「終活をしない」という選択:新しい終活のかたち
2024.11.112023年11月01日
あなたの終活、間違ってます!6・終活の根幹
後悔のないエンディングを迎えるための原動力とは?
終活コーディネーター・吉原友美さんが、新しい視点で終活を見つめ直す連載。今回は、吉原さん自身が「終活」と向き合うきっかけになった体験をベースに、納得のエンディングを迎えるためのヒントを探ります。終活をより良いものにするための原動力とは?
吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール
東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。
自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計1万6000人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。
「終活は、今の生き方を見つめ直すこと」と伝え続けて
「あなたの終活、間違ってます!」これまでの連載では、お片付けや葬儀、お墓選びなどについてのノウハウを中心にお話をしてきました。こうしたノウハウは、私が長く終活セミナーを続ける中でお伝えし、情報を更新しながらまとめ上げてきたものです。
何年も終活セミナーでお話ししていると、「どうしてそんなに長く続けられるのか」というお声をよくいただきます。改めて考えてみると、「私には伝えたい思いがある」ことが一番大きいように思います。
その思いとは、「人生には終わりがあるからこそ、今が輝く」というものです。
終活は確かに自分の最期の時を思って行うものですが、同時に「今の生き方を見つめ直すこと」にもつながります。そのことを、ぜひ多くの方に知ってほしいというのが私の願いです。
終活セミナーは2011年からスタートし、今年で12年。講演回数は800回以上、累計参加人数も1万6000人を超えました。
終活セミナーは、私のライフワークであり、私の希望です。自分でも驚きですが、一度もセミナーに穴を空けたことはありません。
本当にありがたいことに、セミナーが終わるとお客様から大きな拍手をいただきます。みなさんにご満足いただけるセミナーになっているとするならば、それはなぜか、と自問しますと、他の終活セミナーにない特徴があるからだと思います。
それは、私が、他にはないであろう3つの体験を持った人間だからです。
原動力になっている3つの体験
私には、終活セミナーを始めるに至った原動力となる3つの体験がありました。小さい頃から、生と死が、身近に濃密にあったのです。
一人ぼっちな人生の始まり
私は、6歳で父と別れて、17歳で祖母を病気で亡くし、20歳のときに45歳の母もまた病気で亡くしています。一人っ子でしたので、それから家族と呼べる存在がいなくなりました。
「一人ぼっち」の私が、そのとき初めに感じたことは「もう家族からの無償の愛はもらえないんだ」ということ。
母親の葬儀を終えて半年くらいしてから、体調に異変が現れ始めました。抜け毛と体中の湿疹、そしてめまいと倦怠感。とてもつらい日々でした。しかし、誰にも相談できませんでした。相談できるほどの気力もなくなっていたのです。
悲嘆に包まれていて、心も疲弊しきっていたのでしょう。今思えば、グリーフケア(悲しみに対する心のケア)が必要な時期だったのです。しかし、当時は知識がないために、何も対処することができませんでした。
心のコントロールがうまくできないために、好きなだけ飲食し、体重は20kg増え、家はごみ屋敷になっていきました。悲嘆と行き場のない心の苦しみが、私の生活すべてを壊していったのです。
叶えられなかった夢
私の家は、祖母の代から冠婚葬祭業を家業としていたので、小さな頃から祖母や母と一緒に働くことが私の夢でした。
それが、20歳を迎えるときには、二人が亡くなってしまったことで、私の夢もなくなってしまったのです。
夢がなくなるというのは、私から希望を奪う出来事だったのかもしれません。とにかく、すべてが悪夢のようで、「神様なんかいないんだ」と毎日のように心の中で叫んでいたような気がします。
「大切な人を亡くす」ことは、それほど、一人の人間の人生を大きく変えてしまうような出来事なのです。
棺の中からのメッセージ
家業が葬儀関係だったこともあり、自宅兼会社にしていた我が家は、常に柩が置いてある状態でした。もちろん、中にはご遺体が眠っている状態です。かなり特殊な家庭環境だったと思います。
6歳の私は、そんな柩を見るたびに、不思議と、「悲しい空気感がある柩」と「何も感じない柩」があることに気が付きました。そして前者には、「もしかして、この人たちは何か伝えたいことがあったのかもしれない」と自然に思うようになりました。
もう一つ、大きな気付きだったのは、「人はいずれ死んでしまうんだ」ということ。子どもの私には、それはとても恐ろしいことのように思えました。
人生を後悔なく生きていくために
私の3つの体験をご紹介しました。家族の死と、生まれ育った環境を通して、私が感じ取ったのは「亡くなった誰しもが、もっと生きて、やり遂げたかった思いがあるはずだ」ということ。それは、今を生きている「自分」に置き換えることもできます。この世を去るとき、やり遂げたかったことがあった……と悔やむようなことがあってはいけない、と。
だからこそ、人生を後悔なく生きていくことを多くの方に伝えていきたいと、強く願うようになったのです。
その思いが原動力となって、終活をテーマとしたセミナーが生まれました。私が体験したことを通してお話をすることで、参加する方には、世にある終活セミナーとはきっと異なる、独自の感じ方をしていただいているはずです。そして、これから始める終活の原動力を得て、お帰りになっていただけているのかと思います。
死生観の育成こそが終活の根幹
私が子どもの頃からの体験で得たものは、「死生観」と言い換えられるかもしれません。実際、私は自然と「死と生は背中合わせだ」と感じながら育ち、今まで過ごしてきました。
とはいえ、一般的には、死生観について自分で内観しているという人はあまり多くないでしょう。しかし、終活をする上では、「自分の死生観ってどんなものだろう」と改めて意識することがとても大事です。
死生観というと少し身構えてしまうかもしれませんが、みなさんにもこれまでの人生で得てきた体験や感覚がきっとあるはずです。中にはつらい経験もあるかもしれませんが、そうしたものに少しずつ向き合い、生きること・最期を迎えることについて自分なりに考えを巡らせてみましょう。それが、自分自身のエンディングを納得のいくものにするための原動力になっていきます。
さて、この連載コラム「あなたの終活、間違ってます!」も、前半の6回が終了しました。後半も引き続き、みなさんが終活を進める上で役に立つお話を届けていきます。どうぞお楽しみに!
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