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公開日:2025年06月19日
一人暮らしの日常をユーモラスに綴る
等身大の女性を主人公にした小説や、一人暮らしの日常をユーモラスに綴ったエッセーなど、これまで世に送り出した著作は140冊を超える群ようこさん。2024年にデビュー40年で古希(70歳)を迎えた群さんの現在地とは?
むれ・ようこ
1954(昭和29)年東京生まれ。日本大学藝術学部卒業。広告会社などを経て、78年「本の雑誌社」入社。84年にエッセー『午前零時の玄米パン』で作家デビューし、専業作家に。小説に『無印結婚物語』など〈無印〉シリーズ、『散歩するネコ れんげ荘物語』などの〈れんげ荘〉シリーズの他、『かもめ食堂』『また明日』、エッセーに『ゆるい生活』『老いてお茶を習う』など著書多数。
70歳になった群ようこさんのエッセーのタイトルは、『六十路通過道中(むそじつうかどうちゅう)』。
たまたま入った百均の店舗で、セルフレジの操作方法がわからず困惑したり、銀行のATMに行くたびに、女性の警察関係者から声をかけられ、“他人から見たら、十分高齢者であり、特殊詐欺にひっかかりそうな、あぶないおばちゃん、おばあちゃんなのかもしれない”と心がザワついたり……。「おばさんからおばあさんへ」と移行していく日々を、飾らぬ筆致でユーモアたっぷりに描いています。
「私は若い頃から、おばさんよりも、早くおばあさんになりたかったんです。おばさんって何だか中途半端じゃないですか。私の一番あこがれている人は、ずっと『いじわるばあさん』(編集部注・漫画家、長谷川町子の代表作の一つ。際どいいたずらを仕掛けるが、どこか憎めない伊知割石‐いじわる・いし‐が主人公)なんです。自分のやりたいことがはっきりしていて、世の中や人目を気にせず、意地悪だけど動物にはやさしい──そういうところがいいなと思って。私は人に意地悪はしないですけど、70歳を過ぎたら堂々とおばあさんでいこうと思っています」
あこがれのおばあさんに早くなりたい、という思いから、これまで一度も白髪染めをしてこなかったという群さん。最新エッセーでは、年齢を重ねた今の自分に似合うヘアスタイルを求めて、美容院探しに奔走するエピソードが綴られています。
「長年同じ髪型で、もうこのままでいいやと思っている人も多いかもしれませんが、年を取れば、髪質も顔も変わるわけだから、ずっと似合う髪型なんてあるわけないんですよね。私はいくつになっても、髪型を変えて楽しみたいと思うんです。でも、前に通っていた店の美容師さんは『ヘアスタイルを変えたい』とお願いしても、『うーん、今のスタイルが似合ってますよ』と言って、冒険しようとしない。そういう店の方がラクで安心できるという人もいるでしょうけど、私とはちょっと考え方が違うなと思って、別の店を探すことにしました」
群さんはインターネットで近隣の美容院を調べ、「最寄り駅から近い」「女性が一人でやっている」などの条件で候補を3つに絞り込むと、実際に店の前まで行き雰囲気を見て、一つのお店に予約を入れたそう。
「60代半ばくらいの、個性的な金髪の女性オーナーが一人でやっている店で、“この人だったら面白い提案をしてくれそう”と思ったんです。別に突然モヒカンにされるわけじゃないし、嫌だったらやめればいいわけだから、とにかく一回行ってみようと、イチかバチかでしたね。
鏡の前に座ると、彼女はボブスタイルの私を見て、『ボブにして若く見える人もいるけど、あなたは違う。ボブはダメ』ときっぱり。癖を生かしたショートスタイルにしてくれて、丁寧で腕も確かなので通うことにしました。『もし白髪をカラーリングするなら、あなたには一般的な茶色は似合わないから、いっそブルーやピンクの方がいいわね』とか、いろいろアドバイスしてくれるので楽しいですね」
2020年に愛猫を見送った群さんは、27年間住んだ一人暮らしには大き過ぎる部屋からの引っ越しを決意。大々的に物を処分して、住空間を3分の2に縮小しましたが、「まだまだ物があって、毎日何かしら捨てている」と話します。
「引っ越しのときに段ボール130箱分を処分して、その後も少しずつ捨てているんですけど、引っ越しから丸3年たった今、“まだまだあるな”と。例えば、今日はこの引き出しを整理しようと思って開けると、湧いて出てくるみたいに、捨てる物が出るわ出るわ。ほんとに困りますよね。私は書評の仕事もしていますから、どうしても本が増えてしまって、用事が済むと箱に入れておき、バザーに出しています。昨日も10冊くらい箱に入れ、洋服も2枚処分しました。
毎年なんとなく体型や雰囲気が変化していて、去年は似合っていた服が、今年着るとちょっと違うってことがあるんですね。前は“またいつか着られるかも”と置いておいたんですが、最近は“今年似合わない服はもういらない”と諦めることにしました。すっきり暮らすには、まだもうちょっとがんばらないとだめですね」
群さんは2020年10月に愛猫のしぃちゃんを見送るまで、22年7か月もの間ともに暮らしてきました。「ずっと猫ファーストな生活で、朝早く猫に起こされ、仕事も猫に『もうやめろ』と言われて切り上げ、寝る時間もお風呂に入る時間も全部決められていたので、気付けば規則正しい生活に。それは今も変わりません」
「体の状態を数値で判断されることに抵抗があり健康診断は受けていない」と群さん。その代わり健康管理のために16年間続けているのが、週1回の漢方薬局通いです。「漢方は予防医学なので、体の声を聞いて早めに対処することが大切。先生に『疲れを感じてから休むのでは遅い』と言われ、疲れる前に休むようにしています」
携帯電話すら持ったことのなかった群さんがスマホを購入したのは2019年。きっかけは、愛猫を病院に連れていく際、タクシーを呼ぶのにスマホが便利と友人に説得されたことでした。愛猫を見送った後も「生存確認のために持っておけ、と言われていますが、10分しか使わない日もあり、ほぼ使っていないに等しいですね」
群ようこ著/1540円/集英社刊
穏やかな一人暮らしを送る群さんが、本格的な高齢期である古希を目前にした日々の楽しみや発見、戸惑い、悩みを率直に綴ったエッセー集。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、撮影=中川まり子
※この記事は、雑誌「ハルメク」2024年10月号を再編集しています。
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