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僧侶・前田宥全さん「仏さまはどなたも救ってくれる」

2020年12月30日

あなたのお話しお聴きします・3

僧侶・前田宥全さん「仏さまはどなたも救ってくれる」

死を考えるほど苦しい人、悲しみを背負い続ける人、その心をどうすれば解放できるのでしょうか。自死・自殺問題に取り組み「安心して悩める社会」を標榜する僧侶の前田宥全さんが語ります。心が軽くなる仏教の言葉も教えてくれます。

「自死」というべきか「自殺」というべきか

「自殺」を「自死」に言い換えよう、という流れがあるのをご存じでしょうか? 「殺という字には“悪”の意味合いがあり、社会的な偏見が強く、死者の尊厳も守れない」といった理由から、ここ数年、自殺に代わって自死という言葉が使われるようになってきたのです。

自死には、一生懸命生きようとしたけれど、無力や絶望の果てに亡くなった、いわゆる“社会的に追い込まれた死”というニュアンスがあるといわれています。私は、自殺で親を亡くした遺児たちの手記集『自殺って言えなかった。』(サンマーク出版、2002年刊)の中で、彼らが「自死遺族」という表現を使ったのがきっかけだったように記憶しています。

こうした流れの中で、2013年3月には島根県が全国の自治体で初めて、自殺対策総合計画の名称を「自死対策総合計画」に変更し、他の公文書も原則として自死に統一することを決めました。これは自死遺族の団体からの強い要望に応えたもので、7月には鳥取県でも同様の決定がなされています。

自死という言葉を使うことで、世の中の偏見をなくしたいということなのでしょうが、私はただ言葉を言い換えるだけでは、問題の本質は何も変わらないのではないかという気がしています。もちろん私も、自殺という言葉に傷つき、抵抗感をもたれるご遺族に配慮しなければならないのは間違いない、と思っています。

でも一方で、ご遺族の中には、自死と言い換えることに抵抗感をもたれている方がいるのも事実なのです。「私の夫は会社に殺された。自死なんてきれいな言葉は使わないでくれ」。そう主張されるご遺族もいらっしゃいます。ですから、自殺というべきか、自死というべきか、あるいはもっと違う言い方はないのか――そこからみんなで考え、議論するべきだと私は思うのですが、いかがでしょうか?

仏さまはどなたでも救ってくださいます

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