瀬戸内寂聴の人生相談1「家にいる夫に息が詰まる」
2024.07.142022年11月09日
人生の先輩たちの名言に学ぶ・1
瀬戸内寂聴さん「死んだら、怖さも懐かしさも無に…」
人生の先輩たちの名言から生き方のヒントを学ぶ連載企画。今回は、2021年11月9日に99歳で生涯を閉じた瀬戸内寂聴さんの名言を紹介します。「いざ死んだら、怖さも懐かしさも無になる」と語った96歳の寂聴さん(2018年当時)の死生観とは?
「死ぬ日」はまだまだ先のような気がしているんです。
88歳から病気がちになり、90代になってがん手術を乗り越えた、瀬戸内寂聴さん。さらに92歳のときに、腰椎の圧迫骨折や胆のうがんで療養生活を余儀なくされます。
復帰して初めに書いた文芸誌のタイトルは「その日まで」だったそう。「その日」というのは「死ぬ日」のこと。
死を覚悟しながらも、96歳になった寂聴さんは「最近は、何だか『死ぬ日』はまだまだ先のような気がしているんです」、「近頃は若返っているような気がしますね」と飄々(ひょうひょう)と笑います。
その死生観には「家族はそろって短命で、たった一人の姉も、66歳でがんで亡くなっています」と早くに経験したご家族の死とともに、51歳で出家した後に経験した「娘が嫁いだ先のお姑さん」の死が影響しているそうです。
死ぬのは怖くないし、私は何だかケロッとしていますね。
戦時中に中国へ渡り、終戦を北京で迎えたという寂聴さん。その後、故郷の徳島に引き揚げた際に、知り合いに告げられて初めてお母さんが亡くなったことを知ります。
「あんなに私のことを好きだった母が、そのとき何も知らせてこなかった。夢にも出てこなかった。だから死んだら、会いたいとか懐かしいとかいう感じはなくなるんじゃないかしら」
さらに、「娘が嫁いだ先のお姑さん」ががんで亡くなる際に発した、最期のひと言により「無」を感じたと言います。
「いざ死んだら、怖さも懐かしさも無になると私は思います。もちろん、まだ一度も死んでいないから、本当のところはわかりませんが、死んだら無という気がしますね」
寝たきり生活、がん手術を経験してもなお、死ぬのは怖くないと語っていた、瀬戸内寂聴さん。亡くなった今「本当のところ」を聞く術はありませんが、寂聴さんの生前の言葉に学び、これからを前向きに生きるヒントにしたいものですね。
瀬戸内寂聴さんのプロフィール
せとうち・じゃくちょう 1922(大正11)年、徳島県生まれ。東京女子大学卒業。63年『夏の終り』で女流文学賞受賞。73年に平泉中尊寺で得度、法名寂聴となる。92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞受賞。98年『源氏物語』現代語訳を完訳。2006年、文化勲章受章。他に『死に支度』『わかれ』『求愛』『いのち』、句集『ひとり』など著書多数。
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