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- 【映画レビュー】人生と向き合う「スーパーノヴァ」
女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。おすすめの1本は、長年連れ添った大切なパートナーの迫り来る死を前に、当たり前だと思っていた未来が失われたとき、人は人生とどう向き合えばいいのか考えさせられる作品です。
「スーパーノヴァ」
作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)とピアニストのサム(コリン・ファース)は、20年間連れ添ったカップルだが、タスカーが病に侵され、その記憶力が薄れ、日常生活に支障を来し始めたことをきっかけに、二人で旅に出る。
キャンピングカーでイギリスの湖水地方の思い出の地や、サムの姉夫婦が暮らす実家を訪ねる。最終目的地は、サムのピアノの演奏会だ。それをタスカーは復帰と呼ぶが、サムは最後の演奏会にするつもりだった。
日常から離れた二人きりの旅は、長所も短所も知り尽くし、馴れ合った二人の歴史を感じさせる。一緒に人生を歩いてきた二人は、今、まったく逆の立場に立たされている。愛する人を残していく絶望を乗り越えようとする者、また、一人残されることへの不安を恐れて震える者。
まだ残っていると思っていた未来が失われたとき、人はどうやって人生に向き合えばいいのか。彼らの真摯な葛藤は、胸に大きな波紋を投げかける。純愛とは、青春時代の恋愛に使われがちな言葉だが、長く連れ添い、育んだ純度の高い愛は、なによりも気高く美しいことを知る。
本作の主人公は男性同士だが、これは性別や婚姻関係にかかわらず、長きにわたって大切な誰かと絆を持つことができた人なら誰でも分かち合える感情ではないだろうか。
「スーパーノヴァ」とは、日本語では超新星と訳され、星の進化の最後に起こる爆発を意味するのだという。誰にでも人生の終末は訪れるが、その最後の煌めきに、人は何を託すのか。
本作は、アカデミー賞俳優コリン・ファースと米国の名バイプレイヤー、スタンリー・トゥッチの共演でも注目されるが、二人は実生活でも親友だという。その親密さと温かみがスクリーンからもにじみ出ている。
監督・脚本/ハリー・マックイーン
出演/コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ他
製作/2020年、イギリス
配給/ギャガ
TOHO シネマズシャンテ他、全国順次公開中
今月のもう1本「ココ・シャネル 時代と闘った女」
現代的な女性のファッションスタイルに大きな影響を与えた20世紀最大のデザイナー、ココ・シャネル。保守的な時代に実業家として成功した革新的な生き方でも、今なお注目される存在だ。
本作は、その波乱の生涯の中でも謎に満ちた、ナチスドイツによる占領から解放された1944年にパリを離れてからファッション界に復活する57年までの、十数年に迫るドキュメンタリーである。ココ・シャネル没後50周年記念作品。
監督・脚本/ジャン・ロリターノ
出演/ココ・シャネル、フランソワーズ・サガン他
製作/2019年、フランス
配給/オンリー・ハーツ
7月23日(金・祝)より、Bunkamuraル・シネマ他、全国順次公開
文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。映画サイト『ファンズボイス』(fansvoice.jp)のチーフコンテンツオフィサーとしても活躍中。
※この記事は2021年8月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。
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