山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#1
2024.10.312023年03月02日
山本ふみこさんが選んだエッセーの紹介とQ&A動画
山本ふみこさんエッセー通信講座第5期参加者の作品
随筆家の山本ふみこさんが講師を務めるハルメクのエッセー通信講座。エッセーの書き方を半年間で学んでいきます。今回は、参加者が取り組んだ「100字エッセー」の魅力と参加者に好評の「おすすめの一冊」を山本さんが解説します。
山本ふみこさんが選んだ「100字エッセー」
参加者が書いた「100字エッセー」を1人1作ずつ紹介。さらに、山本ふみこさんの100字エッセーもお読みいただけます。クリックして、ぜひご覧ください。
「100字エッセー」
山本ふみこさんのエッセー通信講座 第5期参加者のみなさんの作品
人気随筆家の山本ふみこさんから半年間でエッセーの書き方を学ぶ通信制エッセー講座には、全国各地から応募した33名が参加しています。毎月1本書きあげたエッセーに、山本さんのアドバイスや添削を受けて、実践的に学んでいます。
参加者一人ひとりが直面する悩みや疑問は、実は、エッセーを書く人にとって共通する学びの宝庫です。ハルメクでは、月1回山本さんが参加者の質問に回答する動画を制作。現在の参加者が生き生きと学べるように、また、どなたでもご覧になって学びを生かせるように公開しています。
今回の動画では「100字エッセー」を書くことの面白さについて解説しています。
「100字で書くこと」と「読者に親切な伝え方」
山本ふみこさん:今回のテーマ「100字5本エッセー」は、いつものテーマ以上にワクワクしてみなさんの作品を読みました。
100字以内の文章はとても短いので、なんだか内緒話を聞くような感覚があります。「わかる!」とか「え! 何それ!」とか呟きながら読んで、皆さんとの距離を近くに感じて気持ちが弾みました。
100字の中に思いを込め、情景も描かなくてはならないという忙しい執筆だったと思います。けれど、その分一作一作の濃縮度が高いように感じます。
参加者の方の中には「日記を100字で書くことにしました」なんていう声もありました。
限られた文字数の中では余計なことは省かなくてはならない。
そうすると恨み言もなし!文句もなし!愚痴もなし! 後から読み返すと分かりやすくて、日記を100字以内で書くことにした方いわく、「さわやかな自分がいることに気づく」のだそうです。
それってとても大切なことですよね。未来の自分がこの「100字日記」を読み返した時、きっと過去の自分に励まされるのではないでしょうか。
私は日記を書かないのですが「100字日記」の考え方、私はとてもいいなぁと思います。
続いて、みなさんが文章の中で使いがちな2つの言葉についてお伝えしたいことがあります。
100字エッセーに限った話ではないのですが、「~など」を文章の中で多用しがちです。
例えば、果物の話を書くとして、みかん以外に並べて書くものがないのに「みかんなど」としては、「ほかに何があるのだろう」と読者が気になってしまいます。
この「など」を使うときは「みかんやりんごなど~」と少なくとも2つ以上の言葉を並べてください。
「~くらい」の使い方も気を付けていただきたいですね。
例えば、思い出話を書く際に「10年くらい前」としたとき、この「くらい」が入ることによって読者は曖昧な印象を受けてしまいます。
エッセーでははっきりと「10年前のことです」と言い切ってしまっていいです。
細かい情報は省いて書いた方がまとまりやすく、読者にも伝わる文章になります。
「など」「くらい」の使い方をはじめ、曖昧な表現を使うときは、読者にとって親切な書き方は何かを考えてみるといいですね。
山本さんがおすすめしたい1冊をご紹介
山本ふみこさん:通信第5期3回目でおすすめの1冊をご紹介しました。皆さんから感想をいただいて嬉しかったので、今回も1冊お持ちしました。ぜひ、たくさんの方に読んでいただきたいです。
『空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集―』寮美千子著(新潮文庫)
著者の寮美千子(りょう・みちこ)さんは「ハルメク」でも連載をされていたご縁の深い方です。
まだ子どもと言ってもいい年齢の人たちが更生するための「社会性涵養(かんよう)プログラム」というものがあります。
涵養(かんよう)とは、ゆっくり静かに染み込むこと。急ぐのではなく、ゆっくりとだんだんに理解していく、理解しようとすることを言います。
著者の寮さんは、奈良少年刑務所で詩と童話の授業を受け持たれます。この本では、実際の授業で書かれた詩が綴られており、純粋で深みのある詩の数々に読むたびに違う感想が生まれます。
言葉に命を与えるということについて改めて考えさせられる、そんな作品です。
随筆家・山本ふみこさんのプロフィール
1958(昭和33)年生まれ。出版社勤務を経て随筆家に。ハルメクでは連載「だから、好きな先輩」やエッセー講座(会場開催と通信制)の講師でおなじみ。著書に『朝ごはんからはじまる』『まないた手帖』(ともに毎日新聞社刊)『おとな時間の、つくりかた』(PHP文庫刊)『暮らしと台所の歳時記 旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)『こぎれい、こざっぱり』『台所から子どもたちへ』(ともにオレンジページ刊)『家のしごと』(ミシマ社刊)ほか多数。公式ブログは http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
2023年3月から第6期の講座が始まります(第6期までの募集は終了しました)。次回第7期の参加者の募集は、2023年6月を予定しています。詳しくは雑誌「ハルメク」2023年7月号の誌上とハルメク365イベント予約サイト(6月更新予定)のページをご覧ください。