族はどうなっていくのでしょうか――まだ答えは見つかりません。
(つづく)
10年ぶりに外の世界へ踏み出した息子がわずか一週間で再び引きこもりに……。家族はどう向き合い、どんな選択をするのか――
続きは〈本編〉ショートドラマシリーズ「2度目の引きこもり」全3話で配信中!
気になる方は、ぜひ本編【動画】もご覧ください。
【2度目の引きこもり】キャスト・スタッフ
智子=名越志保
悟志=武田知久
哲郎=大原康裕
監督・脚本=五十嵐浩之(GENSHOW)
ヘアメイク=石松英恵
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