病・老い・生き方と向き合う女性たちの記録
人生観が変わるかも?50代女性が“今こそ観たい”ドキュメンタリー映画5選
人生観が変わるかも?50代女性が“今こそ観たい”ドキュメンタリー映画5選
公開日:2025年12月27日
「アイ・アム セリーヌ・ディオン ~病との戦いの中で~」
世界の歌姫がさらけ出した真実の記録
映画「タイタニック」の主題歌で知られ、圧倒的な歌唱力で五度のグラミー賞に輝いた歌姫セリーヌ。2024年夏のパリオリンピック開会式、エッフェル塔の特設ステージで歌い上げた「愛の讃歌」に、どれほどの人々が心を揺さぶられたことでしょうか?
進行性の自己免疫系神経疾患「スティッフパーソン症候群」を公表した彼女が、病と向き合う舞台裏を初めて明かしたのが本作。華やかなステージから離れ、発作に苦しむ姿や、思うように歌えない葛藤も、日常を一変させた病と向き合う彼女の「今」を、カメラはありのままに映し出します。
それでもセリーヌは、再びファンの前で歌うことを決して諦めない。その不屈の精神が、大いに胸を打ちます。
音楽への深い愛、母としての強さ、そして一人の人間としての弱さ。すべてを受け入れ、前を向く彼女の生き様が、観る者の胸に深く刻まれます。
「アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー」

年齢を理由にしない生き方がまぶしい
2024年に102歳で天寿を全うした伝説のファッショニスタ、アイリス・アプフェル。本作は、94歳(撮影時)にして世界のファッション界から愛され続けた彼女の日常を追ったドキュメンタリーです。
ホワイトハウスの内装を手掛けるなど、実業家としても一流のキャリアを持つ彼女。その言葉には、人生を愉しむための真理が詰まっていて、哲学は驚くほどシンプルで自由。
「ルールなんてない。あっても破るだけ」
そう語る彼女の生き方は、高級メゾンの服と蚤の市の小物を大胆にミックスする独自のスタイルにも表れ、流行に左右されない個性の確立を私たちに提示してくれます。
どこまでも奔放に見える彼女ですが、その裏にあるのは高い知性と尽きない好奇心、そして長年連れ添った夫への深い愛情です。
年齢を理由に守りに入るのではなく、常に新しい自分を更新し続けるアイリスさん。たくましくもチャーミングなその姿は、観る者に「これからの自分」に期待する気持ちを呼び起こしてくれるはず。鮮烈なインスピレーションに満ちた1作です。
DVD¥5170(税込)/発売・販売元 KADOKAWA
「帆花」

1人の少女と家族が紡ぐ“命”の映画
生後まもなく「脳死に近い状態」と宣告を受けた帆花さんと、その家族の姿を3年間にわたって追ったドキュメンタリー。いわゆる闘病や介護を強調する作品ではなく、家族として過ごす日常が丁寧に綴られています。
人工呼吸器をつけた帆花さんのそばで、母の理佐さんは毎日やさしく話しかけ、本を読み聞かせ、わずかな表情の変化に心を寄せます。父の光太郎さんと共に注がれる愛情に満ちた時間は、かけがえのない日々そのものです。

「第三者として距離を取るのではなく、帆花ちゃんのおじさんや隣人のような立場で、普段通りの日常を切り取りたかった」と語る國友勇吾監督。その言葉通り、本作は一人の少女の成長記録であると同時に、家族のあり方や命へのまなざしを静かに問いかけてきます。
「この子がいてくれたから、今の私たちがある」と語るご両親。命の長さではなく、互いを慈しみ抜いた日々の輝きが、観る者の心に深い慈愛と癒やしを届けてくれる作品です。
「スープとイデオロギー」
母が初めて語る凄絶な歴史とスープがつなぐ家族愛
両親や北朝鮮に渡った兄たちを追った「ディア・ピョンヤン」、姪の成長を記録した「愛しきソナ」など、在日コリアン家族のリアルな日常を描いてきたヤン・ヨンヒ監督。
自身の母が経験してきた壮絶な過去と、そこに重なる深い家族愛や祈りを見つめた本作は、まさに監督の集大成とも言える作品です。
結婚の挨拶に来るという娘の相手にふるまうため、「参鶏湯(サムゲタン)」を作りながら台所に立つ母。そこで突然、母は娘に、韓国現代史の中で長くタブー視されてきた「済州島四・三事件」での凄絶な体験を語り始めます。
やがて認知症が進んでいく母の言葉を通して、監督は歴史に翻弄された若き日の母の人生へと想いを重ねていきます。
かつては猛反対していた「日本人の婿」を温かく迎え入れる母。そして、その過去も含めて母を慈しむ夫・荒井カオル、監督自身を含めた3人が築く新しい家族のかたちが実に素敵。
国籍や思想、価値観の違いを超え、笑顔で食卓を囲む姿から伝わってくるのは、歴史の荒波を越えてきた母の強さと気高さ、そしてそれを受け継ぐ娘のまなざし。心深く震わせられる、珠玉の記録映画です。
「カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~」

想像力こそが、人生を彩る魔法!
「魔女の宅急便」で知られる児童文学作家・角野栄子の日常を、4年にわたって密着したドキュメンタリー。NHK番組をもとに、追加撮影を加えて再編集された本作は、観ているだけでウキウキと楽しい気分になれる1作です。
カラフルなファッションと個性的な眼鏡がトレードマークの角野さん。鎌倉の自宅では、自ら選んだ「いちご色」の壁や本棚に囲まれ、こだわりの詰まった空間で暮らしています。遊び心あふれるお洒落も、毎日の散歩も欠かしません。
「自分の好き」を徹底的に追求し、心地よい環境を自ら作り上げる姿からは、強い意志と豊かな想像力こそが、彼女の若さの秘訣に違いないと感じさせられます。
88歳(撮影時)にして、お洒落も仕事も全力で楽しむ角野さん。どんなに小さな出来事も物語へと変えてしまう軽やかな生き方は、老いに不安を抱いている人たちに、パッと明るい光を灯してくれるはず。「年齢を重ねることは、こんなにも自由で楽しいのだ」と教えてくれる作品です。
DVD ¥4400(税込)/発売・販売元 KADOKAWA
年末年始のひとときに、これからの自分を見つめ直す映画を。
忙しい毎日の合間に、“今の自分の人生と向き合う一本”を選ぶきっかけになれば幸いです。




