ムーミンの生みの親の、自由で情熱的な生き方とは

【映画レビュー】「TOVE/トーベ」

公開日:2021/10/02

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女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今月の1本は、ムーミンの作者・トーベが、第二次世界大戦下の鬱屈とした生活のなか葛藤や苦しみを抱えながらも、自分の自由を貫いた情熱的な生き様を描いた作品です。

「TOVE/トーベ」
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「TOVE/トーベ」

本作は、世界的に愛されるキャラクター、ムーミンの生みの親であるフィンランドの作家トーベ・ヤンソンの若き日を描いた伝記映画である。

第二次世界大戦下で鬱屈とした生活を送っていた若き画家のトーベは、戦後、実家を出て一人でアトリエを借り、絵画の制作に打ち込む。有名な彫刻家である父、女性であることが壁となる保守的な美術界。さまざまなストレスを抱える中、自らを慰めるために描いたのがムーミントロール(トロールとは北欧の伝承に登場するある種の妖精のこと)の物語だった。

1914年、彫刻家の父と商業デザイナーの母との間に生まれたトーベは、子どもの頃から絵を描き始め、15歳ですでに政治風刺の雑誌に挿絵を描いていたが、その後ヘルシンキの芸術大学で学び、画家として活動していた。

映画では閉塞感のある時代の中で、いかに自分らしく生きたかが綴られる。タバコを吸い、既婚者とも自由に恋愛を楽しんだが、とりわけ女性舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラーとの情熱的な関係は創作にも大きな影響を与えた。そして、その後出会うグラフィックデザイナーのトゥーリッキは生涯のパートナーとなる。

ムーミンの誕生や創作の過程は、さりげなく描かれるが、トーベの生き様を見れば、この愛らしいキャラクターの物語がこの作家の魂を反映していたことがわかるだろう。ムーミンはときに涙し、スナフキンはこう語る。「大切なのは、自分のしたいことがなにかを、わかってるってことだよ」

1世紀以上も前に生まれたアーティストは常に葛藤しながら、自分の自由を貫いた。その生き様は私たちにたくさんのヒントと、勇気を与えてくれる。


監督/ザイダ・バリルート
出演/アルマ・ポウスティ、クリスタ・コソネン、
シャンティ・ローニー、ヨアンナ・ハールッティ、
ロバート・エンケル他
製作/2020年、フィンランド・スウェーデン 
配給/クロックワークス

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©bathysphere‐To Be Continued‐Ascent film ‐Chipangu‐Frakas Productions‐Pandora Film Produktion‐Arte France Cinéma

第二次世界大戦終戦後もフィリピン・ルバング島のジャングルに潜伏し、その後29年を経て生還した旧日本兵・小野田寛郎の壮絶な日々を史実を元に描く。上司との関係から生まれた戦争哲学、仲間たちとの連帯や離別などを丁寧に描くことにより、生きるとはなにかという大きな命題に挑んだ野心作だ。小野田役は青年期を遠藤雄弥、成年期を津田寛治が演じている。監督はフランスの気鋭アルチュール・アラリ。


監督・脚本/アルチュール・アラリ
出演/遠藤雄弥、津田寛治、仲野太賀、嶋田久作、イッセー尾形他
製作/2021年、フランス・日本・ドイツ・
ベルギー・イタリア
配給/エレファントハウス 10月8日(金)より、
TOHOシネマズ 日比谷他、全国公開
 

文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。映画サイト『ファンズボイス』(fansvoice.jp)のチーフコンテンツオフィサーとしても活躍中。

※この記事は2021年10月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。

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