「種種雑多な世界」水木うららさん
2024.11.302023年02月02日
通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第5期第3回
エッセー作品「命と寿命」古河順子さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。古河順子さんの作品「命と寿命」と青木さんの講評です。
命と寿命
最近、何かと老いを感じることが多くなりました。
まずは「ねむけ」。
家にいると昼食後にたまらなくねむくなり午睡は欠かせません。
あまりおなかがすかなくなりました。
空腹感がないと料理する気がおこりません。
朝食はほぼ同じ献立ですが、うっかり材料を切らしていると、バナナ、ヨーグルト、コーヒーだけなんてことになります。
耳が少し遠くなったと感じます。物覚えが悪くなりました。
行事、約束事などを手帳やカレンダーに書き込んでおかないと、すぽっと忘れていることがあります。
又、電車で席をゆずられることが多くなりました。
もう立派な後期高齢者なのに、あまり自覚がなくて「どうぞ」と席をゆずられるのが申し訳なく、なるべく入口のドア近くに立つのですが、それでもわざわざ立ち上がって席をゆずりに来て下さる方もあります。
しゃんと立っているつもりだけど、どう見ても年齢相応の年寄りにみえているのだろうなと自覚させられます。
10月に高校の同期会と大学の女子会がありました。どちらも3年振りです。
その間に、鬼籍に入った友も数人。
認知症が始まり1人で行動できなくなり夫に連れてきてもらった人、娘2人につきそわれた車椅子の人。
話をしていると昔のままの変わらない友だちでしたが、それだけに老い込んだ姿にはショックを受けました。
親が老いていくのも哀しかったけれど、これはまあ仕方ないという気持ちでした。
しかし、共に学び共に青春時代を過ごした友の老いた姿を見るのが、こんなに淋しく切ないものとは……。
自分も同じ年齢です。今はひとりで歩けてひとりで食べられていますが、それがいつ終わりになるか分かりません。
日本人の平均寿命は伸びたけれど、高齢期(老齢期)の時間がながくなっただけで、救命治療、延命治療技術が進歩したおかげで、昔なら終わっていた命がオワリにならないで生かされているだけの人も入れての平均寿命ということです。
今、女性の平均寿命は87才なので私はあと4年です。
その間にも、病に侵されるかもしれません。認知症になる可能性も大です。
子供達に迷惑をかけることになるかもしれません。
しかし考えても仕方のないこと。
できることならば、命尽きるまで元気で生きて「ありがとう。ではさようなら」と消えたいものです。
青木奈緖さんからひとこと
年齢を重ねた著者の心境がリアルに、けれど、あまり悲観的にならずに飄々と描かれています。私はほとんど手を入れておらず、すらすら読める心地よいリズムは著者の持ち味です。「文は人なり」ですね。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間。
2023年3月からは、第6期がスタートします(受講募集期間は終了しています)。5月からは、青木先生が選んだ作品と解説動画をハルメク365でお楽しみいただけます(毎月25日更新予定)。
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