「安楽死」を望む母とその家族の選択

「ブラックバード 家族が家族であるうちに」レビュー

公開日:2021/06/23

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女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今月の1本は、重病に侵され安楽死を願うリリーだが、最期を前に娘たちが反対、それから家族の隠していた秘密が次々と明らかに――。「死」とどう向き合うか考えさせられる作品です。

「ブラックバード 家族が家族であるうちに」
© 2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED.

「ブラックバード 家族が家族であるうちに」

医療の高度化が進んだ社会において、「安楽死」の問題はますます身近になっている。「ブラックバード 家族が家族であるうちに」は、重病に侵された初老の女性リリー(スーザン・サランドン)が、医師である夫(サム・ニール)の助けを借りて安楽死を決意。最期の時間を愛する人たちと分かち合うために、二人の娘とその家族、親友とともに過ごす週末を描いたヒューマン・ドラマだ。

体の自由がきかなくなり始めたリリーは、自分で最後の手を下せるうちに実行したいという。まだ、食事も会話もほぼ通常通りできるだけに、そんなリリーの決断を受け入れられない者もいる。しかも、「安楽死」は少なくともこの物語の舞台となっているアメリカの州では合法ですらないのだ。

人間にとって「尊厳」は大きな意味があることは確かだろう。それまでのように尊厳が維持されないまま、ただ生命を維持するのなら死を選びたいという気持ちは、理解できなくもない。

けれど、「死にたい」と思うことと「自ら死を選ぶ」ことには大きな違いがある。「安楽死」や「尊厳死」に対しては日本でもまだまだ議論されるべき問題だが、リリーと彼女を取り巻く人々のそれぞれの意見は、大いに考えさせられるものだ。

また、「安楽死」の議論だけにとどまらないのが本作の魅力でもある。時に激しい口論となる会話の中からは、それぞれの人生が垣間見られる。誰もが秘密や葛藤を抱えて生きているのだ。

主演のスーザン・サランドン、長女役のケイト・ウィンスレットという二大オスカー女優に、次女役には若手実力派ミア・ワシコウスカも加わったことで繊細なテーマが深みのあるアンサンブル劇になった。

監督/ロジャー・ミッシェル
出演/スーザン・サランドン、ケイト・ウィンスレット、
ミア・ワシコウスカ、サム・ニール他
製作/2019年、アメリカ、イギリス
配給/プレシディオ、彩プロ
6月11日(金)より、TOHOシネマズシャンテ他、全国公開

今月のもう1本「Arc アーク」

今月のもう1本「Arc アーク」
© 2021映画『Arc』製作委員会

生まれたばかりの息子と別れ、放浪生活を送っていたリナ(芳根京子)は、遺体を生きていたままの姿で保存できる施術の仕事に携わる。やがて、その技術を発展させた「不老不死」の施術を受けた世界初の女性となるが──。

世界的作家ケン・リュウの短編小説を「蜜蜂と遠雷」(2019年)の石川慶が映画化。サイエンスフィクションでありながら、愛、命、家族という普遍的なテーマを掘り下げるエモーショナルな快作。

監督/石川慶 
原作/ケン・リュウ『円弧(アーク)』
出演/芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、
倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫他
製作/2021年、日本
配給/ワーナー・ブラザース映画
6月25日(金)より、全国公開


文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。映画サイト『ファンズボイス』(fansvoice.jp)のチーフコンテンツオフィサーとしても活躍中。

※この記事は2021年7月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。

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