「笑点」新メンバー桂宮治さんがあまりにも適任な理由
2022.01.292022年02月11日
巨匠スティーブン・スピルバーグの手により再映画化
【映画レビュー】「ウエスト・サイド・ストーリー」
女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今月の1本は、50年代のニューヨークを舞台にした名作「ウエスト・サイド・ストーリー」。ほぼオリジナルのままリメイクされ、あの名曲の数々がスクリーンで蘇ります。
「分断」の時代に蘇る 伝説のミュージカル映画「ウエスト・サイド・ストーリー」
1962年のアカデミー賞10部門を受賞したブロードウェイの名作ミュージカルが、巨匠スティーブン・スピルバーグの手により再映画化された。50年代のニューヨーク。移民が多く住むマンハッタンのウエスト・サイドでは、ポーランド系の「ジェッツ」とプエルトリコ系の「シャークス」という若者たちのグループが激しく対立していた。「ジェッツ」の元リーダーのトニーは、更生し、バレンティーナの店で真面目に働いていた。ある日弟分のリフに誘われ出掛けたパーティでマリアと出会い、ひと目で恋に落ちる。だが、マリアは「シャークス」のリーダーの妹だった。二人の恋が引き金となり、二つのグループの軋轢はついに決闘に発展する……というドラマだ。
時代設定から登場人物まで、現代に置き換えられることなく、ほとんどオリジナルのままにリメイクされているが、これはなぜなのか。答えは、見ると一目瞭然だ。同じように貧困に苦しみ、差別にさらされている移民同士にもかかわらず、憎しみ合い、対立し合っている二つのグループの姿は、まさに今、私たちが直面している「分断」そのままだ。70年間、私たちがこの問題に関して一歩も進歩していない、という事実には驚くばかりだが、希望もある。愛する人たちを失って初めて真実に気付く愚かさも人間ならば、愛によって隔たりを乗り越えることができるのも人間だ。マリアの怒りと哀しみに満ちた絶叫は、現代を生きる私たちの心を射抜く。
もちろん、レナード・バーンスタインとスティーブン・ソンドハイムによる名曲の数々が、新しいキャストでスクリーンに蘇るのもうれしい限り。ダンスシーンの躍動感、ヤヌス・カミンスキーの迫力ある映像は興奮度満点で、劇場鑑賞は必須だ。
「ウエスト・サイド・ストーリー」
1950年代のニューヨーク。不良グループ「ジェッツ」の元リーダー、トニーは、マリアと出会って恋に落ちる。が、マリアは敵対する「シャークス」のリーダーの妹だった。
監督/スティーブン・スピルバーグ
出演/アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、
マイク・ファイスト、アリアナ・デボーズ他
製作/2021年、アメリカ
配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン
2月11日(金・祝)より、全国公開
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/westsidestory
今月のもう1本「再会の奈良」
2005年、1990年代に日本に帰国したものの数年間連絡が途絶えている残留邦人の養女・麗華の身を案じて、中国から年老いた養母の陳さんが奈良にやってくる。奈良に住む孫娘のようなシャオザーと元警察官の一雄が、麗華探しに同行することになるが──。中国と日本の歴史を背負った母と娘の絆を背景とする心温まる人間ドラマ。河瀨直美、ジャ・ジャンクー、二人の監督が製作を手掛ける日・中合作映画。
監督・脚本/ポンフェイ
エグゼクティブプロデューサー/河瀨直美、ジャ・ジャンクー
出演/國村隼、ウー・イエンシュー、イン・ズー、
秋山真太郎、永瀬正敏他
製作/2020年、中国、日本
配給/ミモザフィルムズ
シネスイッチ銀座他、全国公開中
https://saikainonara.com/
文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。映画サイト『ファンズボイス』(fansvoice.jp)のチーフコンテンツオフィサーとしても活躍中。
※この記事は2022年3月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。
■もっと知りたい■
- 【映画レビュー】「偶然と想像」
- 【映画レビュー】「ボクたちはみんな大人になれなかった」
- 【映画レビュー】「梅切らぬバカ」
- 【映画レビュー】「TOVE/トーベ」
- 【映画レビュー】「ドライブ・マイ・カー」
※雑誌「ハルメク」は定期購読誌です。書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。